地域の人々とのつながりが生み出した「BEE FRIEND SHIP 完熟屋」の生蜂蜜

気になるお店の出店が続いている注目エリアの清澄白河に、2017年6月にオープンしたのが、愛媛の養蜂園直営の「BEE FRIEND SHIP 完熟屋」。珍しい「生蜂蜜」を扱っていると聞いて、早速うかがってみました。
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生の蜂蜜とはいったいどんなもの?

蜂蜜には、「生」と「加熱」したものがあるのをご存知ですか? 実は私は知りませんでした。そもそも生蜂蜜とはいったいどんなものなのでしょうか? 愛媛の佐田岬で生産される生蜂蜜にこだわって、さまざまな製品を提供している「BEE FRIEND SHIP 完熟屋」の店長・溜池優子さんに、いろいろうかがってみました。「一般的に、糖度が約80%ほどで完熟した蜂蜜と言われています。しっかりと完熟した状態まで待つと時間がかかるので、生蜂蜜の流通量は少ないです」(溜池さん)。つまり、こちらのお店に並んでいる蜂蜜は、貴重なものなのだということがわかります。

愛媛直送の蜂蜜は高糖度だから生で美味しい

「蜂蜜に熱を加えれば香りが飛びますし、含まれている栄養分の中には壊れてしまうものもあります。でも、愛媛から直送される当店の蜂蜜は糖度が高く安定しているので、生のままお店に出すことができます。この生の美味しさを是非皆さんに味わっていただきたいと思って、今年6月にこの店をオープンしました」(溜池さん)。BEE FRIEND SHIP 完熟屋の“生蜂蜜”は、年間を通じて10種類ぐらいのラインナップ。中には、提携している養蜂家から送られてくる、東北地方のれんげや蕎麦などの蜂蜜を売ることもあるのだそう。「蜂蜜は天然のサプリのようなもので、具合が悪いときでも蜂蜜をなめておけば大丈夫と言われるほどです。日々取り入れていただきたいので、まずは好みの味を見つけてください」(溜池さん)。

ドリンクやお菓子で栄養補給も

溜池さんのおすすめに従っていろいろ試食させていただいてみたところ、確かに花によって全く風味が違うことがわかりました。ただ、蜂蜜と言ってどれもひとくくりにしてしまうのは本当にもったいないことなのだと気づいた瞬間でした。こちらでは生蜂蜜の他にも、それを使ったいろいろな製品が購入できます。ドレッシングや蜂蜜を使ったジャム。蜂蜜と生姜が原料の『ドリップ』は炭酸で割ってもいいし、ミルクティーに入れるとチャイのような風味になるのだとか。チャイと言えば、こちらでは、季節の果物を使ったスムージーや、柚子を使った『蜂蜜ゆずネード』など、さまざまなドリンク類もテイクアウトでいただけます。蜂蜜を買うついでに栄養補給をしていく人も多いのだそう。

地域に根ざした農業、養蜂、水産業の環境に優しいサイクルを

ところで、このお店の母体となっている完熟屋は、元々は愛媛県佐田岬で生産される柑橘類の販路拡大のために生まれた会社だったのだとか。地元は年々過疎化が進み、耕作放棄地も増えていることに危機感を募らせ、何とか地域を元気にすることはできないかということで、柑橘に並ぶふたつの柱として浮かび上がったのが養蜂や海藻の加工製造。柑橘を栽培し、無農薬の花から純度の高い蜂蜜を取り、春から夏にかけては農薬に汚染されていない海水から海藻を採って加工製造をする。そんな人間にとって優しい自然の循環を実現して、自然共生型農業を持続可能にしていこうという取り組みを完熟屋は地域の人と共に続けてきたのだそうです。

温暖な愛媛・佐多岬だから、良質の蜂蜜を長期間収穫できる

養蜂と言えば、花がなくては成り立たない仕事。養蜂家は花の咲く時期・場所を追って北海道から南下していき、最後は沖縄で冬を越すというケースもあるのだそう。完熟屋で取り扱っている蜂蜜の産地、佐多岬では養蜂家の方は、どのようにして蜂蜜を取っているのでしょうか。「佐田岬は、 瀬戸内海と太平洋のふたつの海に面していて、場所によって気候が違うんです。だから、同じ花でも咲く時期がバラバラで、半径2kmで活動するミツバチは長期間蜜を集めることができます。枇杷の花がだいたい3月に咲き、そこから始まって9月ぐらいまでいろいろな花から蜂蜜を取ることができます」(溜池さん)。だからこそ、地域に根ざした養蜂と言えるのかも知れません。

蜜蜂と共に持続可能な世界の実現を

このお店では、溜池さんはもちろんのこと、スタッフの皆さんも佐田岬の養蜂家の元を訪ね研修として養蜂の仕事を体験しているのだとか。「蜜蜂は可愛いんですよ。彼らが健気に集めてくれた蜂蜜ですから、大切に使わなければと思うし、多くの人にこの美味しさを味わっていただきたいと思います」(溜池さん)。最近の異常気象もさることながら、農薬の悪影響など蜂蜜を取り巻く環境は段々厳しくなりつつあるのだそうです。「ある農薬の成分の影響で、蜂が巣に戻れなくなる病気が発生しています。ですから、きちんと土地に根ざして地域の農家の人とのつながりを密にする養蜂というのが大事なんです」(溜池さん)。

そういえば、2016年、直木賞と本屋大賞のW受賞で話題を攫った『蜜蜂と遠雷』(恩田陸・著)の主人公のひとりである天才的なピアニスト・風間塵の父親は養蜂家でした。塵は父親に連れられて蜜蜂と一緒に旅をするため、自分のピアノを持ったことがないという少年だったというのが、この小説のひとつのポイント。彼にとって「明るい野山を群れ飛ぶ無数の蜜蜂は、世界を祝福する音符である」という記述がとても印象的だったのを思い出しました。今日こちらで買った蜂蜜を紅茶にでも入れて、もう一度読み直してみたら、また違った光景が見えてくるのかもしれません。

photo / reeeko

BEE FRIEND SHIP 完熟屋
〒135-0021
東京都江東区白河2-2-1
TEL:03-5875-9315
定休日:月曜日
※月曜日が祝日の場合は翌日火曜日がお休みになります。
営業時間:平日11:00~19:00、土日10:00~19:00
※大雨の時などに早めに閉める場合があります。

http://www.kanjyukuya.com/kiyosumi/

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