どこにも載っていない料理家のしあわせレシピvol.2 今、食べさせたい「とっておきの一皿」
- 公開:2017.10.1
- ライフスタイル
おいしいってしあわせ。おいしさというしあわせを追求し続ける料理家たちは、「しあわせとは?」という質問に各々の答えを持っているはず。『okatte sun!』こと料理愛好家の小嶋令子さんの連載2回目は、小嶋さんが今、みんなに食べさせたい「とっておきの一皿」から、しあわせの正体に迫っていきます。
献立づくりは天気予報チェックから
埼玉県川口市にある、古い一軒家をリノベーションしたおしゃれなカフェ・senkiya。そこで週2、3回ランチを担当するのが、『okatte sun!』こと料理愛好家の小嶋令子さんです。彼女の作るランチプレートは、とにかく品数が多く(取材日は7品!)、それぞれがたっぷり具沢山。腹ペコのサラリーマンだって満足させるほどガッツリなのに、実は野菜中心でヘルシー。毎日、食べたいと思わせるおいしさがあります。
3回連載の2回目にあたる今回は、小嶋さんが今、みんなに食べさせたい「とっておきの一皿」から「しあわせって何だ?」を考えていきます。
3回連載の2回目にあたる今回は、小嶋さんが今、みんなに食べさせたい「とっておきの一皿」から「しあわせって何だ?」を考えていきます。
「献立を考える時は、まず天気予報を見ます。ランチを出す日が、晴れているのか、雨なのか、暑いのか、寒いのか。よく晴れて暑くなるという予報だったら、お酢や柑橘類、ヨーグルトなどの酸味を活かしたさっぱりしたものを入れてみようと考えます。その上で“あえて外す”こともしたくって、たとえば今日のように暑い日なのに粕汁を出すとか。
お客さんを喜ばせたい、驚かせたいと献立を考える一方で、今、自分が食べたいものも必ず入れるようにしています。“食べたいから作る”という基本に忠実でいたいからです。だから、お腹の空いている時が、献立作りのチャンス。アレもコレもと食べたいものが、次々に浮かんでくるからです」
お客さんを喜ばせたい、驚かせたいと献立を考える一方で、今、自分が食べたいものも必ず入れるようにしています。“食べたいから作る”という基本に忠実でいたいからです。だから、お腹の空いている時が、献立作りのチャンス。アレもコレもと食べたいものが、次々に浮かんでくるからです」
「とっておきの一皿」は『大豆と小魚の甘辛からめ』
「今日、どうしても献立に入れたかったのが『大豆と小魚の甘辛からめ』。今、みんなに食べさせたい「とっておきの一皿」であり、今、私自身が一番食べたいものです。これ、実は、小学校の時の給食を再現したものなんです。
私が通っていた小・中学校は栄養士さんが同じ方で、その方の考えて作る給食が本当においしかったんです。給食の時間が待ち遠しくて仕方がなかった。
イモのバター煮とかね、おいしかったな。でも特に好きだったのが、この『大豆と小魚の甘辛からめ』。大人になった今だからわかることですが、給食には予算があって、栄養価があって、限られた中でやりくりするのは相当大変なはず。でも、そんなことを微塵も感じさせないおいしさが毎食、毎食ありました」
☆大豆と小魚の甘辛からめのレシピ(2~3人前)
・大豆の水煮・・・1缶
・小魚(イリコやコウナゴ)・・・ひとつかみ
【A】しょうゆ・・・大さじ1
【A】みりん・・・大さじ2
【A】砂糖・・・大さじ1
・片栗粉・・・大さじ1~2
(1) 大豆の水煮をサッと水で洗って水けを切り、片栗粉を全体にまぶす。
(2) (1)を180度の油でカリッとするまで揚げる。
(3) 小魚はそのまま180度の油で素揚げし水分を飛ばす。
(4) 別の小鍋に【A】を合わせて火にかけ、とろみがつくまで煮切る。
(5) (2)と(3)をボウルに合わせ、(4)を加えて全体によく混ぜ合わせる。
私が通っていた小・中学校は栄養士さんが同じ方で、その方の考えて作る給食が本当においしかったんです。給食の時間が待ち遠しくて仕方がなかった。
イモのバター煮とかね、おいしかったな。でも特に好きだったのが、この『大豆と小魚の甘辛からめ』。大人になった今だからわかることですが、給食には予算があって、栄養価があって、限られた中でやりくりするのは相当大変なはず。でも、そんなことを微塵も感じさせないおいしさが毎食、毎食ありました」
☆大豆と小魚の甘辛からめのレシピ(2~3人前)
・大豆の水煮・・・1缶
・小魚(イリコやコウナゴ)・・・ひとつかみ
【A】しょうゆ・・・大さじ1
【A】みりん・・・大さじ2
【A】砂糖・・・大さじ1
・片栗粉・・・大さじ1~2
(1) 大豆の水煮をサッと水で洗って水けを切り、片栗粉を全体にまぶす。
(2) (1)を180度の油でカリッとするまで揚げる。
(3) 小魚はそのまま180度の油で素揚げし水分を飛ばす。
(4) 別の小鍋に【A】を合わせて火にかけ、とろみがつくまで煮切る。
(5) (2)と(3)をボウルに合わせ、(4)を加えて全体によく混ぜ合わせる。
「記憶」とつながり「人」とつながるというしあわせ
「地元・佐渡島の、あの校舎の、あの教室の、あの席で食べた、あの味。舌の記憶だけを頼りに『大豆と小魚の甘辛からめ』の試作が成功した時は、思わず『できた!』って声が出ちゃいました。調理のポイントは、揚げた大豆と小魚のモチッとカリッとした食感を損なわないよう、ごく少量のタレで絡めること。
この仕事のやりがいは、私のおいしいと思う味、懐かしいと思う味を、生まれも育ちも違う誰かが、私と同じようにおいしい、懐かしいと感じて、共感してくださること。あ、わたしだけじゃないんだって、同志を得たような頼もしさと嬉しさに包まれます。ついさっきもランチを食べてくださったご婦人が、『大豆と小魚の甘辛からめ』を『なんか懐かしかった』と喜んでくれて、わざわざお勝手までレシピを聞きに来てくださいました」
小嶋さんの「とっておきの一皿」は、記憶とつながり、人とつながる。懐かしい味とともに蘇る大切な人の記憶だったり、多くを語るよりも深くわかり合えたり。そんな奇跡の「つながり」こそが、小嶋さんの「とっておきの一皿」が生む、しあわせなのかもしれません。
次回、連載の最終回は、小嶋さんが家でこっそり楽しんでいる「絶品ズボラ飯」のお話からしあわせを探っていきます。すぐ真似できるレシピも必見!ではお楽しみに。
この仕事のやりがいは、私のおいしいと思う味、懐かしいと思う味を、生まれも育ちも違う誰かが、私と同じようにおいしい、懐かしいと感じて、共感してくださること。あ、わたしだけじゃないんだって、同志を得たような頼もしさと嬉しさに包まれます。ついさっきもランチを食べてくださったご婦人が、『大豆と小魚の甘辛からめ』を『なんか懐かしかった』と喜んでくれて、わざわざお勝手までレシピを聞きに来てくださいました」
小嶋さんの「とっておきの一皿」は、記憶とつながり、人とつながる。懐かしい味とともに蘇る大切な人の記憶だったり、多くを語るよりも深くわかり合えたり。そんな奇跡の「つながり」こそが、小嶋さんの「とっておきの一皿」が生む、しあわせなのかもしれません。
次回、連載の最終回は、小嶋さんが家でこっそり楽しんでいる「絶品ズボラ飯」のお話からしあわせを探っていきます。すぐ真似できるレシピも必見!ではお楽しみに。
photo / 金田幸三
senkiya
埼玉県川口市石神715
料理家:okatte sun!