村上春樹の同名短編小説を映画化した『ハナレイ・ベイ』で女性の生き方を学ぼう
村上春樹の同名短編小説を映画化した『ハナレイ・ベイ』が10月19日(金)より公開になります。息子を亡くした女性の苦悩と再生を、美しいカウアイ島の風景と共に描き出した作品です。女性の生き方や死生観について考えさせられる物語の見どころを解説します。
- 2018.10.15
- アート・カルチャー
不思議なファンタジー『ハナレイ・ベイ』はどんな物語?
シングルマザーのサチ(吉田羊)は、ひとり息子のタカシ(佐野玲於)を失ってしまいました。ハワイ・カウアイ島にある「ハナレイ・ベイ」でサーフィンをしていたタカシは、大きなサメに片足を襲われ、そのショックで命を落としてしまったのです。それ以来、サチは毎年、月命日になるとカウアイ島を訪れ、ハナレイ・ベイで過ごすようになります。それから10年後。カウアイ島を訪れたサチは、亡くなった息子と同世代の2人の日本人サーファー、高橋(村上虹郎)と三宅(佐藤魁)と出会い、言葉を交わすようになります。そんなある日、2人から「赤いサーフボードを持った、片脚の日本人サーファーを見た」と聞き、驚きを隠せないサキ。それをタカシと確信したサチは、息子を探しますが見つけられません。「なぜ自分には見えないのか?」とサチは自問しますが…。
スピリチュアルスポットとしても知られるカウアイ島を舞台に、息子を失って虚無感を抱えた女性が自分自身を見つめ直し、再生していく姿を描いています。村上春樹が描いた短編集『東京奇譚集』の一篇が原作ということもあり、ファンタジー要素のある不思議な物語です。
スピリチュアルスポットとしても知られるカウアイ島を舞台に、息子を失って虚無感を抱えた女性が自分自身を見つめ直し、再生していく姿を描いています。村上春樹が描いた短編集『東京奇譚集』の一篇が原作ということもあり、ファンタジー要素のある不思議な物語です。
もう少し具体的にあらすじを補足すると…。
実は主人公のサチは、息子・タカシの人間性に嫌悪感をもっています。魅力的なタカシは、彼女をひっきりなしに変える、女性にとっては好ましくないタイプ。立派に育ててくれた母親に対しても反抗的で、忙しい彼女がちょっと洗濯を失敗したぐらいで「普段何してくれるわけでもないんだから、洗濯ぐらいちゃんとして」なんて暴言を吐く、もし著者がその場にいたら「おいこら!」と突っ込みを入れたくなるようなキャラクターなのです。
息子の言動は浮気中に亡くなったサチの元亭主を彷彿させるものでもあります。そんな生前の確執もあり、サチはタカシの亡骸と対面しても涙を見せません。息子の死ときちんと向き合えず、虚無感を抱えたサチは、それ以来毎年、月命日にカウアイ島を訪れるようになります。それから10年後、偶然出会った青年から聞いた奇妙な話をきっかけに、彼女のなかで何かが動き始めます。
息子の言動は浮気中に亡くなったサチの元亭主を彷彿させるものでもあります。そんな生前の確執もあり、サチはタカシの亡骸と対面しても涙を見せません。息子の死ときちんと向き合えず、虚無感を抱えたサチは、それ以来毎年、月命日にカウアイ島を訪れるようになります。それから10年後、偶然出会った青年から聞いた奇妙な話をきっかけに、彼女のなかで何かが動き始めます。
松永大司監督の巧みな演出と役者たちの演技に注目
サチは、吉田羊が演じています。共演者やスタッフたちが「今までに見たことがない吉田羊が映っている」と称賛する演技を引き出したのは、松永大司監督。俳優として活躍経験があるため、役者の魅力を引き出す演出に定評ある監督です。撮影中、「そのアプローチはやめて欲しいです」「その感じは嫌いです」という厳しいやり取りが行われていたそう。その結果、サチが感情を露わにするシーンは見応え十分。ネタバレになるため、詳しくは書けませんが、哀しくも愛おしい、心に迫る名場面になっています。
タカシ役を任されたのは、GENERATIONS from EXILE TRIBEのパフォーマーとして活躍する佐野玲於。「ライブを観に行ったときにすごく輝いていた」と監督が気になった存在だったとか。サチが苦々しく思う生意気な性質をきちんと体現するなど、演じることへのセンスを感じられます。
原作とも設定が異なり、劇中で不思議なキャラクターとして存在しているのが、村上虹郎が演じる高橋です。物事をすべて達観しているようであり、素直で青年らしい部分もあり、なんとも掴みどころがありません。そんなキャラを時に飄々と、時に愛嬌たっぷりに演じ分け、役者としての力量は計り知れません!
今後がますます楽しみな若手2人にも注目したいところです。
タカシ役を任されたのは、GENERATIONS from EXILE TRIBEのパフォーマーとして活躍する佐野玲於。「ライブを観に行ったときにすごく輝いていた」と監督が気になった存在だったとか。サチが苦々しく思う生意気な性質をきちんと体現するなど、演じることへのセンスを感じられます。
原作とも設定が異なり、劇中で不思議なキャラクターとして存在しているのが、村上虹郎が演じる高橋です。物事をすべて達観しているようであり、素直で青年らしい部分もあり、なんとも掴みどころがありません。そんなキャラを時に飄々と、時に愛嬌たっぷりに演じ分け、役者としての力量は計り知れません!
今後がますます楽しみな若手2人にも注目したいところです。
カウアイ島で撮影された美しい景色も見どころ
物語の舞台となるのは、ハワイ州に属するカウアイ島です。ハワイ最古の島として知られているカウアイ島は、ハワイ8島のうち4番目の大きさで、東京都とほぼ同じ広さ。別名「ガーデン・アイランド」と親しまれる緑豊かな島は、ハリウッド大作『ジュラシック・ワールド』など、『ジェラシック・パーク』シリーズなどのロケ地としても有名です。
島の南部にあたるポイプ・ビーチから、物語の舞台になる、ハナレイ・ベイまでの海岸線はこの世の景色とは思えないほどの美しさ。物語の背景であるだけの風景が、劇中、神秘的に活き活きと存在しています。力強く躍動的にみえる自然と対照的に描かれているのが人間のはかなさと弱さです。その対比の意味するところを、大きなスクリーンで感じてみてください。
余談ですが、カウアイ島はほかの島よりロケ地代がかかるため、ハリウッド大作でもめったに行わないそうですよ。
島の南部にあたるポイプ・ビーチから、物語の舞台になる、ハナレイ・ベイまでの海岸線はこの世の景色とは思えないほどの美しさ。物語の背景であるだけの風景が、劇中、神秘的に活き活きと存在しています。力強く躍動的にみえる自然と対照的に描かれているのが人間のはかなさと弱さです。その対比の意味するところを、大きなスクリーンで感じてみてください。
余談ですが、カウアイ島はほかの島よりロケ地代がかかるため、ハリウッド大作でもめったに行わないそうですよ。
大切な人を失った時にどう生きるのか?人生を見つめ直すきっかけ
不可解な話をきっかけに改めて息子や自分の人生と向き合おうとするサチ。息子を突然なくした女性の喪失と再生、そして希望を描いた本作は、死生観について問いかけている物語でもあります。突然、大切な人を失った時にどうすべきか?サチの選択を映画で追体験しながら、自分なりの答えを見つけてみてはいかがでしょうか。
photo / (c)2018 『ハナレイ・ベイ』製作委員会
『ハナレイ・ベイ』
監督・脚本・編集:松永大司 原作:村上春樹『東京奇譚集』の一篇「ハナレイ・ベイ」
出演:吉田羊 佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE) 村上虹郎 佐藤魁 栗原類 ほか(18/日/97分)
配給:HIGH BROW CINEMA
10月19日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開
※掲載内容は記事公開時点のものです。最新情報は、各企業・店舗等へお問い合わせください。
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