小さなボトルに詰め込んだ、大正15年創業の「鳥居醤油店」がつくる木樽天然仕込みのお醤油

味わいを決定づけるのは昔ながらの木樽と能登の厳選素材。能登半島の七尾にある鳥居醤油店では代々女性がお店を継ぎ、お醤油を作ってきました。現在は3代目となる鳥居正子さん。90年以上変わらない製法と味を守り続けてきた木樽天然仕込みのお醤油は、体を気遣う女性の目線から生まれたアイデアで、ケータイする調味料としてもおすすめです。
 渡邊 孝明

和菓子屋から転じて醤油屋になる

能登半島の中央部、七尾市の一本杉通りにある鳥居醤油店。現在の女将・鳥居正子さんで3代目となります。
お店は1905年の七尾大火により、1908年に再建されたという土蔵造りの建物。国登録有形文化財にも指定されています。

土間続きの店内は先代から受け継いできた家具や道具を配し、明治時代から変わらぬ空間を保っています。棚には鳥居醤油店で手作りしている商品をディスプレイ。木樽天然仕込醤油をはじめ、だしつゆや田舎味噌、醤油麹などを販売しています。
もともと今の建物は明治から大正にかけて和菓子屋「鳥居花鳥堂」を営んでいました。そのため建物自体が醤油屋の造りではなく、店舗一番奥にあるお醤油を作る作業場は、今もなお手狭なところがあるようです。
お醤油の製造量は杉桶で12本分。昔から変わらない味を守り続け、1本の桶で一升瓶にしてわずか2,000本くらい。能登の気候と蔵にある酵母とともに約2年間かけて、ゆっくり発酵を続けながら作るとても貴重なお醤油なのです。

大豆も小麦も塩も能登のもの

鳥居醤油店の看板商品は「木樽天然仕込醤油」。奥能登の珠洲市でとれる大豆や中能登の小麦など、原材料はすべて能登産。素材は一般的な脱脂大豆ではなく、丸大豆を使っています。こだわりは素材だけではありません。化学調味料を使っていないこと。そして、大豆を洗うことも、瓶にラベルを貼ることも、その一つひとつが手作業。すべてが手作りなのです。木樽で2年間熟成させてできた天然仕込みの濃口醤油で、特有の風味を持った奥深い味わいが楽しめます。少し甘みを含んでいるのは三温糖を使っているから。

いつでもどこでも持ち運べる「お醤油ケータイ」

これまでは卸しがメインの商売も、3代目の女将になると小売にも力を入れるようになり、新たに商品開発も行なってきました。その一つが「お醤油ケータイ」。これまでは「木樽天然仕込醤油」を150ml・500ml・1.8Lの3つのサイズでしたが、いつでもどこでもマイ醤油を持ち運べる便利でかわいいアイテムとして考案し、13年ほど前から販売しています。
きっかけは、添加物入りのお醤油が駄目な女将のことを知る友人が、女将のために考えてくれたといいます。出かけた先で使用するお醤油に添加物が入ったものが多く、できるなら自分で持ち歩けるマイ醤油が欲しいという思いがかたちになりました。中身のお醤油はもちろん「木樽天然仕込醤油」。“お弁当の海苔巻や、お昼定食のお刺身に。旅先の市場でも、やっぱり鳥居醤油。”をキャッチフレーズに、その手軽さとかわいい小さなボトルが、おみやげとしても好評なのだとか。1本20ml のサイズで、詰め替えできるのもうれしいポイントです。

店内で「お醤油ケータイ」とともに目を引くのが落雁。「花鳥堂」と「花と鳥」の2種類があります。お醤油屋さんになぜ落雁?と思われるかもしれませんが、鳥居醤油店の前身が和菓子屋「鳥居花鳥堂」だったため、その歴史を大切にしたいという女将の思いから新たに商品化されたものだそうです。お醤油を使用し、味わいはほのかな醤油の風味が特徴です。

鳥居醤油店のお醤油は製造量が限られているため、県外ではほとんど手に入らない代物。石川県内では金沢にも卸しているそうですが、大きいスーパーには置いていないとのこと。東京では石川県のアンテナショップと玉川高島屋にある金沢のお酒屋さんでお取り扱いしていますので、ぜひチェックして一度味わってみてください。

photo / 渡邊 孝明、Sheage編集部

鳥居醤油店
石川県七尾市一本杉町29
0767-52-0368

http://www.toriishouyu.jp/

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