乳白色の優しい雰囲気の一本。「博多練酒」っていったいナニモノ?

健康に、アンチエイジングにと人気の衰えを知らないのが甘酒。この白いお酒も甘酒のひとつかしらと思ったら、大間違い!でした。室町時代からつくられていたものを10年余りの歳月をかけて再現した、希少なお酒なのです。
 佐藤 紀子

とり〜り甘酸っぱくて、クセになりそう

瓶をかたむけると、とろ〜りと粘度の高い液体が、ゆったりとグラスに移っていきます。優雅なほどにとろとろと落ちていく、このおいしそうな乳白色の正体は「博多練酒(はかたねりざけ)」。福岡県久留米市の若竹屋酒造場がつくるお酒です。

「博多練酒」は見た目そのものの優しい口当たりで、リンゴをすり下ろしたときのようなフレッシュな香りと甘酸っぱいヨーグルトのような風味があります。アルコール度数は3%と低めなので、お酒に弱い人でも飲みやすいでしょう。食前酒にしてもいいし、ゆったり過ごす夜のひとときにもよさそうです。小さくてかわいいグラスを用意したいですね。

室町時代からつくられていたお酒

それにしても「練酒」ってなんでしょう。若竹屋酒造場14代目の林田浩暢さんに聞きました。
「乳酸発酵を主体としたお酒です。室町時代からつくられていたようで、秀吉が愛飲したとか。お祝いのときや出兵の戦勝祈願で飲まれたようですよ」。とてもたおやかな印象のお酒ですが、にぎやかな席で飲まれていたんですね。

「練酒は先代である私の父が文献をひもといて研究し、再現したものなんですよ」。
先代の林田伝兵衛さんは、発酵工学を修め、醸造界にこの人あり、といわれた方。
「研究者の血が騒いだんでしょうね、『練酒』に夢中になりました」

それから十数年、研究を重ねて完成したのが、この「博多練酒」。江戸時代の初めころまでつくられていたそうで、「博多練酒」が誕生したのが1981年ですから、380年ほどを隔てての再現となったわけです。いわば、長い沈黙のあとによみがえったお酒。
「昔はどんな人が、どんなふうに味わっていたんだろう」と思うと、ちょっと楽しくなります。

「博多練酒」は、赤い水引を描いたパッケージが目印。瓶のラベルも紅白でおめでたい雰囲気があります。お祝いの席に「博多練酒」を伴ってみてはいかがでしょう。

自由に試飲をして選べる

若竹屋酒造場は、1699年創業の酒蔵。創業当時の蔵は、いまも「唎酒処 元禄蔵」として使用されています。大きな杉樽を使ったテーブルの上には、銘酒の数々と試飲用のグラス。なんと気になったお酒はどれでも自由に試飲ができるのです。

そしてお隣には、築200年の母屋の一階を改装した「慈菴 和くら野」があり、こちらでは金曜から日曜までの週3日と祝日に豆腐料理などとお酒を味わうことができます。

若竹屋酒造場

筑後の酒蔵、若竹屋酒造場のある久留米市田主丸町は耳納山脈系の麓にあり、ミネラル豊富な伏流水の恵みがあります。若竹屋酒造場では創業当時から同じ井戸を使っているそうです。酒造好適米として有名な山田錦の栽培も進めていて、若竹屋酒造場ならではの味わいを追求しています。

若竹屋酒造場
福岡県久留米市田主丸町田主丸706

http://wakatakeya.com

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