最近絵本を読みましたか?心の琴線に触れる、大人が読みたい絵本<5選>

みなさん、最近絵本を読みましたか?絵本は子どもだけではなく、大人の心にも響く素敵なものがたくさんあります。日々の暮らしを少し豊かにしてくれるものであったり、友達や家族との絆の大切さを再確認させてくれるものであったり。ここでは、編集部がセレクトした「大人にこそ読んでほしい絵本」をテーマにご紹介します。
 YVONNE

大切な人にスープをつくりたくなる。『いつもいっしょに』

物語の主人公は森の中にひとりぼっちで住んでいるくまさん。ある日、くまさんの家の扉をトントンとノックする音が聞こえて、扉を開けると寒そうに凍えるうさぎさんが立っていました。くまさんはうさぎさんのためにあたたかいスープを作り、「だれかのためにごはんをつくるなんて」とウキウキ。でも、毎日うさぎさんのためにいろいろ世話をしてあげているのに、うさぎさんはニコニコしているだけで何も言ってくれない、次第にモヤモヤした気持ちが爆発してしまいます。

毎日家族のためにご飯をつくっている筆者としては、くまさんの気持ちは痛いほどわかるのですが、この絵本は「見返りを求めすぎていたけど、一緒に居られるだけで幸せなんだ」ということを感じさせてくれる。シンプルですが、心を揺さぶられる1冊です。

『いつもいっしょに』
作:こんのひとみ/絵:いもとようこ
刊行:金の星社
定価:1,540円(税込)

考え方は、ひとりひとり、みんな違っていい。『フレデリック』

『スイミー』『あおくんときいろちゃん』など、数多くの名作を残しているイタリアの作家レオ・レオニ。レオ・レオニの絵本にはねずみが登場する作品が多いのですが、なかでも小さなネズミのフレデリックはちょっと一風変わっています。

仲間の野ねずみが、冬に備えて食料を蓄えているのですが、みんながせっせと働いている間、フレデリックだけは何もせずにぼんやりと過ごします。「何をしているの?」と尋ねられると「いろをあつめているのさ」「ことばをあつめているんだ」などと言ってずっとぼんやり。みんなからは変わったやつだと思われていたのですが、冬が来てみんなが集めた食料が底をつき、おしゃべりのネタもなくなった頃、フレデリックがあつめていたものがみんなを元気にするのです。想像することや言葉を紡ぐことは心を豊かにすることだとフレデリックが教えてくれます。

『フレデリック ちょっとかわったのねずみのはなし』 
レオ・レオニ(作)/谷川 俊太郎(訳)
刊行:好学社
定価:1,602円(税込)

本気で愛した人はいますか?『100万回生きたねこ』

100万回生まれ変わった猫のお話。ある時は王様に飼われ、ある時は船乗りに飼われ、おばあさんに飼われ、、100万人の人と共に暮らした猫が最後に出会ったのが白い猫。今までの飼い主にはまったく愛情を持たなかったのに、はじめて愛した白い猫がこの世を去った時、猫は初めて涙を流し、彼女の隣で静かに動かなくなりました。そして二度と生まれ変わることはありませんでした。

久しぶりに大人になってから読み返すと、まさかの号泣。「え!こんな話だっけ!?」とその深すぎる内容に驚きます。結局猫は、誰にも飼われていない自由な野良猫の方が幸せなのかもしれないな。この猫は本気で誰かを好きになれたから、もう生まれ変わる必要はないと思ったのかな? いろいろと感じることはあるのですが、読み手によって受け止め方はさまざまかと。人生で2度読みたい名作です。

『100万回生きたねこ』
作・絵:佐野 洋子
刊行:講談社
定価:1,540円(税込)

ピュアな感性のままで。『うさこちゃんびじゅつかんへいく』

ディック・ブルーナによるうさこちゃんシリーズ。うさこちゃんがお父さんとお母さんといっしょに美術館へお出かけするこの絵本では、うさこちゃんと共に絵画や彫刻を鑑賞できます。

筆者が好きなページはピエト・モンドリアンのコンポジションに似た作品の前で「このえはとてもいい」とうさこちゃんが呟くところです。現代アートってよくわからないけれど、きれいだなとか、面白いなとか、作品と向き合った時に自分が感じるシンプルな気持ちで楽しめばいい。物事を純粋に感じる心を取り戻してくれます。

『うさこちゃんびじゅつかんへいく』
ぶん・え:ディック・ブルーナ/訳:まつおか きょうこ
刊行:福音館書店
定価:770円(税込)

家族と一緒にいられる幸せを感じて。『字のないはがき』

今年3月、「第一回親子で読んでほしい絵本大賞」を受賞した本作。作家・向田邦子さんの名作を角田光代さんと西加奈子さんという大人気作家コンビが美しい絵本によみがえらせたものです。

戦争時代、小さな妹が疎開するとき、「元気なときは大きな○を描くように」とお父さんがたくさんのはがきを渡します。最初ははがきに大きな○がついていたのですが、すぐに小さな○になり、やがて×になりますー。読み進めているうちに、まだ小さいのに家族と離れて暮らさなければならなかった妹のこと、妹を思いやる家族たちの優しさに胸がギュッと痛くなります。だけれども、戦争時代を生き延びた人々の強さに勇気をもらえて、前向きになれる。現代の日本人におすすめしたい一冊です。

『字のないはがき』
原作:向田 邦子/文:角田 光代/絵:西 加奈子
刊行:小学館
定価:1650円(税込)
子どもの頃に読んだ絵本、本屋でなにげなく出会った絵本、世界中で読み継がれている名作絵本。星の数ほどある作品の中で出会った絵本は、縁があるのだなと感じることがあります。大人になって絵本に触れることはそんなに多くないと思いますが、寝る前のちょっとした時間にぜひページをめくってみてください。きっと心がスッキリするはずです。

photo / YVONNE

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