猫が教えてくれること「完全体」/陶芸家・清水直子さんの場合vol.3

猫の猫らしい行動に、自分の生き方を重ねてハッとする瞬間があります。陶芸家の清水直子さんもその一人。自宅で飼っている4匹の猫たちとの出会いやそれぞれの性格について、また忘れられない猫の自宅出産の話をお聞きしました。
 宇佐見明日香

人見知りの「サビコ」と不器用な「キトラ」

サビ柄の「サビコ」(14歳・メス)、シャムMIXのような「キトラ」(9歳・オス)、白黒柄の「もも」(8歳・オス)、三毛猫の「ミケ」(3歳・メス)。4匹は、陶芸家・清水直子さんと一緒に暮らしています。清水さんは外にいる猫を保護しては、新しい家族を探したり、去勢・避妊手術を受けさせるなど猫の保護活動に積極的です。現在一緒に暮らしている4匹もやはり捨て猫や迷い猫でした。

「サビコは迷い猫で、保護した時は、生後半年にも満たない数ヵ月の子猫でした。ビビりで、警戒心が強く、保護した私の姉以外の家族には慣れず、誰かが帰宅するたびにバッと隠れて(笑)。でも数年経って、キトラが来た時は、すんなり受け入れていたので、人見知りは激しくても『猫見知り』はしないのかもしれません」

サビコの次にやってきたのがキトラです。

「ある雨の日、そぼ濡れた姉が玄関に立ち、『拾って来ちゃった』と言って見せてくれたのが、公園にいたという生後2週間くらいのキトラでした。キトラは不器用ないばりん坊。生後間もなく親兄弟とはぐれてしまったせいか、甘噛みもできないし、猫的社会性もなし。首周りしか触られたくないらしく、違う所を触るとパシッと猫パンチを繰り出してきます。でも、キトラのそんな不器用さが可愛いくて」

片目の「もも」と肝っ玉母ちゃん「ミケ」

キトラの1年後にやって来たのがももです。

「近所の商店街で、左目が飛び出してしまっている猫を見かけて。すぐ病院に連れて行かなきゃと捕まえようとしたんですけど、逃げられてしまいました。その後、姉と2週間ほどパトロールして保護に成功。病院での治療が功を奏し、片目の視力は失いましたが、手術など大事に至らずに済みました。ももは我が家で一番の食いしん坊。野良猫生活が長かったせいか、猫的な社会性があって、4匹のバランサーみたいな存在です」

1年4ヵ月前に、仲間に加わったのがミケです。

「ミケを最初に見かけたのは一昨年。子猫を3匹連れて近所を練り歩いていました。うちの庭をトイレ代わりにしていたので、ごはんをあげたり、じゃらしたりして、保護しようと試みたんですけど、母猫のミケだけ逃げてしまって、子猫たちしか保護できず…。そのミケが昨年また姿を現したと思ったら、どうやらお腹に子どもがいる様子。何日かかけて、ごはんのお皿を玄関前から、玄関の中へ中へと引き入れて、最後は扉をバタンと閉めて保護しました」

保護した翌々日、ミケは清水家で出産したと言います。

「猫の出産に立ち会うのは初めてのことで、ドキドキしました。でも、ミケは何度目かの出産で慣れているのか、出血など出産の形跡を残すことなく、5匹の赤ちゃん全員を舐め回してふさふさに!その後の授乳も人手を借りることなく、子猫たちが乳離れする生後3ヵ月くらいまで、立派に育て上げました」

非の打ちどころのない完全体

4匹の個性あふれる猫たちと暮らす清水さんの陶芸作品には、猫がよく登場します。2019年10月5日から金沢のギャラリーで行われる展示「いきものたちのうた」。その展示会に出品する作品も猫の絵付けを施したお皿やカップです。

猫と暮らす陶芸家・清水さんの目から見て、猫の姿かたちは、どのように見えているのでしょう。

「非の打ちどころのない完全体ですよね。足音を立てない、そのための骨格や肉付き。意味のある美しさ。無駄のない美しさです。能力と所作と造形が一致している感じ。研ぎ澄まされたバランス感覚を感じます。うちのキトラのように階段をドスドス下りる猫もたまにいますけど(笑)」

清水さんが猫に感じる美しさは、人に置き換えると「心・技・体」のバランスがとれている人の美しさに通じるのかもしれません。スポーツに限らず、日々のパフォーマンスを存分に発揮するためにも、「心・技・体」を意識してみたいと思います。サビコ、キトラ、もも、ミケ、そして清水さん。たくさんの教えをありがとうございました!

phoro / 筒井聖子

陶芸家・清水直子
2019年10月5日~10月22日「いきものたちのうた」展@金沢ギャラリー日色
https://exkurage.exblog.jp

https://hiiro-g.com/

※掲載内容は記事公開時点のものです。最新情報は、各企業・店舗等へお問い合わせください。
内容について運営スタッフに連絡

関連キーワード