女性醸造家が醸す食事に合わせたいワイン。下町発東京4軒目のワイナリー「BookRoad」
- 公開:2018.2.26
- グルメ・食
原料となる葡萄は産地から運び、消費する人や店の多い都市でワインを醸造する都市型ワイナリー。今回はものづくりの街として近頃注目を集めている御徒町にできた「BookRoad~葡蔵人(ブックロード)~」を訪ねました。
「面白そう」と思ったことが、ワイン造りに飛び込むきっかけに
最近東京に増えつつある都市型ワイナリー。東京で4軒目にできた「BookRoad」を運営するのは、同じ台東区で複数の飲食店を経営するK’sプロジェクト。「会社創業から13年、ずっとサービス業に携わり、お客様に喜んでもらうことを考えてきたんですが、自分たちで一から作ったものをお客様に提供したいと思ってワイン造りに挑戦してみることにしました」(K'sプロジェクト 飲食部統括部長・山本智昭さん)。
そんな会社のチャレンジに手を挙げたのが、台東区在住でK'sプロジェクトの経営する飲食店でパートを続けていた須合美智子さんです。「会社でワイナリーを作ると聞いたとき、単純に面白そうだと思ったんです。それでやってみたいと手を挙げました」(須合さん)。
そんな会社のチャレンジに手を挙げたのが、台東区在住でK'sプロジェクトの経営する飲食店でパートを続けていた須合美智子さんです。「会社でワイナリーを作ると聞いたとき、単純に面白そうだと思ったんです。それでやってみたいと手を挙げました」(須合さん)。
1年間山梨のワイナリーに車で通って修行を積む
ワイン造りへのチャレンジを、何でもないことのように話す須合さんですが、周囲の反応はどうだったのでしょうか?「ふたりの子どもに話したら、え? ワインのこと知ってるの? と言うので、好きだけれど、造れるほど詳しいわけではないので、これから山梨のワイナリーに勉強しにいくことにしたの。だから、家のことは今まで通りにはできなくなるかも…と言いました」(須合さん)。
そして2016年の8月から、山梨県にあるワイナリー「マルサン葡萄酒」で約1年に渡る研修に入った須合さんの最初のハードルは意外にも…。「山梨のワイナリーでの仕事は、朝8時から始まります。東京から電車で行ったのでは間に合わないので、ペーパードライバーだった車の運転を再開しました」。そんな須合さんも、今では山梨から東京まで葡萄を運ぶトラックの運転もするのだとか。
そして2016年の8月から、山梨県にあるワイナリー「マルサン葡萄酒」で約1年に渡る研修に入った須合さんの最初のハードルは意外にも…。「山梨のワイナリーでの仕事は、朝8時から始まります。東京から電車で行ったのでは間に合わないので、ペーパードライバーだった車の運転を再開しました」。そんな須合さんも、今では山梨から東京まで葡萄を運ぶトラックの運転もするのだとか。
ワイン造りの大半は力仕事と洗い物。女性には難しいことも
台東区の御徒町から蔵前にかけてのエリアは、近頃はものづくりの街「カチクラ」として、注目を集めています。そこに開設されたBookRoadでのワイン造りが始まったのは2017年9月。元は工場だった4階建てのビルを社員達でリノベーションし、山梨での1年の修行を経た須合さんが、ここで醸造の指揮を執ることになります。1階で醸造・発酵したものを2階に上げて、濾過したあと瓶詰め。ワインの醸造は力仕事も多いので、大変なときは男性スタッフの力を借りるのだそう。「最初の頃の私は、ワインと言えば、グラスをくるくる回して…などと言っていたと、修業先の方にからかわれるのですが、グラスを回す暇もないほど大変です。仕事は、力仕事と洗い物が大半と言ってもいいぐらいですから」(須合さん)。
山梨と違って東京では、隣にすぐ相談できる人がいません。しかし、せっかく収穫した葡萄を提供してくれた農家さんに対して、『ダメだった』では済まされないと、須合さんとスタッフの奮闘が始まりました。
山梨と違って東京では、隣にすぐ相談できる人がいません。しかし、せっかく収穫した葡萄を提供してくれた農家さんに対して、『ダメだった』では済まされないと、須合さんとスタッフの奮闘が始まりました。
食事を邪魔しない、料理をより美味しくするようなワイン造りを
昨年9月に仕込みを始めて11月にできあがったのは、アジロンという品種の葡萄を使ったワイン。「私が山梨のワイナリーで最初に仕込んだのもアジロンでした。収穫した葡萄は、置いてあるだけでとても甘い香りが漂ってくる品種で、思い出深いワインになりました。ですから、まずはこれを一番最初に作ってみたかったんです」(須合さん)。そんな思い入れのあるアジロンのワインを試飲させていただいたところ、グラスに鼻を近づけただけで甘い香りが。でも、口に含むと意外にきりっと辛口です。「私は元々飲食店で働いていたので、食事と合わせて美味しいと思ってもらえるようなワインを作りたいと思ったんです。香りと味のギャップも楽しんでいただけると思います」(須合さん)。このアジロンに始まって、現在は北天の雫、デラウェアなど8種の葡萄を使ったワインをラインナップ。葡萄を仕込むタンクの容量には限りがあるので、葡萄の収穫の時期に合わせて、仕込みの時期もずらしながら作っているのだそうです。
「これでいい」ではなくて「これがいい」と言えるものを
「ワイナリーの3階はテイスティング・ルームになっていて、訪ねていらっしゃるお客様は地元の方や、経営する飲食店で飲んで美味しかったからと言って買いに来られる方もいます。ワインラベルのイラストは、合わせる料理としてオススメのものを、デザイナーをしている社長夫人に描いてもらいました。可愛いと好評で、ジャケ買いしていく方もいるんですよ」(山本さん)。
飲食店とワイナリーの両方を見ている山本さんの夢は、海外に店を出店し、「メイド・イン・台東区」のワインを世界に知ってもらうことなのだとか。「とにかくワイン造りに携われていることが、今は楽しいです。そして自分が携わってできたワインがお客様の元に届けられることが本当に嬉しい。今後は新しい品種にもどんどんチャレンジしていきたいですね。いろいろ試した結果、『これでいい』と言うのではなく、『これがいい』と言えるものをひとつでもふたつでも増やしていければと思います」(須合さん)。お話を伺っているうちに、今日は是非とも一本買っていかねばと思った私は、アジロンを選びました。ラベルには鶏が描かれています。というわけで、今夜は鶏料理に決まり!
photo / reeeko
BookRoad 葡蔵人
東京都台東区台東3-40-2
12:00~20:00 日曜定休