普遍的なフォルムとぬくもりある灯り。磁土から生まれた「飛松陶器」のランプシェード

一見するとガラス製のように見えるランプシェードは、透光性を調整した磁土でつくられています。つくり手は、陶磁器作家である飛松弘隆さん。屋号として「飛松陶器」を掲げ、現代の暮らしを照らす照明を発表し続けています。
 酒井 牧子

衰退した名品の文化を継承するために

飛松さんのランプシェードづくりは、趣味で足を運んでいた骨董市めぐりから始まっています。ある骨董市で乳白色が美しいミルクガラス製のランプシェードに出合い魅了されました。もっと集めたいと足繁く骨董市へ通うものの、まったく見つけることができません。ふと冷静になり照明の歴史を調べた飛松さんは、ミルクガラス製のものが、大正から昭和初期という限られた期間にだけ製造されていたことを知ります。その衰退は、昭和初期以降から普及した蛍光灯の登場によるものといわれています。
時を同じくして透光性のある磁土に出合った飛松さんは、「素材は違えども自分がこの文化を継承し、伝えていくしかない」とランプシェードづくりを始めました。

オリジナリティを生み出す、自由度の高い技法「鋳込み」

ランプシェードづくりの技法は、石膏の鋳型に液状の粘土を注ぎ込んで成形する「鋳込み(いこみ)」です。鋳込みの魅力は、形の自由度の高さにあります。たとえばランプシェードの表面にいくつも溝があるデザイン。これは、手で溝を彫った原型から石膏型をつくり、その形が粘土に反映されます。
シャープ過ぎないのは、陶芸において初期の技法である「ガバ鋳込み」を採用しているため。現在行われている鋳込みの多くは、外型と内型、2つの型の隙間に圧力をかけて流し込む圧力鋳込みです。一方、ガバ鋳込みは外型のみを使い、外型の形が粘土の内側にやわらかく反映されるのが魅力です。

上の写真に写っている左下のシェードに、十字にラインが入っているのが見えるでしょうか。これは、割型と呼ばれる石膏型を4つ組み合わせ、そこに液状の粘土を流し込んでつくっています。石膏型の境界線には、粘土がはみ出して“バリ”ができますが、飛松さんはあえてバリを残して整え、デザインのアクセントにしています。
また、そのランプシェードのどれもが取り付けが手軽なのも魅力の一つ。飛松陶器では、天井に付いている一般的な引っ掛けシーリングに対応した灯具も取り揃えています。

型だからできる可能性を追い求めて

飛松さんがランプシェードづくりで大切にしていること。それは、30年、50年、100年後の人類の価値観にも合うような、普遍的なフォルムを意識することです。受け継がれるであろう未来を想い、「骨董市で転がってるのを見てみたい」と飛松さん。
また、型物ゆえの量産しやすいフォルムにならないようにも心掛けています。型を使用する理由は、決して量産するためだけではありません。型だからこそできることの可能性を追求していくためです。

「どこか懐かしいけれど、見たことがない新しさを感じる」。そんな印象を抱く人が多い飛松陶器のランプシェード。その反応に、「消えゆく文化の継承と発展を願っているので、方向性が今のところは間違っていないのかなと思います。素直に嬉しいです」と飛松さん。

秋が深まり照明も衣替えしたい季節。あなたの部屋にも懐かしくて新しい磁土のランプシェードを迎えてみませんか。

photo / 飛松陶器

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