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猫が教えてくれること「悲しみの底」/版画家・猫野ぺすかさんの場合vol.2

猫が教えてくれること「悲しみの底」/版画家・猫野ぺすかさんの場合vol.2

猫の猫らしい行動に、自分の生き方を重ねてハッとする瞬間があります。版画家の猫野ぺすかさんもその一人。小学2年生から20歳まで、姉のように慕った、最愛の猫・ミミから教わったのは、身が引き裂かれるような別れのつらさ、「悲しみの底」でした。

心細い私を、姿が見えなくなるまで見送ってくれたミミ

版画家・猫野ぺすかさんの愛猫と絵本

まだら模様の「まだちゃん」(16歳)、長毛の「ゆうゆう」(8ヵ月)、白黒模様の「しんしん」(8ヵ月)。3匹のオス猫たちの飼い主は、『おおかみとしちひきのこやぎ』(フレーベル館)などで知られる、版画家の猫野ぺすかさんです。

お母様が猫好きなこともあって、ぺすかさんは、子どもの頃からずっと猫と一緒。新入りの「ゆうゆう」と「しんしん」を含めると、ともに暮らした猫はなんと11匹にもなります。しあわせな出会いがあればつらい別れもあり、特に忘れられないのは、小学2年生から20歳まで一緒にいたミミという猫だそう。

「子どもの頃の私は人が苦手で、猫になりたくて、ずっとミミのうしろをついて歩いているような子でした。ミミは私の姉であり、師匠のような存在だったんです。『ミミは学校に行かなくていいからいいなぁ…』と、通学の足取りが重い私のことを思ってか、毎朝、住んでいた団地の敷地ぎりぎりの所まで一緒に歩いて来て、私が見えなくなるまでそこで見送ってくれました」

ある晩、子猫の声で目覚めたら…

版画家・猫野ぺすかさんの愛猫2

「ある晩、ミーミーという子猫の鳴き声で目が覚めて、バッと布団をはいだら、ミミが私の布団の中で出産していたこともありました(笑)。シーツは血だらけ。しかも、ミミが何やら食べているので、慌てて母を呼び、『私が寝ている間につぶしちゃった子猫をミミが食べちゃったー』と訴えると、状況を確認した母が、『胎盤とかを食べているのよ、大丈夫だから』って」

出産用に設えた寝床ではなく、ぺすかさんの布団の中で4匹の子猫を産んだミミ。

「出産を終えたミミは、一人で出産用の寝床に戻り、『ほら、子猫たちを連れてきて』という態度だったので、母と協力して子猫を拭いて、寝床に運んで、汚れたシーツや自分のパジャマを片づけて…大忙しの夜でした。でも、ミミに信頼されていることが嬉しかったし、生まれたての子猫たちはそれはそれは可愛くて」

ミミの死と悲しみの底

版画家・猫野ぺすかさんの愛猫3

相思相愛、本当に仲のいい姉妹のように、いつも一緒だったぺすかさんとミミにも、無常の時が訪れます。

「ちょうど鹿児島の知人を訪ねたその日に、母から電話があって、ミミが亡くなったことを知らされました。ミミは13歳でした。あんなにずっと一緒にいたのに、私はミミの死に立ち会うことができなかったんです…」

電話を受けたまま、知人の前で泣き崩れ、泣いて泣いて泣いて、それでも涙が溢れてくる。

「ミミが死んだら、私も死ぬって本気で思っていました。かけがえのない猫でした。でもね、散々泣いたら、私、お腹が空いたんです。こんなに死ぬほど悲しくても、それだけじゃ死なないんだって、ボーッとする頭の隅で思ったのを覚えています」

版画家・猫野ぺすかさんの愛猫4

「予定を変更してすぐに帰ろうとも思ったのですが、母の強い勧めもあり、当初の予定通り、屋久島に渡って縄文杉を見に行きました。世界遺産に登録される前の屋久島は人もまばらで、山の中を一人で歩いていると、巨大な木の根の存在感に、まるで自分がアリになったように感じました。

そうしてしばらく登っていると、自分の足にすりっと体を摺り寄せてくる感覚があったんです。すぐに『ミミだ!』と思いました。嬉しいのと同じくらい悲しかった。ミミが側にいることを感じながら登った屋久島は忘れられません」

ミミが亡くなって二十数年もの歳月が流れましたが、ミミの話をするぺすかさんの瞳は潤んでいました。飼っていた動物に限ったことではなく、ふと思い出す、何度も思い出す、そして、何度思い出してもやりきれない悲しい別れがあります。その人と一緒に見たかった、見せたかった景色が、暮らしの中にひとつでも増やせるよう、精一杯生きたいと思いました。

さて、次回は、今にも動き出しそうな動物を描く、ぺすかさん創作の根底に流れる「生きているということ」についてです。お楽しみに!

筒井聖子

※掲載内容は記事公開時点のものです。最新情報は、各企業・店舗等へお問い合わせください。
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