繊細な刺繍に見惚れる。「iCONOLOGY」の「花を着るワンピース」

思わず見惚れてしまうほど繊細な刺繍が施された「花を着るワンピース」。手掛けるのは、アパレルブランド「iCONOLOGY(イコノロジー)」です。刺繍工房というアパレルの生産現場から生まれたこのブランドは、どのような視点で、どのような思いを持って立ち上げられたのでしょうか。
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心奪われる繊細な刺繍

袖にあしらわれた美しい花の刺繍。女性らしさを引き立てるフェミニンなシルエット。「花を着るワンピース」と名づけられたこちらのワンピースは、アパレルブランド「iCONOLOGY(イコノロジー)」が手掛けたもの。
そのアイテムにはすべて、見事なまでに繊細な刺繍が施されています。

ブランド名の由来であるイコノロジーとは「図像解釈学(ずぞうかいしゃくがく)」のこと。言葉の意味としては、図像を記述・解釈することとされますが、とくに20世紀の美術史学において、絵画の中の図像を、それを生み出した社会や文化全体と関連づけて解釈することを指します。
iCONOLOGYでは、「刺繍=図像」と捉え、刺繍の深みや魅力を味わえるブランドを目指しているのだそう。

その刺繍は本物の花のような立体感や陰影を感じさせ、袖を通せば、まるで絵画作品を纏っているかのよう。間近で見れば、刺繍でここまでの表現ができることに驚き、またその奥深さに引き込まれてしまうことでしょう。

花びら一枚一枚にこだわりぬく

こちらは、この春販売された「花を着るワンピース#02」シリーズの「桜」。
花びらに、わずかに色味の違う2色を使うことで表現した花弁の重なり。若葉色から花に向かって徐々に紅く染まる茎。そのリアルさには、見ているだけで思わずため息がこぼれます。

同シリーズの「ハクモクレン」。
長めのサテンステッチをランダムに繰り返すことで生み出される花びらの艶。その一枚一枚は温かみのあるオフホワイト系の2色使いで、奥行きを表現しています。桜に比べると落ち着いた雰囲気ですが、色数が少ないことで、より白い花の印影が際立ちますね。

こちらも同シリーズの「鈴蘭(すずらん)」。
小さな白い花は、ただ塗り潰すようなステッチにするのではなく、花びら一枚ずつをサテンステッチにすることで立体感を出しています。鮮やかなグリーンの葉は、葉脈が繊細に表現されており、さらには、微妙なグラデーションで光による明暗までも感じさせてくれます。

刺繍工房3代目の挑戦

ここまで刺繍にこだわったアイテムを作り出せるのには、理由があります。
実はiCONOLOGYは、刺繍工房が手掛けているブランド。工房ならではの技術と知識を活かし、自ら企画・デザイン・刺繍加工までを一貫して行っています。

30年以上続く工房の3代目であった加藤千尋さんは、アパレル刺繍工房の可能性の提示としてブランドを立ち上げました。

その背景にあったのは、縫製工場や刺繍工房といったアパレルの生産現場の抱える問題でした。
量産ブランドの下請けの仕事を、安い工賃で引き受けざるを得ない現状。商品がどこに並べられ、誰が着るのかを知らないまま量産し続ける日々。その服を購入した人の感想も感謝の言葉も聞くことのできない現場。そして、アパレル不況で潰れていく、いくつもの工場。

加藤さんは、こうした現場の苦しさや問題を汲み取り、声を上げるべくiCONOLOGYをスタートさせました。iCONOLOGYは、下請けだけではない、これからのアパレル生産現場のあり方の1つとして生まれたのです。

これからも可愛い服が生み出されるように

その熱い思いと確かな技術が詰まった魅力的なアイテムは、大変人気のため、現在オンラインストアではすべて完売。ですが、今後も新作のワンピースや、刺繍のブラウスなども販売予定とのことなので、目が離せませんよ。

プチプラの服でも、ちょっぴり贅沢なブランド服でも、その服を選ぶとき、ブランドの生産背景や、それを作った生産現場の人たちに思いを馳せることは少ないでしょう。
でもiCONOLOGYのように、問題に向き合い、声を上げてくれるブランドや人がいるからこそ、現場が守られ、私たちの手元に健全に作られた質のいい可愛い服が届くのではないでしょうか。
そのことをほんの少しでも心の片隅に置いてくれる人が増えたらよいな、と思います。

photo / iCONOLOGY

iCONOLOGY(イコノロジー)

https://iconology-store.com/

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