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初心者にもやさしい、根津美術館恒例のシリーズ「はじめての古美術鑑賞 ー漆の装飾と技法ー」

現在、根津美術館では「はじめての古美術鑑賞」シリーズを開催中。はじめてシリーズは好評で、今回が3回目となり「漆の装飾と技法」を取り上げます。中国から伝わった作品や日本で発達した技法など、様々な漆装飾を理解するいい機会です。中でもよく目にする金の装飾、「蒔絵」にスポットをあてて紹介します。

初心者にもやさしい、根津美術館恒例のシリーズ「はじめての古美術鑑賞 ー漆の装飾と技法ー」

※主催者の許可を得て撮影しています。

初心者にもわかりやすい古美術の展覧会

「はじめての古美術鑑賞 ー漆の装飾と技法ー」の展示の様子

日本の古美術は敷居が高くて難しいという声が聞かれます。根津美術館ではその声に応え、「はじめての古美術鑑賞」のシリーズを開催してきました。3回目となる今回のテーマは「漆の装飾と技法」です。

日本を代表する工芸品として世界に知られている、漆器。漆は堅牢性(防水性や強度など)を高める役割があり、古代より塗料として生活の道具に使われてきました。奈良時代に中国から美しい装飾の漆器が入ってくると、日本でも様々な装飾がはじまります。

この展覧会では、中国大陸や朝鮮半島の貴重な装飾技法、螺鈿(らでん)、彫漆(ちょうしつ)、存星(ぞんせい)の技術とともに、日本において発達した技法をわかりやすく紹介しています。その中でも、特に日本独自の技法「蒔絵」にスポットをあてて紹介します。

金を蒔くことから発展した「蒔絵」

「はじめての古美術鑑賞 ー漆の装飾と技法ー」重要文化財《春日山蒔絵硯箱》

蒔絵(まきえ)とは、漆を用いて金粉などで漆器の表面に模様をつける、わが国独特の工芸技術。耳慣れない言葉ですが、金粉を「蒔いて絵を表す」という意味があります。
一般的に、漆は塗料というイメージがあると思いますが、接着力が高いため、接着材としての役割も担います。その性質を利用して、漆で描いた部分が固まらないうちに金粉などを蒔いて図柄を表したものが「蒔絵」です。蒔絵の技術はいろいろな形で発展しました。本展でも、蒔絵の技術について様々な角度から紹介しています。

(写真)重要文化財《春日山蒔絵硯箱》日本・室町時代 15世紀

様々な蒔絵の技法

「はじめての古美術鑑賞 ー漆の装飾と技法ー」蒔絵の技法パネル

足利義政の愛藏品として知られる硯箱(すずりばこ)、《春日山蒔絵硯箱》。こちらの重要文化財には多彩な技法が使われていて、蒔絵の各種技法を学ぶことができます。

蓋の表には、満月に照らされた秋野の風景が描かれています。月は金属の薄板を切り抜いて貼りつけ、全体に漆を塗ったあと研ぐ「平文(ひょうもん)」という技法が使われています。蒔絵は金の装飾が主ですが、平文の銀色の金属表現が加わり、お互い対比されて引き立てあっているように感じられます。
その他にも、文様を高く盛り上げる「高蒔絵(たかまきえ)」や、薄く延ばした金粉を蒔いて余白を埋める「梨子地(なしじ)」など、様々な蒔絵の技法を解説とともに、照らし合わせて見ることができます。蓋の裏にも見事な蒔絵がほどこされており、鏡に映し出されているので、解説とともに確認してみて下さい。

(写真)重要文化財《春日山蒔絵硯箱》日本・室町時代 15世紀

「はじめての古美術鑑賞 ー漆の装飾と技法ー」展示と蒔絵技法パネル

《春日山蒔絵硯箱》で使われている技法は、パネルを使ってさらに詳しく解説されています。パネルの解説には、断面図が添えられているので、より理解を深めることができますよ。解説パネルの前に展示されている漆器は、その技法を使った他の作品。技法を理解して、他の作品でもその技を確認しながら鑑賞してみて下さい。

(写真)展示室1風景

技術の向上によって描かれる蒔絵もより精細に

「はじめての古美術鑑賞 ー漆の装飾と技法ー」《百草蒔絵薬箪笥》

こちらは、《百草蒔絵薬箪笥》。江戸時代に作られた、薬剤と器具を納める箪笥(たんす)です。左の薬を入れる箪笥の前面は、蓋で覆われているのですが、蓋裏の装飾が蒔絵技術の極みとも言える精細さで描かれています。

「はじめての古美術鑑賞」《百草蒔絵薬箪笥》圧巻の蒔絵

裏面全面に、びっしりと97種類の薬草が蒔絵で描かれているだけでも驚かされますが、さらに1mmほどの文字で、薬草名が蒔絵の技術で記されているのです。

「はじめての古美術鑑賞」《百草蒔絵薬箪笥》蒔絵拡大図

赤丸で囲んだ部分に文字が書かれています。なんと50倍に拡大してやっと文字が認識できるほどの小ささ!右の写真はそれらの一部を拡大したものです。

蒔絵は、正倉院の宝物に源流が見られ、平安、鎌倉、室町時代と発展してきました。江戸時代の精緻な技は目を見張る向上があります。

(写真)《百草蒔絵薬箪笥》飯塚桃葉作 1基 木胎漆塗 日本・江戸時代 明和8年(1771)

漆の技法を理解できると職人技のすごさが見えてきます

「はじめての古美術鑑賞 ー漆の装飾と技法ー」入口

根津美術館で好評の「はじめてシリーズ」は、古美術の見どころがわかりやすく紹介されています。最初は技法名の文字を読むこともできず、難しいと思っていた古美術の世界。次第に技法がわかってくると、職人が制作する姿が浮かび、漆作品の重みが変わりました。日本で発展した漆の技術を見に「はじめての古美術鑑賞 ー漆の装飾と技法ー」に足を運んでみてはいかがでしょうか?

photo / コロコロ

photo

企画展 「はじめての古美術鑑賞 ー漆の装飾と技法ー」
会場:根津美術館 展示室1・2
住所:東京都港区南青山6-5-1  
会期:2018年5月24日(木)~7月8日(日)
時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日
問い合わせ:03-3400-2356

http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html

この記事を書いた人

コロコロ ライター。著書は10冊ほど。ここではその専門分野についてではなく、趣味の美術鑑賞の情報発信にチャレンジします。最近はビジネスに活かすアート鑑賞も注目されていま...
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