見て、触れて楽しめる。凹凸感のある手彫り模様に惹き込まれる萩原由希子さんの器
- 公開:2020.7.20
- インテリア・生活雑貨
黒地に淡い虹色のような柔らかな色で模様が描かれたカップの数々。陶芸作家の萩原由希子さんが、 「掻き落とし」という技法で制作しているものです。模様には立体感があり、見た目だけではなく手に触れたときにも温かみが伝わってきます。
「掻き落とし」の技法で模様が立体的に
まるで絵本のワンシーンのような美しい絵柄に見入ってしまう器。この模様は筆などで描かれたのではなく、立体に浮き出ています。「nichi nichi pottery(陶房にちにち)」で制作をする萩原由希子さんが、 「掻き落とし」という技法で作っている一点ものの器です。
「掻き落とし」とは、成形した土の上から化粧土を塗り、 工具で表面を削って部分的に素地の土の色を出し、模様にする技法。萩原さんは器の形を作るところから窯で焼き上げるまでをご自身で行っています。
「掻き落とし」とは、成形した土の上から化粧土を塗り、 工具で表面を削って部分的に素地の土の色を出し、模様にする技法。萩原さんは器の形を作るところから窯で焼き上げるまでをご自身で行っています。
成形して化粧度を塗った土を、一気に掘り進める
ベースになる土には、模様のイメージに合わせて黒いものか白いものを使い分け。それを、模様が活きるようにというだけではなく、使いやすい大きさや形になるよう考慮しながらロクロで成形。そしてまだ湿っているうちに化粧土を刷毛で塗ります。
土が湿りすぎていても、乾きすぎた状態でも、彫った模様がきれいに出なくなってしまうそう。タイミングを見極めて慎重に作業していきます。
土が湿りすぎていても、乾きすぎた状態でも、彫った模様がきれいに出なくなってしまうそう。タイミングを見極めて慎重に作業していきます。
化粧土を塗った土を掘るとき、萩原さんは下書きなしに手を動かしていきます。以前は下書きをしていたこともありましたが、彫り進めると表現したいものがどんどん変わっていき、せっかく描いた線を無視することになるので、下書きはしないことにしたのだとか。
模様自体は細かで繊細なのに、迷いなくどんどん掘り進められていくさまはとてもダイナミック。その作業の様子は、Instagramに投稿されている動画でも見ることができます。
意外なことに、絵を描くのは苦手だという萩原さん。「それでもこの削り出すという作業になると、とたんに自由になります」(萩原さん)
模様が彫られた器は、1,200℃ほどの窯で焼き上げて完成です。
模様自体は細かで繊細なのに、迷いなくどんどん掘り進められていくさまはとてもダイナミック。その作業の様子は、Instagramに投稿されている動画でも見ることができます。
意外なことに、絵を描くのは苦手だという萩原さん。「それでもこの削り出すという作業になると、とたんに自由になります」(萩原さん)
模様が彫られた器は、1,200℃ほどの窯で焼き上げて完成です。
手彫りの模様と凹凸から温かみが伝わる
模様のモチーフとなるのは主に身近な動植物。季節の草花の色や香りなどからもインスピレーションを得ています。また、もう一度訪れたい場所の景色や、その地で感じたことを思い出しながら制作することも。
オーダーを受けて一から作るときには、依頼者の方の思い出や好きな音楽のイメージなどを聞き、それを形にしていくことが多いのだそう。
オーダーを受けて一から作るときには、依頼者の方の思い出や好きな音楽のイメージなどを聞き、それを形にしていくことが多いのだそう。
制作で常に大切にしているのは、純粋に、楽しい気持ちで臨むこと。萩原さんご自身は、たとえ少し気持ちが沈んでいるときも、まっすぐ土に向かっていればすっと心が晴れていくそうですが、その先にあるのは手にする方への想いでした。
「ひと彫りひと彫りがその瞬間の軌跡のようなものなので、ネガティブな気持ちは吹き込まないように。削った部分が使う方の手に直接触れる形の器も多いですし、手作りの温かみを全体から五感で感じていただけたらと願っています。」
こんな想いで丹精込めて作られる器は、描かれた世界にぐっと惹き込まれそう。柔らかくも芯のあるオーラで包み込んでくれるような、生き生きとした表情をしています。
「ひと彫りひと彫りがその瞬間の軌跡のようなものなので、ネガティブな気持ちは吹き込まないように。削った部分が使う方の手に直接触れる形の器も多いですし、手作りの温かみを全体から五感で感じていただけたらと願っています。」
こんな想いで丹精込めて作られる器は、描かれた世界にぐっと惹き込まれそう。柔らかくも芯のあるオーラで包み込んでくれるような、生き生きとした表情をしています。
癒しや楽しさを与えてくれる器の数々
写真左は、黒い土の表面に柔らかな色合いの土を重ね、模様を残して削ったカップ。黒がベースでも模様は淡い虹色のグラデーションで優しげな印象です。たくさんの花が揺れる野原を眺める気分でリラックスできそう。
写真右は白い半磁器に藍色を塗って削ったカフェオレボウル。こちらは草花や鳥たちの姿に加え、バイオリンなどの楽器も描かれていて、音楽が聞こえてきそうな楽しげな雰囲気があります。落ち着いた藍色に赤の差し色が入っているのもポイントです。
どちらも表側は手彫りの凹凸が手に触れ、両手でそっと包み込みたくなる温かな質感。内側には汚れが付きにくいよう艶のある釉薬が施されており、日常使いしやすくなっています。
Kakiotoshi cup ー Lily bell 3,000円(税込)
カフェオレボウル ー 愉しい音 3,800円(税込)
写真右は白い半磁器に藍色を塗って削ったカフェオレボウル。こちらは草花や鳥たちの姿に加え、バイオリンなどの楽器も描かれていて、音楽が聞こえてきそうな楽しげな雰囲気があります。落ち着いた藍色に赤の差し色が入っているのもポイントです。
どちらも表側は手彫りの凹凸が手に触れ、両手でそっと包み込みたくなる温かな質感。内側には汚れが付きにくいよう艶のある釉薬が施されており、日常使いしやすくなっています。
Kakiotoshi cup ー Lily bell 3,000円(税込)
カフェオレボウル ー 愉しい音 3,800円(税込)
ほかにも蕎麦猪口や豆皿、マグカップなど、さまざまな器が作られており、随時iichiにアップされています。すべて貴重な一点ものなので、これは!というものを見つけられたら、その一期一会のタイミングを逃さないようにしてください。
楽しいという気持ちを大切に、一つひとつ丁寧に形作り、模様を掘って作られる器。手にすればほっと心が和んだり、元気が湧いてきたりするはず。ぜひあなたもひとつ手にしてみてはいかがでしょうか?
楽しいという気持ちを大切に、一つひとつ丁寧に形作り、模様を掘って作られる器。手にすればほっと心が和んだり、元気が湧いてきたりするはず。ぜひあなたもひとつ手にしてみてはいかがでしょうか?
photo / 萩原由希子