いつか失われる儚い姿が胸を打つ。元搭乗員が選ぶ「世界の消えゆく美しい都市」5選
新型コロナウイルスが未だ収束せず、以前のように安心して海外旅行に行けるようになるのは、いつになるのでしょうか。そんな今は、遠い国の美しい風景写真を眺めて、妄想旅行を楽しんでみてはいかがですか。前回の「世界で最も美しい街」編に引き続き、今回は元添乗員が選ぶ 「消えゆく美しい都市」を5つご紹介します。
- 2021.5.7
- 旅行・お出かけ
いつの日か消えゆくその姿は儚く、そして美しい
世界には、戦争・環境問題・政治的理由などで、歴史ある景観や本来の姿が失われつつある場所がいくつもあります。あやうく儚いその姿は、時にドキリとするほど美しく、心揺さぶる感動を私たちに与えてくれます。そんな、世界の消えゆく美しい都市を5つ厳選。一度は目に焼き付けておきたい場所ばかりですよ。
セピア色の摩天楼、イエメン「サナア」
砂漠の国としては雨量も多く、かつては「幸福のアラビア」とうたわれていた中東の国イエメン。そのイエメンの首都サナアには、一度見たら忘れられないセピア色の風景があります。粘土と煉瓦のみでできた高層建築群は、「世界最古の摩天楼」とも言われ、古いものは1000年以上も前に建てられたのだとか。
ピンクがかったアイボリーに統一されたモノトーンの街並みに一歩足を踏み入れれば、まるでセピア写真の中に迷い込んだかのような感覚に。白い漆喰で施された砂糖菓子のような装飾の精巧さには、うっとりするほど。
しかし、この光景は、残念ながら現在は空爆や洪水の影響で倒壊の危機に晒されています。消えゆく美しい摩天楼。いつか本物の幻となる前に、訪れておきたい場所です。
しかし、この光景は、残念ながら現在は空爆や洪水の影響で倒壊の危機に晒されています。消えゆく美しい摩天楼。いつか本物の幻となる前に、訪れておきたい場所です。
天空に浮かぶ村、イタリア「チヴィタ・ディ・バーニョレジョ」
イタリアの中部、オリーブやブドウの畑が広がるのどかな丘陵地帯に、まるで空に浮かんでいるかのような姿で現れるチヴィタ・ディ・バーニョレジョ。とても小さなこの村には、なんと2000年を超える歴史があるのだそう。
しかし、多孔質で脆い凝灰岩でできた台地は、地震や風雨によって浸食され続け、いつしか天空に取り残されたかのように。村へと渡る唯一の手段は、長さ300メートルの橋一本のみ。
しかし、多孔質で脆い凝灰岩でできた台地は、地震や風雨によって浸食され続け、いつしか天空に取り残されたかのように。村へと渡る唯一の手段は、長さ300メートルの橋一本のみ。
他では見られないその独特の姿が注目を浴び、近年、観光客が増えた一方で、村の土台となる凝灰岩は刻一刻と浸食されつつあり「死にゆく街」とも言われています。
その脆く美しい姿はいつしか自然消滅し、気の遠くなるような長い歴史も幕を閉じてしまうのでしょうか。
その脆く美しい姿はいつしか自然消滅し、気の遠くなるような長い歴史も幕を閉じてしまうのでしょうか。
時が止まったかのような街、キューバ「オールドハバナ」
スペインに続きアメリカからの独立をも革命で勝ち取り、独立独歩の歴史を歩んできたキューバ。永らく鎖国状態にあったため、変わりゆく時代の変化から取り残されてきました。
特にハバナの旧市街(オールド・ハバナ)は、首都であるにも関わらず、驚くほどに朽ち果てた街並み。
特にハバナの旧市街(オールド・ハバナ)は、首都であるにも関わらず、驚くほどに朽ち果てた街並み。
塗装が剥げ落ちた壁、錆びた窓枠や手すり…古びた廃墟のような建物の間を年代物のクラシックカーが走る様子を目にすると、あたかも過去の世界へとタイムスリップしてきてしまったかのよう。
2015年アメリカとの国交回復後、徐々に押し寄せる文明の波は、この街を新しく変えるのか、それとも保存し守り抜いていくのか、全ては人の手にかかっています。
2015年アメリカとの国交回復後、徐々に押し寄せる文明の波は、この街を新しく変えるのか、それとも保存し守り抜いていくのか、全ては人の手にかかっています。
真っ赤な絶景、中国四川省「ラルンガルゴンパ」
標高4000メートルの高山に一面真っ赤な家々が張り付いたこの都市は、中国四川省にあるチベット仏教の聖地、ラルンガルゴンパです。
この赤い建物は、全てチベット仏教の僧侶の住居や寺院など。僧侶が身に着ける袈裟も赤いため、遠くから眺めると異様な程に赤一色の絶景が広がります。
この赤い建物は、全てチベット仏教の僧侶の住居や寺院など。僧侶が身に着ける袈裟も赤いため、遠くから眺めると異様な程に赤一色の絶景が広がります。
しかし現在では、中国政府当局により外国人の立ち入りが禁じられ、再教育による僧侶たちの思想替えや、建物を取り壊し新しい街へ変貌させる計画が進んでいるとのこと。
いつかまた訪れることができるようになった時、紅の宗教都市はまったく違った姿に変わっているかもしれません。
いつかまた訪れることができるようになった時、紅の宗教都市はまったく違った姿に変わっているかもしれません。
美しすぎる水の都、イタリア「ヴェネツィア」
世界で最も美しい水上都市として知られるヴェネツィア。街の中を張り巡らされた運河、細い路地、車が全く存在しない光景を目にしたら、誰しも感動せずにはいられないでしょう。
1500年もの歴史を持つこの水上都市は、近年環境汚染や温暖化などの影響で、このままでは街まるごと水没してしまうと言われています。
1500年もの歴史を持つこの水上都市は、近年環境汚染や温暖化などの影響で、このままでは街まるごと水没してしまうと言われています。
そこで対策として打ち出されたのが「モーゼ計画」。巨大な防水壁によって街を水害から守ろうという壮大な計画ですが、汚職事件や経済危機の影響で17年もの歳月を費やし、2020年10月にようやく始動したそう。一応の完成はみたものの、完全なる始動には更に数年かかると言われています。果たして現代の文明はこの美しい水の都を救うことができるのでしょうか。
人に作られ、人によって壊されていく美しい光景
世界の消えゆく美しい都市たち。いずれも唯一無二の特別な景観や歴史・文化を持つ場所ばかりです。これらは全て古の人々によって造り上げられたものであると同時に、それを壊そうとしているのもまた同じ人間。徐々に失われつつある貴重な風景が、いつか訪れるその時まで美しい姿を留めていてくれることを願うばかりです。
photo / my muse, Shutterstock
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