鎌倉で採れた野菜を最大限に味い尽くせる店「なると屋+典座」

鎌倉野菜の即売所「鎌倉市農協連即売所」は、地域の料理人たちが出勤前に寄って野菜を仕入れてから店に行く事が多いのだそうです。その中のひとつ、地元の人に長く愛されている“なると屋+典座”を訪ね、季節の味を堪能しました。
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いろいろな表現を可能にする野菜の底力。

JR鎌倉駅を出て左手、小町通りを入ってすぐのところに“なると屋+典座”があります。“鎌倉で採れた野菜を鎌倉で食べていただく”をコンセプトに2002年にこの地に開店。以来約14年。地元の人はもちろんのこと休日には観光客も多く訪れる人気店です。

「親戚に和菓子職人や漁師がいたので、食を仕事にしたいと自然に思うようになっていました」と語るのは、店主のイチカワヨウスケさん。調理師学校を卒業し、京都や横浜のお店で修業をするうちに精進料理に出会い、「野菜でこれだけのことを表現できるのはすごい」と感動。生まれた土地に近い鎌倉で開いたお店“なると屋+典座”では、地元で取れた野菜を中心とした料理を提供しています。

同じ野菜でも季節によって味の変化がある!?

ランチは、月替わりの「○月のごはん」(定食)と「葛とじうどん」、「葛とじうどんと惣菜三品」の3種類。夜も、ほぼラインナップは変わらないとのことです。「野菜は、同じものでも季節によって成長する速度が違うので、味が変わってきます。たとえばトマトでも寒い時期は味が締まっていて、暖かくなるにつれ水分が多くなりますから、それに合わせた調理の方法を考えるんです」とイチカワさん。

伺った日の3月のごはんのメニューのひとつ、トマトの赤だしは、普段あまり口にすることがないですが、口の中で確かにトマトの酸味とお味噌の甘みがうまい具合に調和していました。もうひとつのメニュー、葛とじうどんは、うどんに絡むだしのきいた優しい葛の味がするすると体の中に入っていく感じ。特に寒い季節にうれしい1品。いずれも野菜メインの料理とは思えない満足感が得られました。

料理の素材に手間はかけても、かけ過ぎずに。

和食で野菜料理といえば、下ごしらえにずいぶん時間がかかっているのではないかと思いますが、なると屋+典座では、もちろん手間はかけるけれども、あくまでも自然の味わいを活かすため「かけすぎない」ことも大事にしているそう。「季節、気候に合わせて、その時ならではの香りを楽しんでほしい」とのこと。

開店して14年。オープン当初からのお客様が、今では子供、お孫さんなどとともに来店することも少なくないのだとか。今後も変わることなく、こういう店があり続けることが大事なのだと思いますというイチカワさんの言葉に、鎌倉にきちんと根ざしたこのお店の存在感を感じました。季節毎に、いえ、できれば毎月、旬の野菜を味わいに行きたいと思います。

photo / 庄司直人

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