猫が教えてくれること「日々是葛藤」/木工作家・サノアイさんの場合vol.2
- 公開:2018.3.25
- ライフスタイル
猫の猫らしい行動に、自分の生き方を重ねてハッとする瞬間があります。木工作家のサノアイさんもその一人。二匹の猫と暮らすサノさんが、日当たりのいいベランダに通ってくる野良猫たちに思う「日々是葛藤」とは一体?
日当たりのいいベランダで
木工作家のサノアイさんのお宅には、大らかなキジ猫のペコ(オス・15歳)と、寝ても覚めてもペコが大好きなジトミ(メス・推定8歳)という二匹の猫がいます。ジトミは元・野良猫です。
どうやらペコに一目惚れしたらしいジトミは、窓越しにペコの姿をひと目見ようと、サノさんのお宅のベランダに何ヵ月も通い続けました。そして、ある日、大ケガをしてやってきたところをサノさんに保護され、そのまま飼われることに。
窓の外にいたジトミが窓の内側で眠るようになった今も、日当たりのいいベランダは野良猫たちのたまり場です。取材をした日もどこからやって来たのか3匹の野良猫が、気持ちよさそうにうつらうつらしていました。いつものことだからなのかペコもジトミも、ベランダの野良猫たちを気にする様子はありません。
「猫が好きだから『猫のいいように』してあげたい。でも、その『猫のいいように』がわからないから、ベランダにやって来る猫たちを保護する決断がなかなかできなくて…。人間が決断して行動を起こさないと、猫たちの生活は変わりません。私に委ねられていることがわかっていても、うちのベランダや隣の家の屋根でくつろいでいたり、ご近所の塀を悠々と歩いている野良猫の姿を見ると、何が『猫のいいように』なのか、わからなくなってしまうんです」
どうやらペコに一目惚れしたらしいジトミは、窓越しにペコの姿をひと目見ようと、サノさんのお宅のベランダに何ヵ月も通い続けました。そして、ある日、大ケガをしてやってきたところをサノさんに保護され、そのまま飼われることに。
窓の外にいたジトミが窓の内側で眠るようになった今も、日当たりのいいベランダは野良猫たちのたまり場です。取材をした日もどこからやって来たのか3匹の野良猫が、気持ちよさそうにうつらうつらしていました。いつものことだからなのかペコもジトミも、ベランダの野良猫たちを気にする様子はありません。
「猫が好きだから『猫のいいように』してあげたい。でも、その『猫のいいように』がわからないから、ベランダにやって来る猫たちを保護する決断がなかなかできなくて…。人間が決断して行動を起こさないと、猫たちの生活は変わりません。私に委ねられていることがわかっていても、うちのベランダや隣の家の屋根でくつろいでいたり、ご近所の塀を悠々と歩いている野良猫の姿を見ると、何が『猫のいいように』なのか、わからなくなってしまうんです」
そっと開けた窓の隙間から…
最優先すべきは、今飼っているペコとジトミのこと。次にともに暮らす家人の意見、とサノさん。「家人と私は猫への愛情の掛け方が違います。家人は家猫には家猫の、野良猫には野良猫のしあわせがあると言います。でも…窓を開けていたら、たまたま猫の方から入って来て、そのまま居ついてしまったということなら、本来猫好きの家人も『ノー』とは言えないはず…なんて(笑)。
ペコとジトミが別室で眠っている間に、ベランダに面する窓をそっと開けて、運命というやつに委ねてみようと試したことは一度や二度ではありません」
「二年前、ジトミの次に来たから、ジトヨと名付けた野良猫が、開けていた窓から入って来て、そのまま居ついたことがありました。人懐こい猫でした。病気を持っているかもしれないからとペコとジトミとは隔離して、しばらく家人にも内緒で飼っていたんですけど、結局2日でバレてしまいました。うちで飼うという事後報告&事後承諾をもらってから、ジトヨを動物病院に連れて行くと猫エイズでした」
命の終わりを引き受ける覚悟は、窓から入って来たその瞬間にできていたとサノさん。しかし、ジトヨはサノさんの想像よりもずっと早く、その1ヵ月後に亡くなってしまいます。
ペコとジトミが別室で眠っている間に、ベランダに面する窓をそっと開けて、運命というやつに委ねてみようと試したことは一度や二度ではありません」
「二年前、ジトミの次に来たから、ジトヨと名付けた野良猫が、開けていた窓から入って来て、そのまま居ついたことがありました。人懐こい猫でした。病気を持っているかもしれないからとペコとジトミとは隔離して、しばらく家人にも内緒で飼っていたんですけど、結局2日でバレてしまいました。うちで飼うという事後報告&事後承諾をもらってから、ジトヨを動物病院に連れて行くと猫エイズでした」
命の終わりを引き受ける覚悟は、窓から入って来たその瞬間にできていたとサノさん。しかし、ジトヨはサノさんの想像よりもずっと早く、その1ヵ月後に亡くなってしまいます。
日々是葛藤
「ジトヨは私の目の前で亡くなりました。動物を看取ったのは初めての経験です。保護とほぼ同時に病気がわかり、献血などできることを尽しても救えなかった命。ジトヨのことで少し臆病になっているというのもあります。ペコとジトミのこと。家人の考え方。猫のためといいつつも私のエゴなのかもしれない…そんないろいろが、頭の中をぐるぐると巡り続けています。
いつもベランダに来る子が数日姿を現さないと『やっぱりあの時、保護しておくべきだった…』と後悔。でも翌日、何事もなかったように現れると、ホッとするとともに決断も鈍ってしまう」
いつもベランダに来る子が数日姿を現さないと『やっぱりあの時、保護しておくべきだった…』と後悔。でも翌日、何事もなかったように現れると、ホッとするとともに決断も鈍ってしまう」
「葛藤」という言葉は、葛(カズラ)や藤(フジ)などのつる科の植物が絡まり合う様子が語源だそう。こうしたいという自身の欲求に、その時々の事情だったり、関わりがある人の意見、自分の負える責任、また発露となった欲求を今一度省みる自身の目。それらが絡み合って起こる葛藤。
しかし、つるはいくら絡み合っても、その成長を止めません。どこへ伸びていくかはわかりませんが、間違いなく前進しているのです。葛藤って、実はとても前向きなことなのかもしれません。
さて、次回は、サノさんが猫をはじめ生きものを飼う20人に声を掛けて編んだ本『ちいさないきものと日々のこと』を通して伝えたかった想いに迫ります。お楽しみに。
しかし、つるはいくら絡み合っても、その成長を止めません。どこへ伸びていくかはわかりませんが、間違いなく前進しているのです。葛藤って、実はとても前向きなことなのかもしれません。
さて、次回は、サノさんが猫をはじめ生きものを飼う20人に声を掛けて編んだ本『ちいさないきものと日々のこと』を通して伝えたかった想いに迫ります。お楽しみに。
筒井聖子
ショップ&ギャラリー もりのこと