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繊細でやさしい輝きにうっとり。ガラス作家・今井茉里絵さんのパート・ド・ヴェール作品

自由に生み出せる色に、細やかに描かれた模様、そしてガラスの粒が溶けてできる小さな泡。そのどれもに心ときめく「パート・ド・ヴェール」作品を生み出しているガラス作家の今井 茉里絵(いまい まりえ)さん。やわらかな光を演出するその器の魅力を、制作の工程とともにお伝えします。

繊細でやさしい輝きにうっとり。ガラス作家・今井茉里絵さんのパート・ド・ヴェール作品

今井さんが用いている技法「パート・ド・ヴェール」とは?

ガラス作家・今井茉里絵さんのパート・ド・ヴェール作品、ガラスのお皿2

ガラス作家の今井 茉里絵(いまい まりえ)さんが作品づくりに用いているのは、耐熱の石膏型を作ってガラスの粒を細かく詰め、電気炉の中で焼いて仕上げる「パート・ド・ヴェール」という技法。かなりの手間がかかる制作方法ですが、そのぶん出来上がる作品は繊細な輝きに満ちていて、思わず心を打たれます。

制作に手間と時間を要するため、量産ができずに衰退していったと言われているこの技法、知らないという方も多いのではないでしょうか?今回は制作の工程とともに、その美しさをお伝えします。

使いたい色をイメージしながらデザインを描き起こします

ガラス作家・今井茉里絵さんのパート・ド・ヴェール作品、ガラスのお皿デザイン画

今井さんの制作は、まずデザインを描き起こすことから始まります。デザインを考えてから、イメージする色味や透明感とぴったり合う色を決めていきます。
色味は、色ガラスのパウダーと透明の粒との比率を変えて混ぜることによって多様に生み出すことができるのだそう。

石膏型に彫った模様に色を詰めていきます

ガラス作家・今井茉里絵さんのパート・ド・ヴェール作品、ガラスのお皿制作工程1

次に、粘土でつくった原型に石膏を流し込んで石膏型を作り、先ほどデザインした模様を細かく彫っていきます。その彫った模様に、色を調合したガラスパウダーを水や糊で練ったものを詰めていくとのこと。1mmにも満たない溝には、細い針を使いながら詰めていくので、根気が必要な作業となります。

模様部分のガラスを詰め終えたらその上に器本体分のガラスを敷き詰め、窯入れをします。そのまま電気炉にセットして徐々に温度を上げていき約800度で焼成することにより、石膏に彫った溝に詰めたガラスパウダーが器本体のガラスにくっついて模様がつきます。焼き上がったら常温に冷めるまで約1日待つのだそう。

冷めたらふちや底を磨きます

ガラス作家・今井茉里絵さんのパート・ド・ヴェール作品、ガラスのお皿制作工程2

器が冷めたら型から取り出し、ガラスのふちや底を機械を使って研磨します。必要に応じて表面も磨かれるとのこと。ちなみに型は一度しか使えないそうなので、全く同じ柄の器はふたつとして生まれません。

より細やかな色分けによって繊細な世界を生み出します

ガラス作家・今井茉里絵さんのパート・ド・ヴェール作品、ガラスのお皿制作工程3

デザインによっては金彩やプラチナ彩を施した後、もう一度窯の中で焼成し、完成となります。石膏に彫った柄それぞれに色を入れていけるので、より細やかな色分けができ、他のガラス作品にはないような繊細な色使いや柄を表現できるのがパート・ド・ヴェールの魅力です。

心ときめくやさしい色彩と光の反射を感じてみてください

ガラス作家・今井茉里絵さんのパート・ド・ヴェール作品、ガラスのお皿1

色や柄だけではなく、ガラスの粒が溶ける際にできるごく小さな泡と、それによって生まれるやわらかな光も魅力です。数あるパート・ド・ヴェール作品の中でも、今井さんのプロダクトはどれもやさしい色使いで、わたしたちの心を静かにときめかせてくれるものばかり。色を無限に生み出すことのできるこの技法だからこそ、今井さんのたおやかな人柄がにじみ出ているのかもしれません。

今井さんの作品は、個展やグループ展などで発表されています。わずかではありますが、全国のギャラリーやショップでの販売も行われているとのことなので、ホームページのお取り扱い情報をチェックしてみてくださいね。ぜひ一度実際に手に取って、作品の中に宿る小さな世界を覗き込んでみてください。

photo / Marie Imai

この記事を書いた人

ひの 宮城県生まれ。衣装作家。舞台や映画、音楽シーンなどの衣装制作に携わるほか、ゆるゆるとした空気感の日常着も制作している。幼いころから日本舞踊を学び始め、日本の...
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