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猫が教えてくれること「終わりのはじまり」/絵本作家・PEIACO(ぺいあこ)の場合vol.3

猫の猫らしい行動に、自分の生き方を重ねてハッとする瞬間があります。絵本作家のPEIACO(ぺいあこ)夫妻にも覚えがあるそう。あこさんが生まれた時から中学2年生まで実家にいた元・野良猫の「さちこ」の死が、あこさんに与えた衝撃について聞きました。

猫が教えてくれること「終わりのはじまり」/絵本作家・PEIACO(ぺいあこ)の場合vol.3

生まれて初めての猫「さちこ」

絵本作家・PEIACO(ぺいあこ)の愛猫2

アイドル気質の「ししゃも」(メス・5歳)と行動の読めない天然系「ジャコ」(オス・3歳)。血のつながりはないけれど、双方が愛し愛されしっくりきている2匹。飼い主は、絵本作家のPEIACO(ぺいあこ)ご夫妻です。猫なのに魚の名前は、おふたりが大好きなサザエさん一家の名前が由来。

ぺいさんにとっては、先にやってきたししゃもが人生で初めて飼った猫です。一方のあこさんは、動物専門学校の学生時代、保護猫の里親ボランティアをしていたこともあり、一時的に預かった猫を含めると18匹もの猫と暮らした経験があります。そんなあこさんにとって、人生で初めての猫はさちこという元・野良猫でした。

「近所の人たちから『さちこ』と呼ばれて、可愛がられていた茶白の猫が家に居つくようになって、そのまま飼い猫になりました。私が生まれる前から、家族の一員だったさちこは、愛らしくて賢くて優しい猫でした。

特等席は祖父が庭に作った小屋で、家のまわりで遊ぶ小さな私の視界には、必ずといっていいほどさちこがいて、今になれば見守ってくれていたのだとわかります。

家の前の道を行き交う誰にでも気安く撫でさせるけど、決して甘えたり媚びたりすることはなく、人間と対等で、『凛とした』という言葉のよく似合う猫でした。子どもながらにさちこは特別な猫だと思っていたし、とても大事に思っていました」(あこさん)

さちこを失って知った「終わりのはじまり」

絵本作家・PEIACO(ぺいあこ)とその愛猫

さちこが亡くなったのは、あこさんが中学2年生の時でした。モルモットやインコなどペットを看取った経験がないわけではありませんでしたが、どのペットより長く、より身近だったさちこの死のショックは大きく、あこさんは風邪以外の理由で初めて学校を休んだと言います。さらに、さちこの不在は、あこさんに「ある思い」も残していきます。

「さちこが死んでから、何をするにも常に終わりを意識するようになっちゃって…。ししゃもとジャコの時もそうでしたけど、生後間もない子猫だった2匹を家族の一員として迎え入れたその日に、いつかくる別れを思って辛くなってしまったり。猫に限らず、楽しいことが始まる前に、終わることを想像して悲しくなっちゃうんです。面倒くさいですよね(笑)」(あこさん)

「この間は、久々に遠方の友だちと会えるって嬉しそうに準備しはじめたんですけど、すでにバイバイしなきゃいけない時のことを思ってからはずっと悲しそうで(笑)」(ぺいさん)

「自分でもどうにかしたいんですけど、でも、最初に終わりを覚悟することで、本物の終わりに耐えられるところもあるんです。私にとっては心を守るバリアなのかもしれません」(あこさん)

ずっとこの幸せが続けばいいのに

絵本作家・PEIACO(ぺいあこ)の愛猫3

子どもの頃、なかなか寝付けない夜に、「お父さんとお母さんが、死んじゃったらどうしよう」という妄想に取りつかれて、枕を濡らした経験はありませんか?あこさんの話を聞いて、そんな遠い日のことを久しぶりに思い出しました。

「確かに、子ども時代にそんなことがあったかもしれません。子どもはどうやってそこから脱するんだろう?その方法が知りたい。ずっとこの時間が続けばいいのにと思うほどに毎日が幸せだから、その願いが叶わないことに絶望するんですよ、きっと。だから、終わりのはじまりを思って、打ちひしがれてしまうことの多い私は、総じて幸せなんじゃないかと思ったりもします」(あこさん)

「いざ始まってしまえば、終わりのことはそこまで考えないし、終わる瞬間も想像よりツラくないことの方が多い」とあこさん。「終わりのはじまり」は抗いようのない事実であると同時に、心に免疫をつける予防注射のようでもあり、当たり前にあぐらを欠かない、しあわせの呪文のようでもあります。ぺいさん、あこさん、ししゃも、ジャコ、そして、さちこ。たくさんの教えをありがとうございました!

photo / 筒井聖子

この記事を書いた人

宇佐見明日香 編集者・ライター。女性の「生き方」「暮らし方」などライフスタイルにまつわるインタビューを中心に、企業人や起業家のインタビューを得意とする。“しつもんは愛だ”を...

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