舞台裏の満ち溢れる情熱。ドキュメンタリー映画『新世紀、パリ・オペラ座』

12月9日(土)より、ルイ14世の時代から350年以上に渡り伝統を守ってきたフランスが誇る、芸術の殿堂パリ・オペラ座のドキュメンタリー映画『新世紀、パリ・オペラ座』が公開されました。奔走するスタッフ、衣装係、清掃員、栄光を支える全ての人々をあたたかい眼差しで描き上げた本作品をご紹介します。
 新 麻記子 読者ライター

芸術の殿堂が辿りついた“新世紀”

世界最高峰のオペラとバレエ団を誇る総合芸術の殿堂パリ・オペラ座。“ナタリー・ポートマンの夫”としても注目を集めていた振付師 バンジャマン・ミルピエがバレエ団芸術監督を1年半で電撃辞任し、新たに元エトワールのオレリー・デュポンが就任というマスコミをも巻き込んだ大騒動。そして2015年11月、劇場が襲撃された同時多発テロ。
オペラ座史上最大規模の新作オペラ「モーゼとアロン」の1年間に渡るリハーサル、公演初日直前の主要キャストの突然の降板劇に昇給を要請する職員のストライキと次々に難題が起こり、オペラ座総裁ステファン・リスナーは奔走します。

そんな中オーディションで将来性を見出されたロシア出身の青年が、新たなスターとなるべく光のあたる舞台へと突き進んでいきます。350年以上もの歴史の中で伝統と格式を重んじながらも、常に新しいパフォーマンスを模索し続ける芸術の巨塔の姿をカメラが追います。

“パリ・オペラ座”という社会に生きる人々

本作は、新作オペラ作品を創りあげる過程を過激な演出やありきたりな方法を使って見せるのではなく、創作に取り組む人々を丁寧に捉えています。パリ・オペラ座は2つの会場を持ち、年間400もの公演を行います。それは1500人のスタッフの優れた仕事により実現できてると言っても過言ではないでしょう。作中でオペラ座で働く人々のポートレイトを描きながら、オペラ座という組織の一面を露わにしています。

ヒエラルキーや組織の働き方、競い合いなどがこれらの芸術に関係しつつも政治的なものでもあるので、オペラ座は一つの社会であり、街であり、企業に例えられることができます。本作品はパリ・オペラ座を題材にした映画ではなく、人々についてのドキュメンタリー映画作品です。

圧巻のパフォーマンスに酔いしれる贅沢

パリ・オペラ座の公式プロデュース作品になる本映画は、劇場の聖域に入ることを許されらカメラが、波乱に満ちた時代の転換期を舞台の表と裏を鮮やかに、そして観客が予想するより遥かにコミカルに描き出しています。
世界最高のバレエダンサーやオペラ歌手の類い稀なる才能やパフォーマンスだけではなく、華やかな新シーズン開幕の舞台裏、経営陣の苦悩を描いています。公演2日前の主役降板劇に奔走するスタッフ、オーディションでの新しい才能の誕生、次世代へと繋げる子供達の育成プログラム、そして衣装係、清掃係の細やかな表情まで、劇場に関わる全ての人々をあたたかい眼差しで捉えています。

若くて才能に溢れたバリトン歌手に心を奪われ、涙を流すダンサーの苦悩に感動し、世界屈指の伝統と努力に支えられた至福のパフォーマンスに酔いしれる贅沢。そして、人間ドラマを目の当たりにする興奮。溢れる芸術愛と人間愛に満たされる劇場体験を劇場でお楽しみください。

photo / © 2017 LFP-Les Films Pelléas  - Bande à part Films - France 2 Cinéma - Opéra national de Paris - Orange Studio  - RTS

新世紀、パリ・オペラ座

12/9(土)よりロードショー
監督:ジャン=ステファヌ・ブロン
キャスト:ステファン・リスナー、オレリー・デュポン、バンジャマン・ミルピエ、フィリップ・ジョルダン

http://gaga.ne.jp/parisopera/

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