人が生きていく上で大事な“ART”と“EAT”を繋ぐ場所「馬喰町ART+EAT」<後編>
- 公開:2017.9.26
- アート・カルチャー
おしゃれなセレクトショップやカフェが軒を連ねる馬喰町。その発展のさきがけとも言える、ギャラリー+ダイナー“馬喰町ART+EAT”は、訪れた人が思い思いに時間を過ごすことのできる場所。その居心地の良さの秘密を、オーナーの武眞理子さんにうかがってみました。
古いものをまるごと受け入れることによって醸し出される温かみ
馬喰町ART+EATがあるのは、都営新宿線馬喰横山駅(都営新宿線)、馬喰町駅(JR横須賀線・総武快速線)からそれぞれ徒歩2分の『アガタ竹澤ビル』。元は会社や事務所が入った5階建ての雑居ビルです。昭和59年に建設され、すでに築30年以上。決して新しくはありませんが、居心地が良く感じられるのは、置かれている家具の温かみでしょうか。「テーブルや椅子は、長野県・松本在住の家具作家・井藤昌志さんにお願いしました。井藤さんは古材をうまく活かす方で、ここに置かれている家具は郡上八幡のお寺を改修するときに出た廃材や、ウイスキー工場で長年使用されていた棚板などが使われているんですよ」(武さん)。古いから、傷があるからダメというのではなく、それをまるごと受け入れることによって醸し出される温かみが、居心地の良さの理由なのかもしれません。
割れたり、欠けたりした食器は漆継ぎで丁寧に使い続ける
お菓子やコーヒ-、紅茶などをサーブする食器は、武さんの古い友人・小野哲平さんらの手によるものなのだそう。陶器は、いくら丁寧に扱っていても欠けたり、割れたりすることは避けられません。大事なお皿が欠けてしまって武さんが嘆いていたら、漆継ぎ(漆で作った接着剤で割れたものをくっつける方法)で修復することを教えてくれる方がいたのだとか。「私は、昔から新しいものより古いものに引かれるたちで、壁がくすんでいたり、人の手跡が残っているようなところにいると静かな気持ちになって、癒されるんです。ここの壁や什器も毎年スタッフで塗り直したり、食器も修復したりしながら使っています」(武さん)。ちなみに、漆継ぎは不定期でワークショップを開催することもあるのだそうなので、興味のある方は是非HPでチェックを。
アートイベント開催時には関連したフード提供も
馬喰町ART+EATの柱は、その名の通りARTとEAT。ART、つまり「人間にとってほんとうに美しいものとはなにか」を日々問いかけ、EAT、つまり「生きるということの根源にある“食”の健やかな美しさ」も感じてもらいたい。そんな武さんの思いを実現できる理想の場所が、ここなのでしょう。不定期で開催される、さまざまなARTとEATに関するイベントも目玉のひとつ。「馬喰町ART+EATは今年で10年になりますが、その間にここを訪れ、去って行った人々の思いは、その時限りで消えて行くのではなくて、積もり積もって空間の記憶として残っていくんじゃないでしょうか」(武さん)。ここで現代美術のイベントが開催されている時には、テーマに合わせた食を提供する“プチマルシェ”という市も立ちます。私が本日頂いた「ちぢみほうれん草とクルミのマフィン」を作ったkiredoさんも、プチマルシェに参加したことをきっかけに、随時お菓子を提供してもらうことになったのだそうです。
10周年記念イベントは、歴代のスタッフが集結
馬喰町ART+EATで働いている人たちは、アーティストやキュレーター志望など、いずれもアート関係の人ばかりなのだそうです。「うちは、キッチンだけじゃなくて、イベントの作品の搬入搬出や、展示の手伝いなどいろいろな仕事があります。だから、アートが好きと言う気持ちがないと無理なので、自然とそうなってしまいました」(武さん)。そんな馬喰町ART+EATをスタッフとして支えてきた10人のアーティストが、2017年10月、こちらで行われる10周年記念イベント「檸檬は爆発の時を待っている」(2017年10月20日(金)~11月15日(水))に集まります。これは、まさに武さんがロンドンで出会って衝撃を受けたギャラリー+ダイナーを思わせるイベント。アーティストがそばで活動をしながら運営するギャラリーとは、こういうものなのかということがわかりそうです。私も是非行ってみようと思いました。
photo / 馬喰町ART+EAT/reeeko
馬喰町ART+EAT
東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビル202
火・水・木 12:00〜19:00(L.O.18:00)
金・土 12:00~21:00(L.O.20:00)
日・月・祝 休み