雨さえもあたたかく映し出す。「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」
- 公開:2017.6.20
- アート・カルチャー
渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムにて「写真家 ソール・ライター展」が6月25日(日)まで開催されています。実際に見に行ってみたところ、彼が人生をかけてこだわり抜いた、絵画のような色彩豊な写真が詰まっていました。今回は気分の下がる雨の日にぜひ足を運んでいただきたい、“雨”さえも美しく映したソールの世界をご紹介します。
ソールがこだわり続けた色彩写真
今回の展覧会は、1940年代から絵画のように豊な表現力でニューヨークを撮影し続けた、カラー写真の先駆者であるソール・ライターの日本初の回顧展。彼は83歳という年齢になってから再注目された写真家だそう。当初画家を目指していた彼は、大学を退学し家族からはなれ、のちに彼の活動の拠点となっていくニューヨークへと旅立ちます。この決断と意志の強さは、今に残る彼の独創的な美しい写真に現れているのかもしれません。
彼ならではの美しい色彩の世界は、他の写真家や時代の流行に流されることなく、”ソールだけのスタイル”を守り続けるという決意から生まれたものなのかもしれません。
彼ならではの美しい色彩の世界は、他の写真家や時代の流行に流されることなく、”ソールだけのスタイル”を守り続けるという決意から生まれたものなのかもしれません。
心に響く、寂しくもあたかい写真
彼の映し出す写真は今にも動き出しそうな生の写真でありながら、これって本当に写真なの?と疑ってしまうような、色彩の美しい魔法のような写真ばかり。人生をかけこだわり続けた、この不思議さや美しさ、リアルさは見た人を釘付けにします。彼の写真は日々の生活の中に隠れた、小さな悲しみ・喜び・美しさを鮮やかに時にはモノトーンという形で表現し、写真の被写体は私たちの想像力をかきたて、その被写体に”寄り添いたい”という気持ちにさせてくれます。ソールが写真に仕掛けたこの魔法は、私たちに自由な想像力を与え、あたかさや寂しさを伝えます。
photo/ (左)ソール・ライター 《床屋》 1956年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ©Saul Leiter Estate (右)ソール・ライター 《郵便配達》 1952年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ©Saul Leiter Estate
photo/ (左)ソール・ライター 《床屋》 1956年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ©Saul Leiter Estate (右)ソール・ライター 《郵便配達》 1952年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ©Saul Leiter Estate
ソールが映す雨が与える魔法
ソールが残した言葉の中に、「雨粒に包まれた窓の方が、私にとっては有名人の写真より面白い」というものがあります。雨と結露で濡れた窓によって隠された被写体をレンズを通してみたソールは、よりいっそうその被写体についての好奇心をかきたてられ、面白さを感じていたのかもしれません。左の写真の男性は喜んでいるかもしれないし、またはとても悲しんでいるかもしれない。それを考える楽しさを私たちに与えてくれるのです。これから雨の日が多くなり、気分の下がる日々がやってきますが、ソールのように雨によってさえぎられた視界の中でも新たな美しさや楽しさを見出す技を、今回の展示で一度見に行ってみるのはいかがでしょうか。
photo/ (左)ソール・ライター 《雪》 1960年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ©Saul Leiter Estate (右)ソール・ライター 《赤信号》 1952年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ©Saul Leiter Estate
photo/ (左)ソール・ライター 《雪》 1960年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ©Saul Leiter Estate (右)ソール・ライター 《赤信号》 1952年 発色現像方式印画 ソール・ライター財団蔵 ©Saul Leiter Estate
photo / ソール・ライター財団蔵 ©Saul Leiter Estate
「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」
会期:2017年4月29日(土)~6月25日(日)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
入場料:一般1,400円、大高生1,000円、小中生700円 / 20名以上の団体は要予約 / 学生は学生証持参 / 障害者手帳による割引あり