100年の歴史と民芸とクラシック音楽と。長野の松本にある至福の空間「珈琲 まるも」
国内外から多くの旅行者が訪れる城下町・松本。その地で100年以上の歴史ある旅館「まるも」に寄り添うように小さな喫茶店「珈琲 まるも」があります。今ではおしゃれなショップが立ち並ぶ蔵の街・松本のランドマーク的な存在として、クラシック音楽と由緒ある松本の民芸品に包まれた空間で至福のひとときを過ごすことができます。
- 2017.4.25
- 旅行・お出かけ
旅館と喫茶が共存する「まるも」
慶応4年に新田宗八郎によって創業した「旅館まるも」。ちょうどJR松本駅と国宝・松本城の真ん中、徒歩15分ほどの場所に位置し、蔵の街並みが続く田川沿いにあります。現在の蔵造りの建物は松本大火後の明治21年に建てられ、その一部として昭和31年に始まった喫茶が「珈琲 まるも」です。どちらの名称にもある、言葉の響きも字体もかわいらしい屋号の「まるも」。その屋号は初代の新田宗八郎の長男である茂八郎(もはちろう)の「も」からとったもの。当時は屋号に長男の頭文字を使うのが流行り、昔はカタカナではなく漢字でしたが、祖父から堅苦しいイメージがあるとのことで、カタカナに変わったといいます。
タイムスリップしたような店内
「珈琲 まるも」を象徴するのが、店内のアンティークに包まれた空間。「珈琲 まるもは昭和31年、松本民芸家具の創設者である池田三四郎の設計によるものです。店内の調度品は半世紀以上にわたって松本民芸家具を使用しています。一部そうではない椅子もありますが、松本民芸出身の方が作られたものになります。長年の使用感が味わいとなり、中には松本民芸家具のお店に行かれた方が実際に長年使用された状態を知りたいと、こちらを訪れるお客様もいらっしゃいます」。そう話すのは、旅館まるも4代目の三浦史博さん。「珈琲 まるも」においては祖父から直接受け継いだことから2代目になるのだそう。
「昔、祖父が壮絶だった戦争から帰還できたら、好きなクラシック音楽をいっぱい聞きたいという思いで始めたといいます。高価なレコードを商売で使えれば、大義名分で買うことができる(笑)。その当時は娯楽が少ない時代でしたので、コーヒーを飲むよりもクラシック音楽を聴きたいというお客様が多かったそうです」と三浦さん。珈琲 まるもは“場”を提供することに徹したいという思いから、メニューもできるかぎり食べ物は控えめ。そして、なるべく匂いの出ないものを提供しているのだそう。「わざわざ時間を作って来ていただいていて恐縮ですが、思い思いにちょっと休んで欲しいと思っています」と三浦さんは話します。
とはいえ、メニューに手を抜いているわけではなく、チョコレートとミルクの小さなブラウニー、ヨーグルト風味のレアチーズケーキ、しっかりと焼いた昔懐かしいプリンは店内で手作りしています。定番はモーニングのトースト(写真)。女性にはハチミツとクルミがのったハニートーストが人気なのだとか。どれも、まるもブレンド珈琲とのセットメニューで楽しめます。
旅館「まるも」でゆっくり宿泊もおすすめ
ゆっくりしたいという方には、旅館「まるも」での宿泊がおすすめです。海外の方にも人気の宿は130年くらいの歴史ある建物。「(改装して館内を)今風にするのは簡単ですが、自分にとってそれをやってしまうとおもしろくないのです。たとえば、防音性やプライバシーの観点ではホテルの方が快適ではあるかもしれませんが、不便なことは承知のうえで“そのまま”であることをおもしろがっていただける。とくに硬い木でできている梁に頭をぶつけたらとても痛いですが(笑)、そんな不便さも思い出として、あとで振り返った時に笑い話の一つにでもなれたら、その土地ならではの経験として歴史を感じてもらえるのではないでしょうか。100年以上前から旅館を営んでいるわけですが、当時と今で宿泊されるお客様が同じことを体験できるのはおもしろい。そんな感性の方に来ていただけるとありがたいですね」と三浦さん。
街散策の途中に気軽に立ち寄れる場所
特急列車で約2時間半。松本は東京からのアクセスも良く、週末で気軽に訪れることができます。街のお散歩途中に「まるも」で心地よいクラシック音楽と民芸に浸ることができる至福のひとときを。時間が許されるのなら旅館にも宿泊して、昔と変わらない旅の醍醐味を体験してみてはいかがでしょうか。
photo / 渡邊 孝明、Sheage編集部
珈琲 まるも・旅館まるも
長野県松本市中央3-3-10
0263-32-0115
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