猫が教えてくれること「優しい気持ち」／ミュージシャン笹倉さんちのトトちゃんの場合vol.2

生後すぐに親とはぐれてしまったと思われる小さな子猫・トトちゃん（メス・現在は生後4ヵ月）を家に迎え入れる直前まで、シンガーソングライターの笹倉慎介さんを悩ませたのは、トトが“猫である”ということでした。

「仕事柄、家を空けることが多く、『家につく』といわれている猫を飼うのはもってのほかで…。命を預かる責任を果たすためにも、できるだけ一緒にいたいけど、すぐに生活を変えることはできない。
そこで猫を飼っている友人や動物関係の仕事をしている知人に、そのことを相談しました。すると、多くの人が『子猫のうちだったら、飼い主との外出も数あるうちの初体験の一つとして受け入れてくれるかもしれないよ』と言ってくれて」

「幸いなことに、肝の据わったトトの性格も手伝って、ドライブと散歩はすんなりとトトの日常になりました。車が走り出すや否や後部座席に積んだトイレに用を済ませると、その隣に置いたケージの中ですやすや眠るトト。目的地にたどり着くまでの間、トイレの匂いに耐えながら運転することも（笑）。でも、行動をともにできるのはとても有難いことです」

出勤も散歩も、たまにある遠出も、トトちゃんと笹倉さんはいつも一緒。走る車の窓から外を眺める仕草も、ハーネスをつけた時に仁王立ちになる前足も、甘え上手でフレンドリーな性格まで、トトちゃんは猫でいてまるで犬のようです。

「トトと一緒にいると、道ですれ違う人やカフェに来るお客様など初対面の人が『猫、可愛いですね』と話しかけてくれます。僕の方も『ありがとうございます。そうですか？』なんて受け答えをして、そこから二言、三言、会話が続く。初対面の人とですよ！？トトが来る前はまるでなかったことです。
子はかすがいと言いますけど猫をかすがいにして、人とのコミュニケーションがごく自然に、円滑に広がっていくようになりました」

「ドライブスルーとか全然スルーできないんです（笑）。窓越しに顔をのぞかせるトトを見つけて、中の従業員さんたちがわらわら出てきちゃう。困ったなとは思うけど、決して嫌じゃない。親バカとはこのことかと噛みしめているところです」

トトちゃんが家にやってきて数週間経った頃、笹倉さんの腰痛が悪化します。なんと原因はトトちゃんだったそうで…。

「一緒に暮らし始めてから1週間もすると、トトが自ら僕のベッドで眠るようになりました。小さなトトをつぶしてしまったら大変だと思って、寝返りを打たないようにしていたら、ついに腰が悲鳴を上げて…。
朝、目覚めるとたいてい顔の横にトトの顔があります。ある日なんか、僕の着ているＴシャツの中に潜り込んで、首のところから顔を出して眠っていました（笑）。
トトが来てからというもの、自分の中にこんなにも優しい気持ちがあるんだなって。教えられたというか再発見したというか。元々優しい男ではあると思うんですけど、最近は優しい気持ちばかりがクローズアップされて…うーん、つまりいいことばっかりです」

猫の動画を見ると、不安や怒りが和らぎ前向きな感情が湧いてくるという研究結果もあるくらい。やるべきことや時間に追われる毎日に猫を。本記事も、読む方のポジティブスイッチが押せるようにと願ってやみません。さて、次回のトトちゃんの教えは「真っ直ぐに伝える」です。お楽しみに。