食卓にアクセントとインパクトを。「片口の器」の魅力と楽しみ方
- 公開:2016.3.16
- インテリア・生活雑貨
注ぎ口がついている器、片口。「片口ってお酒を注いだり、ソースを入れたりする器でしょ」と思っていませんか。確かにそうですけど、もっといろいろな活かし方や楽しみ方ができるんです。片口があるテーブルって、ちょっとすてきなんです。
片口にこんなにバリエーションがあるなんて!
3月のある日、東京・目黒の「Pond Gallery」で開催された、佐賀・唐津の陶芸家、熊本象さんの個展にうかがいました。
出迎えてくれたのは、さまざまな大きさの、さまざまな形の、さまざまな色の、片口、片口、片口。こんなにいろいろな片口があるなんて、驚きです。
出迎えてくれたのは、さまざまな大きさの、さまざまな形の、さまざまな色の、片口、片口、片口。こんなにいろいろな片口があるなんて、驚きです。
片口というと酒器のイメージがありますが、「高さのあるものはソースなどを入れて、小さなものは汁物に限定せず小づけなどに。鉢ものは料理を盛るのはもちろんですが、剣山を入れて花を活ける方もいます」と熊本さん。
イメージを膨らませることで、いろいろな使い方ができるのも片口の魅力といえそうです。
器でありながら、道具でもある片口
「片口は、酒などを入れる器でありながら、注ぐという機能も持ち合わせています。器でありながら道具でもあるのが片口の魅力のひとつ。そして注ぎ口がついていることで、煮物などを盛ったときなど、汁を張っていなくてもテーブルの上でぐっと存在感を発揮するんです」とPond Galleryの岩橋謙さん。
“注ぐ”という機能を持たせた片口は、実際に注ぐ動作をしなくても、器があるだけでその周囲の空気に動きをもたらすのかもしれません。
“注ぐ”という機能を持たせた片口は、実際に注ぐ動作をしなくても、器があるだけでその周囲の空気に動きをもたらすのかもしれません。
「口がつくと、とたんに造形としての面白さが出てきます」と熊本さん。大切にしているのは、「一体感」だとか。母体(器の本体部分)に合わせた注ぎ口をつけて完成させます。とくにこだわっているのが、土の風合いを残すこと。手びねりでつくる注ぎ口は、土を手で平らにしたときにできる周囲の荒れはそのままに、ろくろで筒状にひいたものを切ってつくる注ぎ口は切り口の荒れはそのままに。きれいに整形したりせず、土の荒れた感じをあえて活かしています。
地元・唐津焼の雰囲気も活かしながら
熊本さんの地元は唐津焼で名高い佐賀県唐津市。唐津焼きは“土もの”と呼ばれる陶器で、土の表情を活かした器が作られてきました。
熊本さんが使っているのは、磁土。一般的に白磁などは陶石を砕いたあと不純物を取り除くなどして滑らかに仕上げますが、熊本さんは作品によってはあえて取り除かれたものを土に加えて作陶しています。扱いにくいけれど表情が豊かになるというのがその理由。
「唐津焼の雰囲気も反映できたらいいなと思うんです」。
熊本さんが使っているのは、磁土。一般的に白磁などは陶石を砕いたあと不純物を取り除くなどして滑らかに仕上げますが、熊本さんは作品によってはあえて取り除かれたものを土に加えて作陶しています。扱いにくいけれど表情が豊かになるというのがその理由。
「唐津焼の雰囲気も反映できたらいいなと思うんです」。
絵付をするときは、日本で初めて絵付けをしたともいわれる「絵唐津」から、草木や花、鳥などのモチーフを得ているそうです。
色合いの豊かさや茶目っ気のあるデザインも楽しい
熊本さんの作品は、色合いの豊かさにも魅力があります。
「釉薬や顔料の組み合わせや焼成の温度などによって、いろいろな色合いが出ます。その工夫が楽しい」。どんな形の器をつくるかよりも先に、どんな色の器をつくろうかを考えるといいます。「僕は“釉薬ありき”で作陶している面もあるんですよ」と笑います。
確かにギャラリーの中の片口はさまざまな色合いで、造形の面白さともあいまって、それぞれに違う雰囲気をもっています。
目をひいたのはどこか少しアンティークっぽい雰囲気の片口。イランで出土した紀元前のブルーの焼き物からヒントを得たものだそう。すぐ後ろの白い片口と同じ釉薬を使っているというから驚きです。「顔料を加えることでこの色合いになるんです」。
「釉薬や顔料の組み合わせや焼成の温度などによって、いろいろな色合いが出ます。その工夫が楽しい」。どんな形の器をつくるかよりも先に、どんな色の器をつくろうかを考えるといいます。「僕は“釉薬ありき”で作陶している面もあるんですよ」と笑います。
確かにギャラリーの中の片口はさまざまな色合いで、造形の面白さともあいまって、それぞれに違う雰囲気をもっています。
目をひいたのはどこか少しアンティークっぽい雰囲気の片口。イランで出土した紀元前のブルーの焼き物からヒントを得たものだそう。すぐ後ろの白い片口と同じ釉薬を使っているというから驚きです。「顔料を加えることでこの色合いになるんです」。
ちょっと珍しい手つきの片口もありました。提酒器(ていしゅき)というのだそうです。絵を描いた部分はあえて釉薬を取り除き、絵の筆致を活かした仕上げ。この片口、赤や黄色などの鮮やかな花を一輪、あるいは瑞々しいグリーンの葉などを活けて、お客様のお出迎えのシーンを彩るのも良さそうです。
珍しいといえば、蓋物の片口もありました。取手に施した象や鳥などのちょっと笑顔になってしまいそうなモチーフは、テーブルの上に明るさをプラスしてくれそうです。
テーブルにアクセントとインパクトをプラスし、花を活けるなど、アイデアによっては使い方が広がる片口。くらしの中に、片口をひとつ、加えてみてはいかがですか。
photo / 佐藤紀子
作家紹介
熊本象さん/1977年、佐賀県唐津市生まれ。陶芸家・岡晋吾氏に学び、2010年より赤水窯で作陶。
ギャラリー紹介
Pond Gallery/2014年7月オープン。写真、絵画、陶磁器、衣服、アクセサリーなどの作品を展示。作家と相談しながら、魅力的な展示を開催している。
東京都目黒区上目黒2-30-8