猫が教えてくれること「果てしないかわいさ」/地域計画学研究者・江口亜維子さんの場合vol.3

猫の猫らしい行動に、自分の生き方を重ねてハッとする瞬間があります。地域計画学研究者の江口亜維子さんもその一人。一緒に暮らす猫「うり」は、何事にも根を詰めてしまいがちな江口さんを救うため、妖怪・はばみに化けて…?
 宇佐見明日香

うりの別名は「妖怪・はばみ」

「うり」(12歳・メス)の飼い主、地域計画学研究者の江口亜維子さんは、現在、大学院に通いながら博士号を取得するため、論文を執筆しています。

「私はこれと決めたら、やり込んでしまう性分で、作業中はパソコンの前に座り続けてしまいがち。切り上げるということがなかなかできないんですけど、そういう時に、うりは妖怪・はばみとなって、手を変え品を変え私の作業をはばみます(笑)」

集中して読んでいる資料の上にどっかり座って資料を温めたり、デスクトップのパソコンとキーボードの間に背筋を伸ばして座り、画面を見えなくすると同時に、「もうやめたら?」という静かな抗議の眼差しを向けてきたり。その胴体でキーボードをすっぽり隠して、パソコン操作自体を不可能にするはばみ。

右腕の筋力が発達している理由

「作業の手を止め、トイレに立って戻るわずかな隙に、今まで私が座っていた椅子の上に『もうずっと前からこうしています』といった顔で、うりが香箱を組んで座っていることなんてしょっちゅう(笑)。少しでもどかそうとすると『ワーッ』と怒るので、それもできず床で作業することも。

パソコンに向かう私の腕や膝に座ってじわじわと温め、眠気を誘うという高度なはばみ方もあって、まんまと寝落ちさせられてしまうことも」

以前、健康のためにと江口さんがジムに入会した時、筋力測定で右腕の筋力だけやけに発達していることがわかったそう。キーボードを叩く江口さんの右腕に全体重を預けて眠る、うりの顔がすぐに浮かんだと言います。

果てしないかわいさ

思うように事を運ばせてくれない。でも、それすらもかわいい。うりのかわいさは果てしないと江口さんは言います。

「うりと暮らして12年。かわいさは日に日に増すばかりです。こんなにもポジティブな存在って、この世にないかもと思うほど。目の前のうりを見ながら『なんでこんなにかわいいのかよ~』と歌を口ずさみ、作業の進行状況に冷や汗を流しつつ、今日もそのかわいさには抵抗できない。しあわせなことです」

あなたの心を温め、清め、満たしてくれる、どこまでもポジティブな存在や事柄はなんですか?自分にとっての「それ」が何なのかに思いを巡らせていたら、家族や友人にとっての「それ」も知りたくなりました。ポジティブな存在を語らう時間は楽しく、知ってるつもりになっていた大切な人をもっと深く知るきっかけになるかもしれません。うり、江口さん、たくさんの教えをありがとうございます。

photo / 江口亜維子

地域計画学研究者・江口亜維子
(千葉大学大学院 園芸学研究科 博士後期課程)

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