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“チョークアート”との出会いがもたらしたもの。それは自分らしい仕事のかたち

今から15年前、子供英会話の講師をやっていた20代前半の女性が手に取った雑誌の小さな記事。偶然にも、そこで出会ったのは衝撃的なチョークアートの世界でした。そのすべてに魅了されて、間もなくオーストラリアへ。そんな運命的なエピソードとともに、現在はチョークアーティストとして活躍するAsamiさんをご紹介します。

“チョークアート”との出会いがもたらしたもの。それは自分らしい仕事のかたち

魅了されたチョークアートの世界

チョークアーティストとして活躍するAsamiさん

「初めてチョークアートを知った時は衝撃的でした。偶然、手に取った雑誌にオーストラリア人のチョークアーティストの小さな記事が載っていて、そこで紹介されていたカラフルなチョークアートの立体感や光沢感にすっかり魅了されて」と話すのは、チョークアーティストとして活躍するAsamiさん。初めてチョークアートを見た時は何にどうやって描いているのだろうと、すぐに興味を持ったといいます。
「チョークアートというと、どうしても学校で使っているチョークを思い出すので、最初はそのカラフルなものと、学校のチョークのイメージが結びつかなくて(笑)。その頃はチョークアーティストはほとんど日本にはいなかったと思います。教えてくれるような教室もなかったので、これはオーストラリアに行くしかないと思って(笑)」。

チョークアートの作品

Asamiさんのチョークアートとの出会いは運命的なものでした。社会人3年目の時、子供英会話の講師をやっていたAsamiさんは「短大は英語科でカナダに留学し、英語をいかした職業に就きたいなと思っていたので、英会話の講師という職業を選んだのですが、それでもまた留学をしたいという気持ちがありました。でも、ただ留学をするのではなく、何かを身に付けて仕事にできることがないと、再度留学をする意味がないんじゃないかと踏ん切りがつかなくて。そんな時にチョークアートに出会って、これならちゃんと仕事としてやっていけると思ったのです」と、その当時のことを振り返ります。

新しい自分へと、突き動かしたもの

チョークアートで書かれた象

−−雑誌の記事でチョークアートのことを知ったのが、すべてだったと思いますが、英会話の講師を辞めて、オーストラリアに行くことを決断した、その熱意やバイタリティーはどこにあったのでしょうか?

Asamiさん「仕事に転換できるという予想図ができあがったからです。記事で初めてチョークアートを知った時に“きれいだな”“すごいな”だけで終わらず、きっと日本で自分なりにサービスにできると価値を見出し、仕事にしていけると思えたこと。それが仕事を辞めて、オーストラリアに行ってみようと思えるきっかけになりました」。

大きめのチョークアート作品

−−実際にオーストラリアまで行って得たものはありましたか?

Asamiさん「チョークアートを知るには、まず実際に何を使って、どういう風に描いているのかを現地に行って見てしまった方が早いと思いました。黒板の使い方や、どんなチョークを使っていて、コーティングは何をしているのかなど、最初から独学で時間をかけていくことよりも、知りたいことを瞬時に得ることができたのが良かったですね。
とは言っても、アトリエのような場所でのプライベートスクールで、3週間くらい学ぶクラスだったので、学べたのはほんの基礎程度。それからは独学で学ぶためオーストラリアに残りました。先生は職人タイプの方で、手取り足取りではなく、あくまでオーソドックスなことだけを教わりました。なので、ちょっと消化不良なところもありましたが(笑)」。

カフェに飾られたチョークアート

−−直接、自分の目で見て感じて、だんだんチョークアートに対する気持ちが強くなっていったことがよくわかるエピソードですね。独学の苦労がその後の自分にいかされているのでしょうか?

Asamiさん「そうですね。その時にすべてを教わっていたら、苦労知らずで技術を手に入れていたかもしれません。似顔絵の描き方もそうですし、動物の描き方も教わらなかったので。何もわからないなりに独学で苦労したことによって、自分の技術が飛躍的に伸びたのかもしれません」。

自分らしい“特別”なサービスとは何か

立体的なリンゴのチョークアート

Asamiさん「初めてチョークアートの作品を見た時は、カラフルでおいしそうなフルーツなど食べ物が描かれていて、その立体感や光沢感に衝撃を受けました。でも実際に自分が学んで日本で同じようなことをするかどうか考えた時に、それは自分ではなくて他の人でもいいのではないかという気持ちになったのです。じゃあ、サービスとして自分なら何ができるのだろうと。行き着いたのが、ウェルカムボードでした」。

チョークアートで書かれたウエディングボード

−−ウェルカムボードを描くときに、大切にしていることはありますか?

Asamiさん「特別なものなので、お二人だけのためにカスタマイズしたものを作りたいと思ってウェルカムボードのサービスを始めました。ご好評をいただき、おかげさまで多くの方に知っていただきました。当時のウェルカムボードは習字や似顔絵のものがほとんどで、それだけでは面白くないと思って、お客様の出会いのエピソードや好きなものをお伺いして、一枚のボードに表現しています。ただチョークアートを描くのではなく、お二人の思い出を詰め込んだウェルカムボードは二つとない宝物になります」。

日常にチョークアートがなかった時代から現在へ

Asamiさんが書き起こしたイメージイラスト

−−今でこそ街を歩けば至るところでチョークアートを目にすることができますが、当時を振り返って心境はいかがでしょうか?

Asamiさん「今だったら、チョークアーティストになるという選択肢はもちろん、オーストラリアまで行くこともなかったかもしれないですね。これだけチョークアートが溢れていて、チョークアートを教える人や場所があったなら、それを仕事にしてみようというより、趣味で楽しむくらいで終わっていたかもしれません。当時はまだチョークアートの情報が少なくて、何も知らないからこそ、好奇心や興味をくすぐられるものがありました。

今ではチョークアートが自分に合っているって、本当に思います。自分がまったく描けなかったら長く続かなかったかもしれないですが、描けば描くほど上手くなって、描けば描くほどお客様が喜んでくれて、プラスのサイクルがたくさんできて、今に繋がっているのだと感じます。チョークアートの本も出版できました。ホームページも3サイト運営しているのですが、昨年は会社を設立しました。ちょっとずつでも、上へ上へ上がれているのが、自分にとってステップアップになり、毎日が充実しています」。

仕事で大切にしている2つのこと

Asamiさんのロゴマーク

Asamiさん「仕事で大切にしているものに、個人事業主から始まった時に決めた2つのことがあります。一つはアーティストとしての心。絵を描くということをアーティスティックにやることです。もう一つはしっかりとお金になること。お客様がいてニーズに応えられて、それ以上のものを提供できる仕組みにしなければ、仕事として成り立たないと思いました。アーティストと仕事。その二つを掲げて、実はロゴマークの二本のフラッグにも、その決意を表しています。ただ自分の中の世界だけでやっているならアーティストだけで終わってしまいますが、お客様に喜んでいただけること、なにか打ったら返ってくること。反応が嬉しいから仕事として続くのかなと思います。

また、ロゴにある王冠の真ん中がリンゴになっているのですが、昔から私の名前のAsamiの“A”に絡めて、リンゴ(apple)のキャラクターをよく描いたりしていたこともあり、“初心忘るべからず”ということで、リンゴの王冠にしています。また、社名のLIFEも人生と生活にかけて“人生(生活)にチョークを”という意味を込めて、LIFE with CHALKとしました」。

Asamiさんのチョークアート作品

不定期ですが事前予約があれば開催しているというワークショップも、参加して楽しかったと思っていただけることが嬉しい。Asamiさんにとって、そんなシンプルな反応がチョークアーティストとして活動する上での満足度となり、原動力になっているようです。「職業が変わっても、今に至る上で遠まわりではなく、すべてがプラスになっていることを実感している」と、チョークアーティストの前は英会話の講師だったAsamiさんにとって、“伝える力”は職業が変わっても、変わることのない自分だけの強み。いまはチョークアートという仕事を通して、多くの人に喜びや楽しさをもたらしています。

photo / チョークアーティストAsami、Sheage編集部

Asamiさんのロゴマーク

LIFE with CHALK
東京都港区南青山2-2-15 Win Aoyamaビル-UCF9階
チョークアーティスト:Asami

http://www.atoa-art.com/

この記事を書いた人

渡邊 孝明 エディター&ライター/関心と取材のテーマは、旅と北海道とものづくりとライフスタイルとアートと歴史とまちと乗りものと温泉と麺類と。だいたいのファクターは、旅の...

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