“版画”の概念が変わる『派生する幹-DERIVATION from the TRUNK-』

7月1日(土)よりSEZON ART GALLERYで開催される小野耕石・増田将大・菊池遼 3人展『派生する幹 -DERIVATION from the TRUNK-』。シルクスクリーンという共通の版画技法を用いながらも、技法や素材といった枠組みを超えた方法で作品を制作している本展覧会をご紹介します。
 新 麻記子 読者ライター

ぞわぞわする感覚が楽しめる『小野耕石』

シルクスクリーンの技法を駆使して生み出される無数のインクの柱が立ち並ぶ平面作品「Hundred Layers of Colors」シリーズで知られる小野耕石さん。
手書きしたドットを版に起こし、それを単色で色を変えながら100回も丹念に刷り重ねることで高さ数ミリのインクの柱が立ち並んだ状態が生み出されます。無数のインクの柱の集合体が、見る側の位置の変化にともない色を妖しげに変え、魅惑的な視覚体験をもたらします。そして何よりも物理的な突起物が密集する様が触覚的で、作家の言うところの“ぞわぞわする”感覚が襲うことでしょう。
本展覧会では、版画で刷り上げられたインク部分だけを削ぎ取り、 別の支示体に移植してできる二次表現を展開しています。

新進気鋭のアーティスト『増田将大』

1つのモチーフを撮影しては、プロジェクターで同じ場所に投影、そして撮影。このプロセスを繰り返して幾多もの図像を重ねることにより、微妙なズレと重なりを含んだシルクスクリーンの作品を制作していく増田将大さん。
大学入学時から数々の展覧会に参加し、2012年「TURNER AWARD」大賞、2014年には「GOLDEN COMPETITION」大賞、第1回「CAF賞」にて最優秀賞を受賞するなど、将来を期待されている新進気鋭のアーティストです。

哲学と禅の思想『菊池遼』

20世紀哲学と禅の思想に通じながらも、知覚体験できる作品制作に取り組んでいる菊池遼さん。多様な絵画的技法を用いて現実に対する一般的な認識と構造に対しての思考を揺さぶります。
本展覧会では、ぼやけた風景あるいはモチーフを描いている「Void」シリーズを展示します。近づいて見ることを求めながらも、鑑賞者が作品に近づいていくと多数のドットの列へと消えてしまい、はっきりとした視覚を得られる距離への可能性を完全に排除しています。

技法は作家の発想と技術によってあらゆる可能性を生み出すことができます。日本において“シルクスクリーン”は版画技法の1つとして位置づけされていますが、小野さん、増田さん、菊池さんも扱っている技法が版画であるという認識はないでしょう。何故なら彼らの取り組む芸術的問題は、生み出す作品が「版画である」ことではないからです。

7月16日(日)15時からは、「発想から形へ」と題し、展覧会の主役である3人のトークイベントが開催される予定です。この機会に各々の表現を模索し、実戦している作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

photo / セゾンアートギャラリー提供

小野耕石・増田将大・菊池遼 3人展「派生する幹-DERIVATION from the TRUNK-」
会期:2017年7月1日(土)~2017年7月30日(日)
時間:11:00~18:00
会場:セゾンアートギャラリーB2(東京都渋谷区神宮前3-6-7)

トークイベント「発想から形へ」
参加者:小野耕石 増田将大 菊池遼
モデレーター:岩渕貞哉
日程:2017年7月16日(日)
時間:15:00〜

http://sezonartgallery.com/exhibition/d_f_t_t/

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