深まる秋に「和菓子 薫風」で日本酒とのマリアージュを。伝統と新しさの共存が新鮮
最近の下町ブームの中心地、東京・千駄木。駅からほど近いところに店を構える「和菓子薫風」は、使う素材の珍しさもさることながら、あるものとのマリアージュを提案していることで話題に。それを味わいにうかがってみました。
- 2016.9.29
- グルメ・食
和菓子店であり、カフェであり、教室も!?
地下鉄千駄木駅から徒歩3分ほど。「和菓子薫風」の店頭には、日本酒と縁の深いことを表す「杉玉」が吊り下げられています。店内には、大きなテーブルがひとつ。脇の棚に焼き菓子が数種類並べられているだけで、ぱっと見、ここが和菓子店には見えないかもしれません。でも、ここが「和菓子カフェ」であり、「和菓子店」であり、週末などには和菓子教室やイベントなどを開催する場所でもあります。そして、特筆すべきは、ここが近頃ブームの日本酒と和菓子とのマリアージュを提案していること。「え? 日本酒と和菓子? 合うの?」と疑問符だらけの方もいるでしょう。はい、私もそうでした。でも、それが合うんです! なぜ合うのか、どうして日本酒との組み合わせをオススメしているのか、店主のつくださんにうかがいました。
四季のある和菓子と日本酒のマリアージュを
製薬メーカーで、原料になる物質の分析の仕事をしていたつくださんは、思うところあって、8年ほど勤めた会社を辞め、飲食の世界に飛び込みます。イタリアンやフレンチなどさまざまなジャンルのお店を渡り歩くうち、「10代半ばからこの道でやってきている人たちに比べれば、だいぶ遅れている自分には武器が必要だ。和菓子がそれなのかもしれない…」と思ったそうです。その頃働いていた割烹料理店では、デザートにきちんと小豆で餡を炊いて作った和菓子を出していました。「お客様が、食事の最後のデザートを出す頃になっても、日本酒と共に和菓子を楽しんでいるのを見ていたので、お酒とのマリアージュは普通のことでした」。和菓子には四季があり、日本酒も新酒に始まって、夏酒、ひやおろし…などと季節ごとにラインナップが変わります。そして、冷酒から燗酒まで、温度帯で味わいが変わったり、熟成の楽しみがあることも、つくださんが日本酒に惹かれた理由なのだとか。和菓子と日本酒の組み合わせは確かに必然と言えるのかも知れません。
古くて新しい和菓子の可能性
取材当日、出していただいたのは、薫風のスペシャリテ「白い羊羹」。白あんにカルダモンやコリアンダーシードなどのスパイス。それにワイルドベリー、クランベリーなどのドライフルーツを入れて蒸し上げたもの。「素材を見ると、まるで洋菓子のように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、技法としては伝統的な和菓子です。スパイスも京都では「八つ橋」のように、古くからシナモンを和菓子によく使っていたことを考えれば、珍しいことではないんですよ」。一口食べると、確かにスパイスの香りに白あんのなつかしい甘さが口に広がって何とも言えない味わいです。そこに日本酒が加わると、口の中に残った余韻が、また違った味のハーモニーを醸し出して、和菓子と日本酒、確かにいけます!
農家さんや醤油蔵とのコラボで生まれる新しい和菓子
薫風の焼き菓子の代表作「岩城島のレモンコンフィ入りどら焼き」は、農家さんと知り合いになったことから生み出されました。「レモンは、夏に需要のある果汁だけ搾って冷凍保存し、あとの皮などは全て捨てていたんだそうです。私はフレンチやイタリアンでレモンピールを日常的に使っていたので、なんて勿体ない!と思って、どら焼きの餡に混ぜることにしました」(つくださん)。そんな農家さんとの付き合いが口コミで広がって、さまざまな農作物が「和菓子に材料にどう?」と持ち込まれるようになりました。最近では、ある醤油蔵から届いた醤油を絞ったあとの「かす」とジャガイモを合わせて、伝統的な和菓子「松風」が作られたのだとか。
カフェのテーブルから広がるお客様の輪
薫風のカフェには、メニューはありません。その都度、つくださんが口頭で説明するのだそう。すると、大きなテーブルで隣り合わせになったお客様同士、お互いの食べているものの感想を言い合ったり、日本酒の産地から話題が広がって、あっという間にお友達状態になることもあるそうです。そのまま盛り上がって、飲みに行ったりするケースも。週末の和菓子教室のほか、日本酒の蔵元さんを招待したイベントや、秋にはわらび粉の生産地を訪れるツアーなども企画しているのだとか。「本物のわらび粉のおいしさを知ると、まがいものは食べられなくなります」とのこと。和菓子薫風は、ただの和菓子店だと思ったら、大間違いのようでした!!
photo / reeeko
和菓子薫風
東京都文京区千駄木2-24-5 1F
営業時間 13:30~19:00(Close)
月・火曜定休 土日不定休
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