島の暮らしから生まれた「能登デザイン室」のローカルなプロダクトデザイン

「能登デザイン室」は、奈良雄一・田口千重夫妻が石川県の能登島に2007年に設立したデザイン事務所。一級建築士事務所でもあり、活動の幅は住宅から家具、インテリア、グラフィックまであらゆる分野に及びます。
能登島は、石川県北部の七尾湾に浮かぶ半農半漁の島。マリンレジャーを楽しむことができる観光の島としても知られています。能登デザイン室では、古くから伝わる和の素材に光を当てたり、島の手仕事や暮らしの道具からヒントを受けたりしたプロダクトを多くデザインしています。島のスローで丁寧な暮らしがそこに生きているのです。

漁船で使われている船舶用の照明にケヤキのスタンドを付けた家庭用のランプです。船舶用の電球は、海の上で漁師さんの生命を預かる質実剛健なつくり。フィラメントが切れにくいように輪のように繋がった構造になっています。そのため、真鍮製のガードのランプ影も独特の丸い形に映し出されます。
闇の中でゆったりと波に揺られる船の上に思いをはせながら、暖かく幻想的な光を楽しむことができるランプです。海が暮らしと繋がっている能登ならではのデザインといえるのではないでしょうか。

製造：船のでんきや日東電機　大:18,000円（税別）、小:17,000円（税別）

文字盤に能登の手漉き和紙を使った時計です。タイプは白と茶色の2つ。白は和紙の材料として古くから知られている楮（こうぞ）を使っています。茶色の方はアテ（能登ヒバ）という能登特有の木の皮を使ったもの。時計の数字は、金属製の活字で版を組み、印刷機で紙にインクをプレスして印刷する「活版印刷」が使われています。そのため、文字の輪郭に凹凸が見られる独特の風合いを生むのですね。島の職人が紙を漉き、今では少なくなった活版印刷を金沢の印刷所で行った石川ローカルの時計と言えます。

素材: 能登 二行和紙　印刷： 金沢 尚栄堂　5,500円（税別）

昔から土間や土壁などに使われていた自然素材である珪藻土を文字盤に使っています。日本の伝統技能である左官の技で仕上げた職人手づくりの時計。手で触れて温かい土という素材の雰囲気を生かしたデザインで、和の空間にもモダンな空間によく合うのが魅力。珪藻土は、珪藻という藻の死骸が長い年月の間に海や湖の底に堆積し、粘土状の泥土になったもの。吸水性、保湿性、消臭性といった機能を持ち、近年、再評価をされているエコ素材です。文字盤の中央に刻まれた「SIO2」は、珪藻土の主成分である二酸化ケイ素の化学記号。ミニマムなデザインのアクセントになっています。ホワイト、ピンク、グリーン、イエローの４色から選べます。

製造：Lemnos Inc.　6,264円（税込み）

不思議な形をしています。実は、原稿用紙スタンプという文房具。箱の中で丸いドラムが回転する仕組みになっています。朱肉をつけて、紙の上でコロコロさせると原稿用紙の枠がスタンプされます。紙に手書きで手紙を書くことが少なくなった現在ですが、紙のぬくもりやインクの味わいがメールやLINEには無い手書きのよさ。そして、手紙が届くまでの待つ時間も手紙の楽しさですね。手書きの手紙を書くきっかけにこんな道具はいかがでしょうか。

木の塊から削り出した箱とドラムを木の芯棒ではめ込んで固定しただけのシンプルなつくりですが、シンプルなだけに高い加工の精度が求められます。
第10回シャチハタデザインコンペで原賞受賞のプロトタイプから改良を重ねた製品です。

製作：嶋モデリング　9,180円（税込み）

「能登デザイン室」がデザインしたプロダクトは、島の丁寧な暮らしに根ざした手仕事。そこからは伝統的な素材のあたたかさが感じられます。都会の忙しい暮らしの中にも丁寧なスローライフのエッセンスを取り入れてみてはいかがでしょうか。