怪しくも楽しい、世界の謎に迫る『神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の脅威の世界展』
- 公開:2018.2.2
- アート・カルチャー
現在、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催されている『神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の脅威の世界展』。森羅万象をこの手にした皇帝ルドルフ2世が収集した、芸術、科学、占星術などの貴重な美術品の数々が堪能できる本展覧会をご紹介します。
ヨーロッパ史上最強のオタクである、皇帝ルドルフ2世
16世紀末から17世紀初頭にかけて、神聖ローマ帝国皇帝として君臨した、ハプスブルク家のルドルフ2世。
あらゆるジャンルに興味があった彼は、森羅万象のあらゆる謎を解くことやさまざまな物をコレクションすることに情熱を傾けました。コレクションの対象は、芸術作品や不思議な物・珍しい物にはじまり、科学などの最新の技術が使われた物まで。しかも、“好奇心の収集家”に留まらず、芸術家から天文学者・錬金術師などの知識人までさまざまな人を擁護した“庇護者”でもありました。
本展覧会では、ジュゼッペ・アルチンボルドをはじめとする、ルドルフ2世が愛好した芸術家たちの作品を中心に、版画を含む絵画作品約80点と、当時のコレクターズアイテムであった工芸品や天文道具約20点、天文学や錬金術に関する貴重な資料など、120点余りの作品が展示されています。
ルドルフ2世が収集した驚異のコレクションから、怪しくも楽しい世界の謎に迫ってみましょう!
あらゆるジャンルに興味があった彼は、森羅万象のあらゆる謎を解くことやさまざまな物をコレクションすることに情熱を傾けました。コレクションの対象は、芸術作品や不思議な物・珍しい物にはじまり、科学などの最新の技術が使われた物まで。しかも、“好奇心の収集家”に留まらず、芸術家から天文学者・錬金術師などの知識人までさまざまな人を擁護した“庇護者”でもありました。
本展覧会では、ジュゼッペ・アルチンボルドをはじめとする、ルドルフ2世が愛好した芸術家たちの作品を中心に、版画を含む絵画作品約80点と、当時のコレクターズアイテムであった工芸品や天文道具約20点、天文学や錬金術に関する貴重な資料など、120点余りの作品が展示されています。
ルドルフ2世が収集した驚異のコレクションから、怪しくも楽しい世界の謎に迫ってみましょう!
怪しくも楽しい「驚異の部屋」
15世紀から18世紀にかけてヨーロッパの上流階級で、さまざまなものを集めて陳列した部屋、「驚異の部屋」を作ることが流行していたといわれています。各地で数々の驚異の部屋が発達を遂げましたが、その中でも、ルドルフ2世の驚異の部屋は素晴らしいプライベートミュージアムとして、もっとも豊かで有名なものの一つとなり、当時のヨーロッパ芸術文化の一大拠点となりました。美しきもの、奇妙なもの、怪物染みたものや異国趣味の大の愛好者であった皇帝は、同時代のあらゆる収集家を凌駕し、そこに帝国の国力が強化された姿を見ようとしたといわれています。
繊細な細工が施されている美しいからくり時計、煌めく宝石が散りばめられいる杯など。その中には、架空の動物「一角獣」のツノのような胡散臭い代物(写真真ん中)や、望遠鏡や時計といった最新の技術まで…見れば見るほど魅力に満ちています。
繊細な細工が施されている美しいからくり時計、煌めく宝石が散りばめられいる杯など。その中には、架空の動物「一角獣」のツノのような胡散臭い代物(写真真ん中)や、望遠鏡や時計といった最新の技術まで…見れば見るほど魅力に満ちています。
収集される世界
プラハの宮廷文化を語るルドルフ2世のコレクションの中でも、最も驚異的だったのは3,000点にも及んだ絵画作品だったそうです。昨年、日本で公開されて話題にもなったピーテル・ブリューゲル(父)が手がけた「バベルの塔」などの傑作群はもちろん、皇帝が城に雇い入れた同時代の芸術家達の作品によって、特異なコレクションが築かれていきました。
愛らしい動植物画を得意としたルーラント・サーフェリーは、ルドルフ2世がプラハ内につくった動物園や植物園の珍しい生き物や草花を記録した作品を残しています。彼の作品(写真右)に描かれている動物に目をこらすと、絶滅してしまった鳥のドードーがいました!サーフェリーによって描かれた生き生きしたドードーの姿が、「アリス・イン・ワンダーランド」をはじめ私たちが思い描くイメージを作ったそうです。見れば見るほど…今にも動き出しそうなほどリアルです。
また、自然の博物を主題として精密画を得意としたヨーリス・フーフナーヘルは、ルドルフ2世の求めに応じて繊細で装飾的な挿絵を写本に施したそうです。細密画「人生の短さの寓意、花と昆虫のいる二連画」は、日本初公開作品なので会場を訪れた際は忘れずにチェックしてください。トンボやチョウの羽根の筋までも表現する細やかさ、小さきものへの眼差しを向ける彼の視点に驚かされます。
愛らしい動植物画を得意としたルーラント・サーフェリーは、ルドルフ2世がプラハ内につくった動物園や植物園の珍しい生き物や草花を記録した作品を残しています。彼の作品(写真右)に描かれている動物に目をこらすと、絶滅してしまった鳥のドードーがいました!サーフェリーによって描かれた生き生きしたドードーの姿が、「アリス・イン・ワンダーランド」をはじめ私たちが思い描くイメージを作ったそうです。見れば見るほど…今にも動き出しそうなほどリアルです。
また、自然の博物を主題として精密画を得意としたヨーリス・フーフナーヘルは、ルドルフ2世の求めに応じて繊細で装飾的な挿絵を写本に施したそうです。細密画「人生の短さの寓意、花と昆虫のいる二連画」は、日本初公開作品なので会場を訪れた際は忘れずにチェックしてください。トンボやチョウの羽根の筋までも表現する細やかさ、小さきものへの眼差しを向ける彼の視点に驚かされます。
魅惑の宮廷画家たち
アルチンボルドにスプランガー、ファン・ラーフェスティン…ルドルフ2世のもとに集まった画家たちは、時に怪しげな雰囲気すらたたえた優雅な芸術をプラハで生み出していきました。
「三日後に復活する」と予言を残して処刑されたキリストが、その宣言通り復活を果たした様子が描かれている宗教画や、女装するヘラクレスといった神話に出てくる登場人物が織りなす関係性が面白い神話画。その他にも、ルドルフの治世を讃えて野菜や花などで構成した皇帝の肖像画、そして少々エロティックな寓意画もあります。
「三日後に復活する」と予言を残して処刑されたキリストが、その宣言通り復活を果たした様子が描かれている宗教画や、女装するヘラクレスといった神話に出てくる登場人物が織りなす関係性が面白い神話画。その他にも、ルドルフの治世を讃えて野菜や花などで構成した皇帝の肖像画、そして少々エロティックな寓意画もあります。
好奇心が掻き立てられる、本展覧会
会場では、ルドルフ2世が築き上げた「驚異の部屋」の想像を膨らませ、皇帝の好奇心を追体験できる工夫がされています。
また、本展覧会に合わせて開催記念講演会やコスモプラネタリウム渋谷とコラボレーションしたイベントが開催されたり、映画監督であり現代美術家でもあるフィリップ・ハースが、アルチンボルドの作品にインスパイアされ、ファイバーグラスなどの素材で、野菜や果物・花などを本物そっくりに創作し、2次元の絵画作品を立体的に仕上げた巨大彫刻のアルチンボルドの《四季》シリーズを特別に展示しています。こちらのブースは撮影可能です。
皇帝としてなすべき職務や義務よりも、コレクションに関わることの方を好んだ、ルドルフ2世。会場を巡るとその情熱は並大抵のものではなかったことが伝わってくると思います。プラハに花開いたユニークな宮廷文化…その実態を紐解く上でも、膨大なコレクションが並び、魔術的ともいえる魅力に満ちた創造と科学の世界を楽しめる、「驚異の部屋」に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
また、本展覧会に合わせて開催記念講演会やコスモプラネタリウム渋谷とコラボレーションしたイベントが開催されたり、映画監督であり現代美術家でもあるフィリップ・ハースが、アルチンボルドの作品にインスパイアされ、ファイバーグラスなどの素材で、野菜や果物・花などを本物そっくりに創作し、2次元の絵画作品を立体的に仕上げた巨大彫刻のアルチンボルドの《四季》シリーズを特別に展示しています。こちらのブースは撮影可能です。
皇帝としてなすべき職務や義務よりも、コレクションに関わることの方を好んだ、ルドルフ2世。会場を巡るとその情熱は並大抵のものではなかったことが伝わってくると思います。プラハに花開いたユニークな宮廷文化…その実態を紐解く上でも、膨大なコレクションが並び、魔術的ともいえる魅力に満ちた創造と科学の世界を楽しめる、「驚異の部屋」に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
photo / 新麻記子
『神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の脅威の世界』
会場: Bunkamura ザ・ミュージアム
会期:1月6日(土)~3月11日(日)
*2/13(火)は休館
時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)