糸で絵を描くように一針一針。お茶を片手に刺繍の時間を楽しむ「刺繍CAFE」

ファッション・トレンドの一つである刺繍ですが、刺繍のワークショップは何年も前から人気なのをご存知ですか。そんなワークショップのひとつ「刺繍CAFE」におじゃましてきたので、その様子をご紹介します。
 酒井 牧子

道具が揃っているので、手ぶらで大丈夫

矢崎順子さん主宰の「artist in」が主催する刺繍CAFEは、2005年から始まったワークショップです。東京のカフェやショップを中心に各所で開催していますが、取材の日の会場は、池袋にあるフランク・ロイド・ライトが設計した自由学園明日館でした。窓の意匠やそこから見える庭も素敵で、おだやかな雰囲気の中、刺繍の時間が楽しめます。

刺繍CAFEは、刺繍糸や針、刺繍枠、はさみといった道具がすべて揃っているので、手ぶらで参加することができます。刺繍を施すのは、ハンカチや巾着、ミニバッグなど。参加回数によって刺繍するアイテムが変わり、何度参加しても楽しめるように工夫されています。
初めての人であれば、ハンカチの中から好きな絵柄を選び、色とりどりの刺繍糸から3色をセレクトします。手元には、道具とともに基本ステッチ12種の解説の紙が配られますが、矢崎さんがお手本を見せながら教えてくれるので初めてでも安心です。

糸の色や太さ、ステッチで見えてくる個性

参加した皆さんにお話を聞いてみると、刺繍に興味があり始めるきっかけを探していた方、自分で作ったバッグやポーチに刺繍でワンポイント入れてみたくてという方など、参加の理由はさまざま。なかには、来年、結婚を控えていて、刺繍でウェルカムボードを手づくりしたいという方もいらっしゃいました。
また、刺繍CAFEに何度も参加している方からは、「参加する度につくる物が変わるのでおもしろいです」という声も聞こえてきました。

皆さんの手元を見ていると、選んだ絵柄が同じであっても、刺繍糸の色や太さ、ステッチで仕上がりに個性が出ることがわかります。刺繍をする楽しさに加えて、ほかの人がつくるものを見る楽しさがあるのは、ワークショップの魅力ではないでしょうか。

刺繍糸の多彩さを伝えたい

講師を務める矢崎順子さん主宰の「artist in」は、刺繍CAFEをはじめとする刺繍やレースのワークショップを開催するほか、書籍の企画に携わっています。
矢崎さんに刺繍CAFEを始めたきっかけを聞いてみました。
「刺繍糸の会社の人と知り合う機会があって、刺繍糸に450近い色があることを知り驚きました」。刺繍糸を絵の具のように感じた矢崎さんは、「周囲に絵を描く人が多かったこともあり、刺繍糸の色の多彩さを伝えたいという気持ちが強くなりました」。そこで、刺繍CAFEを始めてみると、たくさんの人が刺繍を楽しんでくれて、以来10年以上続いています。
意外なことに、刺繍CAFEを始めた当初、矢崎さん自身に刺繍の高度なテクニックがあったわけではありません。知人に教わったこともあるそうですが、刺繍CAFEを通して矢崎さん自身も技術を磨き、刺繍の奥深さを知っていったと言います。

身近なものに手を加える楽しみ

「まるで糸で絵を描くように、色が楽しめるのが刺繍の大きな魅力」と笑顔を見せる矢崎さん。刺繍作品のなかには、仕上がったものを額装して飾るものもありますが、ハンカチやバッグ、洋服など、身近なものに手を加えられるのも刺繍の大きな魅力です。元が既製品であっても、糸で絵を描くことで世界に一つだけのものができあがります。

刺繍​CAFE​では、必ずしも時間内に最後まで仕上げる必要はありません。自宅に持ち帰って続きをやってもいいので、初めてでもペースを気にせず楽しむことができます。刺繍CAFEは2時間ですがあっという間に感じられるほどで、皆さんの笑顔が刺繍CAFE​の楽しさを物語っていました。

photo / 刺繍CAFE、酒井牧子

カフェで刺繍を楽しむワークショップ「刺繍CAFE」

http://www.artistin.jp/

https://www.facebook.com/shishucafe/

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