「ペスカタリアン」とは?肉を食べない人が感じるメリット・デメリット

“サステナブルな行動”のバトンをつなげていく、リレー連載企画「#TSUNAGU100」。お肉を食べない人のことを「ペスカタリアン」と言い、その食生活はサステナビリティにつながると考えられています。RAW&VEGANスイーツの販売を行い、ご自身もペスカタリアンであるHALUさんから、普段の食事法や、感じているメリット・デメリットなどを教えていただきました。
 HALU

ペスカタリアンとは?ベジタリアンとの違いは?

ペスカタリアン(ぺスクタリアン)とは、たんぱく源として、お肉を食べない食事スタイルです。
ベジタリアンと違い、ペスカタリアン(ぺスクタリアン)は魚介を食べることが出来ます。
ちなみに、ヴィーガンは動物性の食材も素材も(食に限らず衣食住も)一切食べない完全菜食主義者のこと。ベジタリアンは肉と魚は食べないですが、乳製品や卵はOKです。

ペスカタリアンの名前の由来

ペスカタリアン(ぺスクタリアン)という名前は、スペイン語で「魚」を指す「Pesca(ペスカ)」に由来します。魚介をたんぱく源とすることで、健康上のメリットも期待されています。

日本人にとってペスカタリアンはハードルが低い

日本人の食生活は出汁に使われるかつおやあご、お刺身、焼き魚や煮魚など魚を頻繁に食べる食文化があるので、ベジタリアンやヴィーガンになるのはハードルが高いという声もよく聞きます。そして私自身も、自分の体調やバランスの良い献立を作るのに、魚や卵も一切なくすことには少しハードルを感じています。しかし、ペスカタリアンであれば、お魚も卵も乳製品もOKなので、日本に暮らす私たちにとって、かなりハードルは低くなり、食べた時の満足度も栄養バランスも良いので、比較的無理なく続けられる食事方法です。

ペスカタリアンの私の食生活

以下は、実際に私が食べているものと避けているものです。

︎食べているもの:卵、魚類(卵は必ず平飼いのもの、魚類もなるべく地域・季節のものやMSCやASC認証ラベルのついているもの)、穀類、豆類、野菜、フルーツなど

避けているもの:乳製品、鶏肉、豚肉、牛肉など家畜の肉類全般及び加工品、小麦粉


厳密には、ペスカタリアンは乳製品OKですが、私は健康的観点から乳製品も控えるようにしています。なぜなら乳製品に含まれる、カゼインを頻繁に摂取すると腸内に未消化物が多くなって、腸の炎症を招くことや、乳糖不耐症が日本人には多く見られることも控えたほうがよいとも言われています。

ペスカタリアンの食生活に至る理由や思想は人それぞれだと思いますが、私の場合「家畜による環境への影響」(温室効果ガスの排出、大量の水が必要など)を知ったこともあり、この食事スタイルに行きつきました。

肉を食べない食習慣「ペスカタリアン」にいたった理由

肉より魚派だった幼少期

もともと子供の時から、私はお肉よりも魚派でした。といっても、実家の食事に関しては、私以外はみんなお肉派でジャンキー。小さい頃から家庭で出る食事はお肉を使う料理が多く、私は子供ながら、よくお肉料理の脂身を残すような子でした。一番の理由はお肉の脂身の味や油分が苦手だったから。加えて野菜好きで、出される食事の中でも野菜の料理は大好物でした。

今思うと当時から自然と好むものがベジタリアン寄りでしたが、甘いものは大好き。一般的なスイーツには乳製品や卵はたっぷりと使用されるので、それらの動物性食材は積極的に摂取していました。

ロースイーツを知り、ナチュラルな食事を意識するように

本格的に肉や動物性食材を減らすようになったのは大学生の頃。
現在仕事にしているロースイーツという分野に出会った時に、畜産の抱える環境への課題を深く知ったことがきっかけです。当時はどちらかというと、健康・美容の観点からでしたが、徐々に環境問題や動物愛護の観点から、ナチュラルな食材を選ぶように意識するようになりました。

たとえば、牧草を食べてのびのびと育った牧草牛の存在や、鶏が狭いゲージの中で育っていない、ゲージフリーの卵(平飼い卵)があること、魚だったら養殖より天然を選ぶなど(これについては海洋汚染の問題で今は賛否両論があります。)、いろいろな選択肢があることを学びました。


しかし、そういった食材を探すのには一苦労でした。(最近は少しずつ手に入るスーパーやネットショップが増えましたね!)上記に挙げた動物性食品以外の、そういった生鮮食品や加工品でもオーガニック・無農薬の食材を日本で手に入れる難しさを知りました。

自分に無理がない食生活がペスカタリアンだった

そして、本格的なペスカタリアンになったのは、2019年ごろ。お仕事でヴィーガンカフェの立ち上げを手伝うことになり、サステナブルな食への関心が一層深まりました。

そこで、一時期は外食でもおうちのごはんでも動物性食材(肉・魚ともに)を避けていましたが、しばらく続くと、体調が優れないのと、大豆の摂取過多や動物性食材を取らないことにより、油っこいもの(とくに揚げ物)の摂取の増加が気になり、もう一度食事を見直すことにしました。

そこで、一番自分の体調や献立作りに無理がないと感じたのが、ペスカタリアンの食事スタイルでした。

肉も魚も食べないヴィーガン食を実践した過去、反動で油ものが食べたくなった

こちらはとある日のおうちランチ。
ターメリックライスと豆腐チャンプルー、島らっきょうの塩麹漬けときんぴらゴボウに味噌汁です。ボリューミーに見えますが、肉は使わず、卵や豆腐を使っています。

ペスカタリアンの食事は言葉のイメージほど難しくありません。そもそも日本人は肉を頻繁に食べる文化のなかった国。仏教が盛んで、精進料理も昔からあったくらいですから、メインに大豆や魚をチョイスし、たまに贅沢して卵料理、献立は一汁二菜または三菜を意識すれば、だいたい栄養価的にもバランスよく仕上がります。
そして和食は、海外に行けば行くほど、素晴らしい料理だと気付かされます。
海外旅行に行く時は、現地のヴィーガンレストランのリサーチもかねて行っているのですが、ヴィーガンバーガー屋などの揚げ物や油を使用したお店か、サラダメインのお店が多く、お肉がない分、「うまみ」を「油」で補うことが多いのです。
実際私も、動物性食材を全くとらなかった一時期、とにかく油っこいものが食べたくて仕方ありませんでした。それは、やはり、肉の油が出すようなパンチ力のあるうまみを、植物性だけではなかなか表現することができないからです。揚げ物は、健康・美容の観点からも過剰摂取しないほうが良い料理だと思います。しかし、日本の和食の素晴らしいところは、日本特有の出汁や発酵食品に「うまみ」という味覚成分があるところ。このうまみが植物性食材だけの食事の満足度を、ぐんと引き上げてくれます!

ペスカタリアンでも満足できる味の工夫は、和食ならではの出汁と発酵調味料

そんな「出汁」の元となる食材は日本にたくさんあり、動物性であるかつおやあごや煮干し以外にも、植物性だとしいたけや昆布、干し大根からとることができます。これらで、十分においしいうまみ(グルタミン酸など)が出ますし、生醤油や味噌、塩麹などの麹を使った発酵食品も同様に、うまみの元となるアミノ酸が豊富に含まれています。

海外のヴィーガンレシピではよくスパイスが多用されますが、スパイスも栄養価があり満足感はあげてくれるものの、スパイスは油と相性がよく、使用する時には油が使われるレシピが多い印象です。やはり、日本の伝統的な味噌や醤油、出汁ほど、油に頼らず満足感を高められる調味料はないのかもしれません。

肉を食べない食生活ペスカタリアンのメリット・デメリット

ここまで、ペスカタリアンの食事スタイルの良いところばかりをあげてきましたが、実際のライフスタイルに落とし込んだ時に感じたリアルなメリットとデメリットについても、お話できたらと思います。

といっても、普段送っているライフスタイルによって、感じるメリットとデメリットが変わってくると思うので、第一に、まずは私のライフスタイルの事前情報を以下にまとめてみました。

1.彼(未婚)と同棲生活数年目。彼は肉も魚も食べる日本人。付き合う前はもともと背脂系ラーメンなど油こってり系もよく食べていた。
2.家の近くには海があり自転車で行ける距離にオーガニックスーパーや農家の直売所がある。
3.私はフリーランス、彼は会社員(リモートワーク)でお互い家にいる時間が長い。
4.彼は料理をする&魚をさばける&和食が好き。
5.1週間の食事の9割は自炊している。

ざっくりと、こんなライフスタイルを送る私が感じる、ペスカタリアンのメリットとデメリットは下記です。

メリット

・一汁一菜の和食ベースの食事スタイルになり、栄養バランスが自然と整う。
・胃に負担がかかりにくい。
・心身ともに無理がなくヘルシー生活。
・旬を意識した献立になりやすい。
・魚は肉と違い、釣りで獲れる。釣りで獲った魚を食べることで命=食のありがたさを間近で感じることができる
・男性も無理なく続けられる。

デメリット

・家族やパートナーが肉食&魚嫌いだと実践するのが難しい。
・ソイミートなど大豆製品を取りすぎてしまう可能性がある。
・フレンチなどの外食に行きづらくなる。
・時間がない忙しい人だと、魚料理が手間に感じてしまう場合がある。
魚料理は肉料理よりも、骨抜きをする工程に手間に感じる方もいるかと思います。たんぱく源は魚の代わりに、大豆やレンズ豆などを使った調理も低カロリー、高たんぱく質なので積極的に食べています。かつ、お値打ちなので、豆料理を取り入れてみるのもおすすめです。

(ただし、大豆はとりすぎに要注意!大豆はなるべく発酵されているものを選んだり、他の豆類、例えばひよこ豆やレンズ豆などとバランスよく使用するのがおすすめです。)


また、一番みなさんが気になるのは、友達や家族との外食をどうするかということではないでしょうか?

ずっと肉を食べないの?ペスカタリアンを続けるためのマイルール

普段肉を食べない私でも、旅行、外食ではとことん友人や家族と「食」を楽しむ!

実際みなさんがこういった食生活を送る上で一番気になるであろう、家族や友人との食事について。人によってさまざまで、あくまでも私個人の場合ですが、食に制限のない人と食事をともにする時は、自由に好きなものを食べるようにしています。(と、いってもさすがに焼肉や正統派なフレンチにいくことはなくなりました。)


というのも、外食で自炊をするときのような制限をかけると、お店も食べられる料理も制限されてしまい(大体、同じ店になる)、“その一時を楽しむ”ということよりも、食の制限によって、周りに気を遣わせてしまったり、自分自身も周りに気を遣わせないようにするのに意識して、楽しめなくなってしまうからです。また旅行も同じで、旅先で制限をもつと、その土地の郷土料理や一期一会を楽しむことが、かなり難しくなります。


ですが、大抵、外食の際は、ヴィーガン食でなくても、なるべく地産地消やオーガニックの食材を楽しめるお店を自ら食事相手に提案したりすることによって、自分にとっても、一緒に食事にいくみんなにとっても、満足感の高いお店に行けるようにすることも意識しています。


また、私の場合はパートナーと同棲しているため、自分だけのために作る食事ではありません。前述したように、自分一人のためだったら、野菜・豆類が中心なのですが、二人で分担して料理を作っているため、菜食の食事については私が担当、魚料理は彼が担当することで、無理なく楽しく続けることができています。

自炊が1週間の食事の9割を占めますが、さらにその内訳としては6割が豆類中心の菜食の食事、3割ほどが魚料理や卵料理などの動物性たんぱく質を含む食事で、自炊以外はチートデイとして気にせず、おうちの近くの料理屋を開拓したり、友達との食事会を楽しんでいます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
こういった食生活を心掛ける上で大切なことはまずは完璧を目指さず、自分の心身ともに納得できる着地点を見つけること。完璧主義者の人(私もそうでした)にとっては、見誤ると自分の身体と心(気にしすぎるとストレスになる)を害することにもつながります。


大切なのは、楽しみながら、コツコツと続けることです。
実際お肉を使わなくてもソイミートなど、お肉のように仕上げるレシピはあるかと思います。私の場合、彼も自然とそういう食事に慣れてくることで、「昔よりもお肉やラーメン、揚げ物などのこってりとした肉料理を食べたいと感じることも減った」と言っています。


みなさんも少しでもこの記事をきっかけに、自炊する頻度を増やしたり、普段の食をちょっとヘルシー寄りに変えてみることで、自分の身体にも地球にも優しい暮らし楽しむことができたら嬉しく思います。
わたしから身近な人、そして地球へ。
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HALUさんがバトンをつなぐ方は、シンプルな暮らしぶりが人気の__minimal.igさんです!

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HALU

HALU(@haluchn)

plant based foodクリエイター/ビューティーライフデザイナー。地球と人と動物に優しいスイーツや暦に合わせた食のレシピ動画の発信や、日本のエッセンスを取り入れたRAW&VEGANブランド“mari”のスイーツ販売を軸に、食や美の観点からサステナブルなライフスタイルをSNSで発信。「人生を豊かにする食卓」を育むエシカルコミュニティ“eticoya”を主宰。地元、葉山で無農薬の畑もスタートする。

https://www.instagram.com/haluchn/

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