今年のお花見は美術館へ!画家が描く日本の桜が集合、「桜 さくら SAKURA 2018」
- 公開:2018.4.3
- アート・カルチャー
現在、山種美術館で開催中の『[企画展]桜 さくら SAKURA 2018 ー美術館でお花見!ー』。山種コレクションを中心に、日本の春を象徴する桜の作品を厳選し公開する6年ぶりの展覧会です。多くの画家を魅了し作品の題材に選ばれた桜。描かれた桜を見て美術館でお花見を楽しんでみてはいかがですか?
花びらの盛り上がりを表現した「盛り上げ胡粉」という技法
こちらは、満開の桜が描かれた橋本明治(はしもとめいじ)の《朝陽桜》。日本三大桜の一つとしても有名な、福島県の「三春の滝桜」が描かれています。
実際に近づいて作品を見てみると、花びら一つひとつが盛り上がっているのがわかります。これは、「胡粉」という絵の具で、風化したいたぼ牡蠣の貝殻を砕いたもの。これを塗り重ね盛り上げた描法で立体感のある花びらを表現しています。
右の写真は、桜に金砂子が撒かれ華やかに見えます。橋本明治は《朝陽桜》を描くにあたり、冬に三春に行き骨格となる枝ぶりをスケッチし、春になって枝の上から満開の桜をスケッチしたそうです。また、この《朝陽桜》は、山種美術館の初代館長、山﨑種二(やまざきたねじ)が普段目にできないような作品を一般の人たちにも気軽に楽しんで欲しいという思いで依頼して描かれたものなのだそう。
(写真上) 橋本 明治《朝陽桜》 1970(昭和 45)年 山種美術館
(写真下左)橋本 明治《朝陽桜》(部分) 1970(昭和 45)年 山種美術館
(写真下右)橋本 明治《朝陽桜》(部分) 1970(昭和 45)年 山種美術館
実際に近づいて作品を見てみると、花びら一つひとつが盛り上がっているのがわかります。これは、「胡粉」という絵の具で、風化したいたぼ牡蠣の貝殻を砕いたもの。これを塗り重ね盛り上げた描法で立体感のある花びらを表現しています。
右の写真は、桜に金砂子が撒かれ華やかに見えます。橋本明治は《朝陽桜》を描くにあたり、冬に三春に行き骨格となる枝ぶりをスケッチし、春になって枝の上から満開の桜をスケッチしたそうです。また、この《朝陽桜》は、山種美術館の初代館長、山﨑種二(やまざきたねじ)が普段目にできないような作品を一般の人たちにも気軽に楽しんで欲しいという思いで依頼して描かれたものなのだそう。
(写真上) 橋本 明治《朝陽桜》 1970(昭和 45)年 山種美術館
(写真下左)橋本 明治《朝陽桜》(部分) 1970(昭和 45)年 山種美術館
(写真下右)橋本 明治《朝陽桜》(部分) 1970(昭和 45)年 山種美術館
桜はどこに描かれている?大画面の中の一部だけに描かれた桜
こちらは青森の奥入瀬渓流を描いた作品《奥入瀬(春)》です。ぱっと見た限り、どこに桜が描かれているのかすぐにわかりません。しかし、よく見ると作品の中央上部に桜が描かれていることがわかります。作者の奥田元宋は、奥入瀬が大好きで、新緑や紅葉の時期になると体がうずうずしてくると語っていたそうです。最初に奥入瀬の秋を描いてから、その4年後にこちらの作品を描きました。
川に散った花びらが、渓流を流れていないかと探してみましたが、流れの中には確認できませんでした。まだ咲き初めなので、散る状況ではないのかもしれません。満開の桜は壮観ですが、新緑の中にひっそり潜むように描かれた桜も趣がありますね。華やかさだけでなく、咲き始めや散り際を愛でる精神性は日本人らしい眼差しを感じさせられます。
(写真上) 奥田 元宋《奥入瀬(春)》1987(昭和62)年
(写真下左)奥田 元宋《奥入瀬(春)》(部分)1987(昭和62)年
(写真下右)奥田 元宋《奥入瀬(春)》(部分)1987(昭和62)年
川に散った花びらが、渓流を流れていないかと探してみましたが、流れの中には確認できませんでした。まだ咲き初めなので、散る状況ではないのかもしれません。満開の桜は壮観ですが、新緑の中にひっそり潜むように描かれた桜も趣がありますね。華やかさだけでなく、咲き始めや散り際を愛でる精神性は日本人らしい眼差しを感じさせられます。
(写真上) 奥田 元宋《奥入瀬(春)》1987(昭和62)年
(写真下左)奥田 元宋《奥入瀬(春)》(部分)1987(昭和62)年
(写真下右)奥田 元宋《奥入瀬(春)》(部分)1987(昭和62)年
移ろう時間の中で描かれる夜の桜
古来、多くの画家に描かれてきた桜は、描かれたシチュエーションや表現技法だけでなく、時間帯もさまざまでした。朝日の中や春霞の中、そして月夜の桜も描かれています。
こちらの桜の絵は速水御舟が描いた《夜桜》です。画面のほとんどが墨一色で描かれているのですが、墨は薄いため背景は明るく見えます。また、桜の花びらに用いられた胡粉と、金泥(金の粉を溶いたもの)で描かれた葉の葉脈が光を反射するため白く浮かんで見えます。月夜のわずかな光の中に浮かび上がる桜を視覚化した作品だと思いました。
写真:速水 御舟《夜桜》1928(昭和3)年 絹本・彩色 山種美術館
こちらの桜の絵は速水御舟が描いた《夜桜》です。画面のほとんどが墨一色で描かれているのですが、墨は薄いため背景は明るく見えます。また、桜の花びらに用いられた胡粉と、金泥(金の粉を溶いたもの)で描かれた葉の葉脈が光を反射するため白く浮かんで見えます。月夜のわずかな光の中に浮かび上がる桜を視覚化した作品だと思いました。
写真:速水 御舟《夜桜》1928(昭和3)年 絹本・彩色 山種美術館
画家の眼差しを感じてみよう
日本人にとって、古くから調度品や衣装の紋様、詩歌に詠んだり、絵画に描くなど、作品の題材としてよく選ばれる桜。その描き方はバラエティーに富みます。
たとえば、胡粉を使って描く桜であっても、橋本明治の《朝陽桜》のように分厚く盛り上げる描き方もあれば、薄く何層も塗り重ねて透明感のある薄紅の桜を表現した描き方をされた桜もあります。描き出される桜は画家によってさまざまで、その違いを比べてみると、桜の魅力を引き出そうとする画家の感性が伝わってくる気がします。
これまで見てきた桜とは違う表情に触れて、ハッとさせられる瞬間を体験できました。今年は画家の目を通した桜を味わってみてはいかがでしょうか?お天気の心配もいりません。
(写真左)東山 魁夷《春静》1968(昭和43)年 山種美術館
(写真右)東山 魁夷《春静》(部分)1968(昭和43)年 山種美術館
メインビジュアル:石田 武《春宵》2000(平成12)年 山種美術館
たとえば、胡粉を使って描く桜であっても、橋本明治の《朝陽桜》のように分厚く盛り上げる描き方もあれば、薄く何層も塗り重ねて透明感のある薄紅の桜を表現した描き方をされた桜もあります。描き出される桜は画家によってさまざまで、その違いを比べてみると、桜の魅力を引き出そうとする画家の感性が伝わってくる気がします。
これまで見てきた桜とは違う表情に触れて、ハッとさせられる瞬間を体験できました。今年は画家の目を通した桜を味わってみてはいかがでしょうか?お天気の心配もいりません。
(写真左)東山 魁夷《春静》1968(昭和43)年 山種美術館
(写真右)東山 魁夷《春静》(部分)1968(昭和43)年 山種美術館
メインビジュアル:石田 武《春宵》2000(平成12)年 山種美術館
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[企画展]桜 さくら SAKURA 2018 ー美術館でお花見!-
会期:3月10日(土)~5月6日(日)
会場:山種美術館
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(但し、4/30、5/1は開館)