廃棄される衣服に命を吹き込む。循環型ファッション作りのコミュニティ拠点「NewMake Labo」
- 公開:2022.1.15
- ファッション
多くの洋服が作られ、廃棄されているファッション業界。そこで、捨てられるはずの衣料品に、新たな命を吹き込むアップサイクルを行うコミュニティとその拠点「NewMake Labo」が表参道・原宿エリアにオープンしました。運営をしている東急不動産株式会社瀬志本さん、株式会社STORY&Co.細川さんに伺いました。
ファッション業界の大量廃棄の背景から生まれた試み
SDGsが世界中で謳われている近年、ファッション業界では衣料品の大量消費・大量廃棄が、大きな社会問題となっています。生産された服の85%が廃棄されているという現状。捨てられた服が再資源化される割合はわずか5%ほどで、残りの95%は、ほとんどがそのまま燃えるゴミとして、焼却・埋め立て処分され、その量は年間で約48万トンにものぼるのだそうです。これらは、衣服の供給量が過多でありながら、年々衣服のライフサイクルの短期化が進んでいることが原因です。(※環境省「SUSTANABLE FASHION」より) 私たちが着ているのは、生産された衣類の中のごく一部であることが伺えます。
そんなファッション業界の現状がある中で、思いを込めて作られた衣服が、誰にも着られずに廃棄されるのではなく、次の服へとバトンをつないでいくことを目指して生まれた新たなコミュニティ「NewMake(ニューメイク)」。その拠点となる「NewMake Labo(ニューメイクラボ)」が、2021年7月に、ファッションの中心地、表参道・原宿エリアにオープンしました。
アップサイクルに挑むコミュニティ拠点「NewMake Labo」
表参道の大通りから小道に入り、徒歩2分程度の場所にある「NewMake Labo」。
外から見えるカラフルなスニーカーのディスプレイが印象的です。扉を開けると、見たことのないような個性溢れるドレスやジャケットなどさまざまな洋服が飾られています。
ラボでは、「NewMake」に所属するメンバーが、ラボに用意されているミシンなどの裁縫道具を使って、Missoni・OLD ENGLAND・New Balance・DESCENTE・Coleman・adidas など国内外の有名ブランドから提供された洋服や雑貨類を、思い思いにリメイクして、新たな命を吹き込むアップサイクルに挑んでいます。
外から見えるカラフルなスニーカーのディスプレイが印象的です。扉を開けると、見たことのないような個性溢れるドレスやジャケットなどさまざまな洋服が飾られています。
ラボでは、「NewMake」に所属するメンバーが、ラボに用意されているミシンなどの裁縫道具を使って、Missoni・OLD ENGLAND・New Balance・DESCENTE・Coleman・adidas など国内外の有名ブランドから提供された洋服や雑貨類を、思い思いにリメイクして、新たな命を吹き込むアップサイクルに挑んでいます。
「ラボにあるミシンや糸は、活動に賛同してくださったブラザーの販売さんから、布の端切れは問屋さんから、無償提供いただきました。高級ブランドの衣服はもちろん、工業用のミシンやさまざまな柄の布生地など、なかなか自宅で取りそろえることが難しい道具や素材も、自由に使うことができます」(株式会社STORY&Co.細川さん(以下、細川さん))
現在は約550名が所属。アマ・プロ問わず、自分らしいファッションを表現したい、サステナブルな取り組みをしたいという思いを持った方が集まっているそうです。
「学校では学べない、高いレベルの技術を学びたいという20代の学生さんや、仕事では決められたデザインを作っているけど、もっと自己表現をしたいと考えているプロの方まで、幅広い方が活動に参加されています。メンバー同士の交流が、さまざまなインスピレーションを生むことにつながる、と好評です。」(東急不動産株式会社瀬志本さん(以下、瀬志本さん))
「学校では学べない、高いレベルの技術を学びたいという20代の学生さんや、仕事では決められたデザインを作っているけど、もっと自己表現をしたいと考えているプロの方まで、幅広い方が活動に参加されています。メンバー同士の交流が、さまざまなインスピレーションを生むことにつながる、と好評です。」(東急不動産株式会社瀬志本さん(以下、瀬志本さん))
また、自身で「YuumiARIA(ユウミアリア)」のブランドを持つ現役のデザイナーである鈴木ゆうみさんが、専任のアドバイザーとして、メンバーを支援。チームで作品作りに取り組むことを推奨しており、技術に自信がない方でも、気軽に参加できるのも1つの魅力だとか。
「学校ではないので、ゆうみさんには先生ではなく、あくまでもアドバイザーという立ち位置で参加いただけないか打診したところ、快く受けていただけました。実際に、上から指導するのではなく、メンバーの制作意図を把握した上で、よりアイディアを表現するには、という視点でアドバイスしてくださるので、とても助かっています。」(細川さん)
「私は、以前、アパレル企業に勤めていた際に、古着の仕入れをする機会があり、古着を取り入れたリメイクラインを持つブランドを展開するに至りました。自分でアレンジをしたファッションをもっと広められないかと思っていたので、アドバイザーのご依頼は、とても嬉しかったです。自分のブランドとは違い、1つの作品が自分中心ではなく、メンバーそれぞれの感性が集まってできるのが醍醐味だと実感しています。」(「YuumiARIA」デザイナー鈴木さん(以下、鈴木さん))
「学校ではないので、ゆうみさんには先生ではなく、あくまでもアドバイザーという立ち位置で参加いただけないか打診したところ、快く受けていただけました。実際に、上から指導するのではなく、メンバーの制作意図を把握した上で、よりアイディアを表現するには、という視点でアドバイスしてくださるので、とても助かっています。」(細川さん)
「私は、以前、アパレル企業に勤めていた際に、古着の仕入れをする機会があり、古着を取り入れたリメイクラインを持つブランドを展開するに至りました。自分でアレンジをしたファッションをもっと広められないかと思っていたので、アドバイザーのご依頼は、とても嬉しかったです。自分のブランドとは違い、1つの作品が自分中心ではなく、メンバーそれぞれの感性が集まってできるのが醍醐味だと実感しています。」(「YuumiARIA」デザイナー鈴木さん(以下、鈴木さん))
NewMake作品の一例
1.Colemanのポンチョ
「YuumiARIA」のデザイナーで、NewMakeアドバイザーを務める鈴木ゆうみさんによる作品。
Colemanの限定生産されたテントの廃材を、ポンチョにNewMake。テントの丈夫な生地を活かし、雨風にも耐えられるおしゃれなレインウェアに変身。
Colemanの限定生産されたテントの廃材を、ポンチョにNewMake。テントの丈夫な生地を活かし、雨風にも耐えられるおしゃれなレインウェアに変身。
2.OLD ENGLANDのコート×古着のコート
ポンチョと同じく、鈴木ゆうみさんの作品。
OLD ENGLANDのレディスのコートをベースに、メンズのトレンチコートをドッキング。元々の着心地の良さを残しつつも、他にはない配色のバランスが見事。
OLD ENGLANDのレディスのコートをベースに、メンズのトレンチコートをドッキング。元々の着心地の良さを残しつつも、他にはない配色のバランスが見事。
3.New Balanceのスニーカー
Laboのスタッフを務めるMayuさんの作品。
New Balanceのスニーカーの前面につけられた、紫の大きなリボンがかわいい1足。リボンは、ニットのカーディガンの袖から作られています。
Laboでは、3週間に1回1ブランドの頻度で、廃棄予定の洋服類を提供。現時点で5ブランドほど、今後も10ブランド以上に提供していただく予定になっているとか。
New Balanceのスニーカーの前面につけられた、紫の大きなリボンがかわいい1足。リボンは、ニットのカーディガンの袖から作られています。
Laboでは、3週間に1回1ブランドの頻度で、廃棄予定の洋服類を提供。現時点で5ブランドほど、今後も10ブランド以上に提供していただく予定になっているとか。
TGCteenコレクションにもNewMakeの作品が登場
作られた作品は、ショーなどで発表するほか、今後は販売することも検討しているそうです。直近では、TGCteenコレクションでNewMake Laboで作られた作品が舞台に登場しました。
また、2月には、自治体や商業施設と提携して、渋谷に100足のNewMakeスニーカーが展示される企画も進行中。
ラボ所属の有志のメンバーによって作られた100足は、どれもが光り輝く個性を放ち、渋谷の街を歩く人々が、より身近にアップサイクルを体感できる企画になっています。
また、2月には、自治体や商業施設と提携して、渋谷に100足のNewMakeスニーカーが展示される企画も進行中。
ラボ所属の有志のメンバーによって作られた100足は、どれもが光り輝く個性を放ち、渋谷の街を歩く人々が、より身近にアップサイクルを体感できる企画になっています。
「NewMake Labo」の設立背景と今後の展望
「NewMake Labo」がどのようにして生まれたのか、Laboを設立した東急不動産株式会社の瀬志本さん(左)、株式会社STORY&Co.の細川さん(右)に伺いました。
ディベロッパーに勤務する瀬志本さんは、長年商業施設を担当していて、入居するアパレルブランドから話を聞く機会も多かったそう。
「商業施設を担当している頃、さまざまなアパレルブランドとお付き合いがあり、たくさんの衣料が捨てられているというお悩みを、何度も耳にしていました。なんとかできたらいいなと思っている中、(株)STORY&Co.細川さんと出会いこのプロジェクトの実現に至りました。」
ディベロッパーに勤務する瀬志本さんは、長年商業施設を担当していて、入居するアパレルブランドから話を聞く機会も多かったそう。
「商業施設を担当している頃、さまざまなアパレルブランドとお付き合いがあり、たくさんの衣料が捨てられているというお悩みを、何度も耳にしていました。なんとかできたらいいなと思っている中、(株)STORY&Co.細川さんと出会いこのプロジェクトの実現に至りました。」
また、原宿という土地柄も、この活動を始める原動力になったそうです。
「原宿は、かつてからファッションがブランドの名前よりも、作者や着る人の個性が前に出て、クリエイターのパワーが溢れている街。既存にとらわれず、自分オリジナルのファッションを切り開いていく、クリエイターの皆さんを後押しするような場所を作ることで、街全体を盛り上げたいという思いもありました。」(瀬志本さん)
一方、現在、体験シェアリングサービスを手掛ける会社を経営している細川さんは、アパレルブランドでの経験が今回のLabo設立につながったとか。
「僕自身は、元々、アパレルブランドを創業した経験があり、多くの衣類が廃棄されていた現場を目の当たりにしていました。そういった背景もあり、体験を通して、衣料品におけるサステナブルにつながるサービスができないかと考え、設立に至りました。設立前は、コミュニティのメンバー100人くらいを想定していましたが、開始4か月で500人に。想像以上にニーズがあったと実感しています。」
「原宿は、かつてからファッションがブランドの名前よりも、作者や着る人の個性が前に出て、クリエイターのパワーが溢れている街。既存にとらわれず、自分オリジナルのファッションを切り開いていく、クリエイターの皆さんを後押しするような場所を作ることで、街全体を盛り上げたいという思いもありました。」(瀬志本さん)
一方、現在、体験シェアリングサービスを手掛ける会社を経営している細川さんは、アパレルブランドでの経験が今回のLabo設立につながったとか。
「僕自身は、元々、アパレルブランドを創業した経験があり、多くの衣類が廃棄されていた現場を目の当たりにしていました。そういった背景もあり、体験を通して、衣料品におけるサステナブルにつながるサービスができないかと考え、設立に至りました。設立前は、コミュニティのメンバー100人くらいを想定していましたが、開始4か月で500人に。想像以上にニーズがあったと実感しています。」
近年、アップサイクルを行うブランドも多い中、NewMake Laboは他にはない取り組みであると多くのメディアから注目を集めています。
「私たちは、ブランドが自社製品を回収してアップサイクル・販売するのとは違い、個人が自分で好きなものをアップサイクルできる場づくりを目指しています。これまで、個人が洋服をアップサイクルしたいと思っても、簡単に実現する場所がないと感じていました。NewMake Laboは、自分にできることをしたいと思ったときに、気軽に足を踏み入れてチャレンジできる場所にしていきたいです。」(細川さん)
2人の共通する思いとしては、SDGsやサステナブルといったことを重くとらえず、楽しく取り入れてほしいということ。
「私たちは、ブランドが自社製品を回収してアップサイクル・販売するのとは違い、個人が自分で好きなものをアップサイクルできる場づくりを目指しています。これまで、個人が洋服をアップサイクルしたいと思っても、簡単に実現する場所がないと感じていました。NewMake Laboは、自分にできることをしたいと思ったときに、気軽に足を踏み入れてチャレンジできる場所にしていきたいです。」(細川さん)
2人の共通する思いとしては、SDGsやサステナブルといったことを重くとらえず、楽しく取り入れてほしいということ。
「私自身は、環境にいいということが、スタンダードになる日は近いと思っています。それこそ今の小学生は学校でSDGsなどを学んでいて、大人よりよっぽど詳しいです。私たちは、SDGsや環境問題と考えると、すごく難しくて、大変なことだと思いがちではないかと思うんです。でも、そうではなくて、自分でアレンジすると、可愛くなるとか、インスタ映えするとか、もっと気軽に、楽しく取り入れてもらいたいと思っています。」(瀬志本さん)
「まずは、自分でアップサイクルをすることが、簡単で楽しいこと、そしてサステナブルにつながっていくということを広める活動をしています。ゆくゆくは、ラボのメンバーとも協議しながら、ラボでつくられた作品の展示や販売、また、表参道・原宿以外のエリアにも拠点を置くなど、活動の幅を広げて、多くの方に発信・参加いただけるようにしたいです。」(細川さん)
アップサイクルは、特別な技術を持ち合わせていなくても、まずはペンキを塗るなど手軽な手法から始めるのもできるそう。
現在は、Webサイトからの事前予約制なので、少しでも興味がある方は、Webサイトを覗いてみて下さいね。
「まずは、自分でアップサイクルをすることが、簡単で楽しいこと、そしてサステナブルにつながっていくということを広める活動をしています。ゆくゆくは、ラボのメンバーとも協議しながら、ラボでつくられた作品の展示や販売、また、表参道・原宿以外のエリアにも拠点を置くなど、活動の幅を広げて、多くの方に発信・参加いただけるようにしたいです。」(細川さん)
アップサイクルは、特別な技術を持ち合わせていなくても、まずはペンキを塗るなど手軽な手法から始めるのもできるそう。
現在は、Webサイトからの事前予約制なので、少しでも興味がある方は、Webサイトを覗いてみて下さいね。
<イベント情報>
「NewMake」メンバーによってアップサイクルされた100足のスニーカーが渋谷をジャックいたします。他に2つとない個性豊かなスニーカーの数々を通して、サステナブルファッションに触れてみてはいかがでしょうか。
開催期間:2022年2月1日~2月28日(予定)
開催場所:東急プラザ表参道原宿、東急プラザ渋谷、ゼビオ渋谷公園通り店、北谷公園、渋谷区勤労福祉会館(全て予定)
「NewMake」メンバーによってアップサイクルされた100足のスニーカーが渋谷をジャックいたします。他に2つとない個性豊かなスニーカーの数々を通して、サステナブルファッションに触れてみてはいかがでしょうか。
開催期間:2022年2月1日~2月28日(予定)
開催場所:東急プラザ表参道原宿、東急プラザ渋谷、ゼビオ渋谷公園通り店、北谷公園、渋谷区勤労福祉会館(全て予定)
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photo / NewMake Labo,Sheage編集部
NewMake Labo(ニューメイクラボ)
東京都渋谷区神宮前6丁目6-2 原宿べルピア104