グッドデザイン賞を受賞した復興活動。「まちを耕し、ひとを育む」新たな試み、「川の上プロジェクト」
- 公開:2016.3.30
- ライフスタイル
2011年の東日本大震災から5年。津波によって甚大な被害を受けた町のひとつ石巻市では、復興という枠を超えた新たな町作りプロジェクトがスタートしていました。地元の人々の手によって着々と進められ、グッドデザイン賞をも受賞した活動を取材してきました。
被災地に生まれた新たなコミュニケーションの場所
2011年の東日本大震災で、宮城県石巻市は津波により甚大な被害を受けました。そのため400世帯以上の人々が住んでいた町を追われ、同市内の北部の山間にある川の上(かわのかみ)地区へ移住することになったのです。
ただ、同じ市内の住人とはいえ、もともと山間に住んでいた住民と、海沿いから移転してくる人々は、バックグラウンドも生活スタイルも異なりました。そこで発足したのが「川の上プロジェクト」。「まちを耕し、ひとを育む」という理念のもとに、新たに生まれ変わる町を、すべての人にとって住み良い場所とするための活動が、地元の人々の手によって始まったのです。その活動の拠点とも言えるのが、「川の上・百俵館」。
ただ、同じ市内の住人とはいえ、もともと山間に住んでいた住民と、海沿いから移転してくる人々は、バックグラウンドも生活スタイルも異なりました。そこで発足したのが「川の上プロジェクト」。「まちを耕し、ひとを育む」という理念のもとに、新たに生まれ変わる町を、すべての人にとって住み良い場所とするための活動が、地元の人々の手によって始まったのです。その活動の拠点とも言えるのが、「川の上・百俵館」。
誰もが気軽に「お茶っこ」できる、癒やしのカフェ空間と図書館
「川の上・百俵館」は、80年以上前に建てられた旧農協精米所を全面改築した建物。木造建築家の鳥羽真さんが設計したこの建物は、光に溢れ、木の温もりが訪れる人の心を癒やしてくれます。普段は、住民同士が気軽に「お茶っこ」をして交流を深められるようにと、ゆったりとしたカフェスペースとなっています。カフェスペースの壁には寄贈された本、約3000冊が並べられ、図書館として活用されているほか、カフェスペースでは、定期的に勉強会などのイベントが開催されることも。まさに百俵館はコミュニティの中心となっているのです。この活動が評価を受け、2015年にはグッドデザイン賞とグッドデザイン・ベスト100に選出されました。
みんなが笑顔になる、地元の素材を生かしたお洒落ランチ
百俵館のカフェスペースでは、地元の女性3人が交代で常駐し、美味しいランチを提供するほか、コーヒーや地元パン屋の手作りパンを販売しています。平日は小さな子供を連れたお母さんたちや、地元の主婦がお茶をしに、学校帰りの子供達が本を借りに、中には仮設住宅の住民も…。こうして新旧の住民が三々五々集まって交流を深めています。震災から5年、川の上プロジェクトの三浦秀之運営委員長は「川の上・百俵館が出来たことによって、少しづつ地域に住む住民の人同士の交流が生まれるようになってきたのではないかと思います。近所の方から『もっと早く百俵館があれば良かったのに』と仰っていただいた際は、本当に感無量でした。イベントなど主体的な活動も沢山生まれています。いかに地域に開かれた場所として愛着をもっていただくかが重要なのではないかと思います」と、現在の心境を語ってくださいました。
世界に誇れる石巻ブランドを目指した手縫い革工房が誕生
そんな中、新しく始まったのが「石巻・手縫いの革工房」。指導するのは東京在住のアーティストで革製品作りをあの吉田カバンの創始者の次女でバックデザイナーの野谷久仁子さんに師事した、アーティスト松村要二氏。新旧の地元住民が集まり、手縫いの革製品作りに取り組んでいます。2016年の早春には、第一回の展示会も行われ、ワークショップには多くの人が参加しました。
色とりどりの素材を使って、自由な発想でデザインされた手縫いの革製品は、他のどこにもないまさに一点ものばかり。この活動は単なる趣味ではなく、地元の産業となることを視野にいれた本格的なもの。いずれは世界に発信できる手縫い工房を目指すという、この工房から目が離せません。
色とりどりの素材を使って、自由な発想でデザインされた手縫いの革製品は、他のどこにもないまさに一点ものばかり。この活動は単なる趣味ではなく、地元の産業となることを視野にいれた本格的なもの。いずれは世界に発信できる手縫い工房を目指すという、この工房から目が離せません。
photo / 川の上プロジェクト、カオリーヌ
川の上プロジェクト
http://kawanokami.com/