かつてフランスのお城の大食堂に飾られた16枚の絵画が集結。『ルドン−秘密の花園』
- 公開:2018.2.24
- アート・カルチャー
現在、三菱一号館美術館で開催中の『ルドン−秘密の花園』。ドムシー城の食堂に飾られていた16枚のルドンの作品が一堂に会する画期的な展示です。たくさんの絵画に圧倒されますが、その中の一枚の絵にスポットをあてて鑑賞するのもおすすめです。とりまく人たちのストーリーや込められた思いを紐解いてみましょう。
ドムシー城の食堂を飾った全壁画が集結する日本初の展示会
フランスのオルセー美術館・ニューヨーク近代美術館MoMAをはじめとする世界各地の美術館から約90点のルドンの作品を集めた大規模な展示会が、三菱一号館美術館で開催されています。その中でも一番の見所は、かつてフランス・ブルゴーニュ地方のドムシー男爵の城郭の食堂を飾った「植物」を題材とした16枚の壁画。
今回は、その中でもおすすめの、“最大級”のパステル画《グラン・ブーケ (大きな花束)》という作品を中心にご紹介します。
(写真)ドムシー男爵の食堂装飾① 会場風景
今回は、その中でもおすすめの、“最大級”のパステル画《グラン・ブーケ (大きな花束)》という作品を中心にご紹介します。
(写真)ドムシー男爵の食堂装飾① 会場風景
主流派とは関係なく、独自の路線で作品を描き続けたルドン
ルドンが生きたのは、モネやルノワールなど植物や風景など日常のありふれた情景を描く“印象派”の画家たちが活躍した時代。その中にあって、ルドンは幻想的な内面世界に目を向けた絵を描く象徴主義に属し、生涯独自の路線を貫きました。
晩年に描いた《グラン・ブーケ》も“パステルを使って描く”という手法が、ルドンの独自性を表していて、暗闇からパッと浮かび上がったように見える鮮やかな発色が特徴的です。
晩年に描いた《グラン・ブーケ》も“パステルを使って描く”という手法が、ルドンの独自性を表していて、暗闇からパッと浮かび上がったように見える鮮やかな発色が特徴的です。
ルドンには珍しい「植物画」の展覧会
今回、三菱一号館美術館では、ルドンの“植物画”が集められた展示が行われていますが、実はこれは世界初の試みなんだそう。
というのも、ルドンは人の内面や幻想の世界がテーマの作品を多く書いた画家で、代表作も写真のように色もなく少し不気味な作品ばかり。ルドンが黒の世界から抜け出して、色を使い光の表現を追求するようになったのは、60歳の時に《グラン・ブーケ》をはじめとするドムシーの食堂画を描いたのがきっかけだと言われています。植物や樹木・花をテーマの画を描いたのもこの時からで、認知度もあまり高くなく、これまでルドンの「植物画」を一堂に集めた展示会は行われていなかったそうです。
(写真左)《『夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出に)』VI. 日の光》
1891年 リトグラフ/紙(シーヌ・アプリケ)三菱一号館美術館蔵
(写真右)《『起源』II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた》
1883年 リトグラフ/紙(シーヌ・アプリケ) 岐阜県美術館蔵
というのも、ルドンは人の内面や幻想の世界がテーマの作品を多く書いた画家で、代表作も写真のように色もなく少し不気味な作品ばかり。ルドンが黒の世界から抜け出して、色を使い光の表現を追求するようになったのは、60歳の時に《グラン・ブーケ》をはじめとするドムシーの食堂画を描いたのがきっかけだと言われています。植物や樹木・花をテーマの画を描いたのもこの時からで、認知度もあまり高くなく、これまでルドンの「植物画」を一堂に集めた展示会は行われていなかったそうです。
(写真左)《『夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出に)』VI. 日の光》
1891年 リトグラフ/紙(シーヌ・アプリケ)三菱一号館美術館蔵
(写真右)《『起源』II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた》
1883年 リトグラフ/紙(シーヌ・アプリケ) 岐阜県美術館蔵
ドムシー城の食堂に残された1枚《グラン・ブーケ》
ドムシー城に飾られていた16点もの壁画はどのように飾られていたのでしょうか。それを知るためには、全体のイメージを把握できる3階のPhotoSpotがおすすめです。ドムシー城の壁面に飾られていた位置関係が写真で再現されていて、さまざまな形と大きさの絵画でドアや窓の回りを絶妙に避けて飾られていたことが分かります。
この16枚の壁画は、制作を依頼したロベール・ド・ドムシーが亡くなった後、110年もの間、子孫に引き継がれながら人目に触れることなくお城の中に存在していました。しかし1988年、相続の関係で、フランスに物納することになり、食堂の壁画は国の所有物としてオルセー美術館のコレクションとなります。ところが16枚のうち、唯一1点だけは、男爵家の食堂に残され続けました。それが《グラン・ブーケ》だったのです。
他の作品がベージュを基調とした落ち着いた色をしているのですが、それは《グラン・ブーケ》をより一層、引き立てて見せるためだったのではないでしょうか。そう思うと、他の作品とは別格の存在感を放つ《グラン・ブーケ》だけがお城に残されたというのも頷けます。
(写真)ドムシー男爵の食堂装飾① 会場風景
この16枚の壁画は、制作を依頼したロベール・ド・ドムシーが亡くなった後、110年もの間、子孫に引き継がれながら人目に触れることなくお城の中に存在していました。しかし1988年、相続の関係で、フランスに物納することになり、食堂の壁画は国の所有物としてオルセー美術館のコレクションとなります。ところが16枚のうち、唯一1点だけは、男爵家の食堂に残され続けました。それが《グラン・ブーケ》だったのです。
他の作品がベージュを基調とした落ち着いた色をしているのですが、それは《グラン・ブーケ》をより一層、引き立てて見せるためだったのではないでしょうか。そう思うと、他の作品とは別格の存在感を放つ《グラン・ブーケ》だけがお城に残されたというのも頷けます。
(写真)ドムシー男爵の食堂装飾① 会場風景
この場所で様々な人の思いが塗り重ねられて輝きを増す
《グラン・ブーケ》は頭の上の高さで展示されてたと聞き、腰を下げて作品を仰ぎ見てみました。すると、花瓶はギリシア神殿の柱のように見え、花は柱の先から湧き上がってあふれ出しているよう。天から光をまとった花のシャワーが降り注いでいるようで、祝福されているような敬虔な気持ちになりました。
《グラン・ブーケ》の展示は、2012年1月に岐阜県美術館のコレクションを中心に「ルドンとその周辺ー夢見る世紀末」という題での展覧会で日本初公開されてから約6年ぶり。2008年に《グラン・ブーケ》と出会った館長の、ドムシー城の食堂の壁画を再現したいという想いが10年越しに実現した展示会です。そんな館長はじめ、作品を鑑賞したさまざまな人の想いがこの場所に息づいていて、作品の輝きを増しているように思いました。
今回、《グラン・ブーケ》についてご紹介しましたが、このように一つの作品だけでも見どころはいっぱいです。美術展で全ての作品を見ようとすると疲れてしまうという方は、メインビジュアルなど一つの作品を中心に見るのもおすすめですよ。いろいろな楽しみ方ができる『ルドン−秘密の花園』に、ぜひ足を運んでみてください。
(写真)《グラン・ブーケ(大きな花束)》 1901年 パステル/カンヴァス 三菱一号館美術館蔵
《グラン・ブーケ》の展示は、2012年1月に岐阜県美術館のコレクションを中心に「ルドンとその周辺ー夢見る世紀末」という題での展覧会で日本初公開されてから約6年ぶり。2008年に《グラン・ブーケ》と出会った館長の、ドムシー城の食堂の壁画を再現したいという想いが10年越しに実現した展示会です。そんな館長はじめ、作品を鑑賞したさまざまな人の想いがこの場所に息づいていて、作品の輝きを増しているように思いました。
今回、《グラン・ブーケ》についてご紹介しましたが、このように一つの作品だけでも見どころはいっぱいです。美術展で全ての作品を見ようとすると疲れてしまうという方は、メインビジュアルなど一つの作品を中心に見るのもおすすめですよ。いろいろな楽しみ方ができる『ルドン−秘密の花園』に、ぜひ足を運んでみてください。
(写真)《グラン・ブーケ(大きな花束)》 1901年 パステル/カンヴァス 三菱一号館美術館蔵
photo / 無断転載禁止
三菱一号館美術館『ルドン−秘密の花園』
東京都千代田区丸の内2-6-2
開館時間:10:00~18:00
※祝日・振替休日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで
※入館は閉館時間の30分前まで
休館日:毎週月曜(祝日の場合、5/14とトークフリーデーの2/26、3/26は開館)
入館料:一般1,700円/高校・大学生1,000円/小・中学生500円