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ジャコメッティの知られざる素顔、最後の肖像画への苦悩を描く『ジャコメッティ 最後の肖像』

新国立美術館で『ジャコメッティ展』も行われていた、アルベルト・ジャコメッティの映画がこの冬公開されます。長く縦に引き伸ばされたようなブロンズ像が有名ですが、映画で取り上げられるのは彼の最後の肖像画。アトリエの中の心理バトルを描いた『ジャコメッティ 最後の肖像』、2018年1月5日(金)より公開です。

ジャコメッティの知られざる素顔、最後の肖像画への苦悩を描く『ジャコメッティ 最後の肖像』

たった2日の約束…しかし、完成しないポートレイト

1964年、フランス・パリ。個展が始まったばかりのジャコメッティはアメリカ人の青年ロードに、“肖像画のモデルになってほしい”と声を掛けました。憧れの作家直々の指名に名誉と好奇心を感じたロードは、2日あれば終わるとの言葉を信じてイポリット=マンドロン通り46番地にある巨匠のアトリエへ向かったのです。ところが、愛人カロリーヌの突撃訪問やジャコメッティのスランプもあり、セッションを重ねても肖像画は一向に進みません。作家で美術評論家でもあるロードは、本能と信念のままに生きるジャコメッティのすべてを記しながら、不安に駆られていきます。18日にも及ぶ地獄のセッション。肖像画は無事に完成するのでしょうか―。

“生”を生きた一人の人間、ジャコメッティ

映画「ジャコメッティ 最後の肖像」のシーンより、彫刻をしているジャコメッティ

本作品は“20世紀で最も重要な芸術家”の一人と称されるアルベルト・ジャコメッティが題材です。細く長いモチーフが特徴の彫刻以外にも、実は、油彩・素描・版画などさまざまな作品を残しています。この夏には東京・国立新美術館で大回顧展『ジャコメッティ展』が開催され、約2カ月半で約14万人の観客を動員しました。
ジャコメッティは、古今東西のあらゆる芸術を研究し、そこから学んだものを制作に活かしました。その作風は、装飾などの余計なものをすべて剥ぎ取り、見えるものを見える通りに表現するというもの。“人間の生、そして表裏一体である死”という普遍的なテーマを掲げ、時代や文化を超えて受け入れられています。

映画でジャコメッティに扮するのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのバルボッサ役でお馴染みのジェフリー・ラッシュ。『シャイン』の怪演で第69回米アカデミー賞の主演男優賞にも輝いています。特殊メイクとダボダボの衣装でジャコメッティそのものに変身し、鬼気迫る表情で天才作家を熱演します。

普遍的なテーマの裏側に隠された人格

映画「ジャコメッティ 最後の肖像」のシーンより、ジャコメッティとロード

本作品は、18日間モデルを務めたロードが書き記した体験記がもとになっています。彼の視点を通してジャコメッティの複雑な人格に触れることができるでしょう。ストイックであるのと同時に気まぐれで、ユーモアがあるのと同時に癇癪持ちで、自分の作り出すものに常に懐疑的。天才でも孤高の芸術家でもなく、パリの片隅で絵筆や土塊を手に、愚直なまでに激しい“生”を生きている一人の人間が描かれています。

描くほどに苦悩し、暴走する複雑なジャコメッティ。そして、そんな彼に翻弄されつつも、創作過程と日々の出来事を尊敬の眼差しで観察するロードの奇妙な関係を再現した心理バトルを、是非スクリーンで楽しんでみてください。

photo / ©Final Portrait Commissioning Limited 2016

『ジャコメッティ 最後の肖像』

2018年1月5日(金)TOHO シネマズ シャンテ ほか 全国順次ロードショー
監督:スタンリー・トゥッチ
出演:ジェフリー・ラッシュ、アーミー・ハマー
配給:キノフィルムズ

http://finalportrait.jp/

この記事を書いた人

新 麻記子 大阪出身、横浜在住。作詞の仕事をベースに置きながら、WEBサイト運営、編集、ライターを経て、フリーランスに転身。ライフスタイルを豊かにする"文化の向上"を掲げ、ア...

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