脈々と受け継がれる表現の中に見える斬新さを楽しむ。「琳派 ー俵屋宗達から田中一光へー」
現在、山種美術館では「【特別展】琳派 ー俵屋宗達から田中一光へー」が開催されています。展示される作品は、「琳派(りんぱ)」と呼ばれる、やまと絵を基盤とし、装飾・デザイン性を豊かに描いた作品たち。時を経て、琳派を引き継いだ日本画家やデザイナーたちが学び、いかに作品に取り込んだのか。その探求心に注目します。
- 2018.6.13
- アート・カルチャー
琳派の表現は、現代のデザイン的な表現にも通じる
琳派(りんぱ)とは、俵屋宗達(たわらや そうたつ)、尾形光琳(おがた こうりん)、酒井抱一(さかい ほういつ)を軸に、表現やスタイルを発展的に継承した一連の芸術家やその作品たちのこと。本展覧会では、琳派の軸である3人と、琳派を伝承した近代、現代の日本画家やデザイナーの作品が展示されます。
琳派は、流派のように血縁や師弟間で伝わるのではなく、先人を慕い自分で学び、取り入れることにより受け継がれてきました。
始祖である俵屋宗達は伝統を重んじつつも、主題をデフォルメしたり、トリミングするなど、大胆なアレンジを施し斬新な作風を確立しました。これらの作風は現代のデザインにも通づるものがあります。モチーフによく扱われるのは動物で、宗達の描く動物は、かわいらしく、ユーモアたっぷり。写実性よりもデザイン的に描かれているのが特徴です。
デザインとしての琳派が、近代、現代へどのように受け継がれたのか探ってみます。
(写真)俵屋宗達《烏図》17世紀 (江戸時代) 紙本・墨画
琳派は、流派のように血縁や師弟間で伝わるのではなく、先人を慕い自分で学び、取り入れることにより受け継がれてきました。
始祖である俵屋宗達は伝統を重んじつつも、主題をデフォルメしたり、トリミングするなど、大胆なアレンジを施し斬新な作風を確立しました。これらの作風は現代のデザインにも通づるものがあります。モチーフによく扱われるのは動物で、宗達の描く動物は、かわいらしく、ユーモアたっぷり。写実性よりもデザイン的に描かれているのが特徴です。
デザインとしての琳派が、近代、現代へどのように受け継がれたのか探ってみます。
(写真)俵屋宗達《烏図》17世紀 (江戸時代) 紙本・墨画
琳派の特徴の一つである、宗達が描くゆるキャラのような鹿
こちらの作品は、宗達が絵を描き、書家の本阿弥光悦(ほんあみ こうえつ)が書を書いた、今回の琳派作品の中で特に注目される作品の一つです。もともとは長い巻物だったのですが、細かく切断されて各所で所蔵されています。山種美術館が所蔵するものは、巻頭の部分にあたります。
描かれている鹿は、背中が丸みをおびています。これは琳派の動物表現の一つの特徴である、デフォルメされたデザイン。また顔の表情もまるでゆるキャラのようにも見えますね。宗達が描く動物は、リアリティーよりもかわいらしさや、ユーモラスな表情が見受けられます。
(写真)俵屋宗達(絵)・ 本阿弥光悦(書)《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》17世紀 (江戸時代) 紙本・金銀泥絵・墨書 山種美術館
(写真下左)俵屋宗達(絵)・ 本阿弥光悦(書)《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》 (部分) 17世紀(江戸時代) 紙本・金銀泥絵・墨書 山種美術館
(写真下右)俵屋宗達(絵)・ 本阿弥光悦(書)《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》 (部分) 17世紀(江戸時代) 紙本・金銀泥絵・墨書 山種美術館
描かれている鹿は、背中が丸みをおびています。これは琳派の動物表現の一つの特徴である、デフォルメされたデザイン。また顔の表情もまるでゆるキャラのようにも見えますね。宗達が描く動物は、リアリティーよりもかわいらしさや、ユーモラスな表情が見受けられます。
(写真)俵屋宗達(絵)・ 本阿弥光悦(書)《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》17世紀 (江戸時代) 紙本・金銀泥絵・墨書 山種美術館
(写真下左)俵屋宗達(絵)・ 本阿弥光悦(書)《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》 (部分) 17世紀(江戸時代) 紙本・金銀泥絵・墨書 山種美術館
(写真下右)俵屋宗達(絵)・ 本阿弥光悦(書)《鹿下絵新古今集和歌巻断簡》 (部分) 17世紀(江戸時代) 紙本・金銀泥絵・墨書 山種美術館
金屏風に描かれたうさぎはユーモラスで、琳派の表現を受け継ぐ
こちらの作品は、昭和3年に制作された、速水御舟の《翠苔緑芝》。金地の屏風に緑の芝生、紫陽花やつつじのカラフルで装飾的な表現は、琳派の影響が伺えます。
写真左下のうさぎは、背中に丸みをおび、草を口にくわえ、耳をピンとたてており、写真右下の横たわったうさぎは、手足はのびやかで、跳ね上げた足に目がとまります。琳派の特徴である、主題を自由に表現し、デフォルメされたデザインを継承していると言われています。
速水御舟も琳派を学んだ名だたる画家のひとり。昭和の時代に琳派を継承しました。
(写真上)速水御舟《翠苔緑芝》1928 (昭和3)年 紙本金地・彩色 山種美術館
(写真下左)速水御舟《翠苔緑芝》 (部分) 1928 (昭和3)年 紙本金地・彩色 山種美術館
(写真下右)速水御舟《翠苔緑芝》 (部分) 1928 (昭和3)年 紙本金地・彩色 山種美術館
写真左下のうさぎは、背中に丸みをおび、草を口にくわえ、耳をピンとたてており、写真右下の横たわったうさぎは、手足はのびやかで、跳ね上げた足に目がとまります。琳派の特徴である、主題を自由に表現し、デフォルメされたデザインを継承していると言われています。
速水御舟も琳派を学んだ名だたる画家のひとり。昭和の時代に琳派を継承しました。
(写真上)速水御舟《翠苔緑芝》1928 (昭和3)年 紙本金地・彩色 山種美術館
(写真下左)速水御舟《翠苔緑芝》 (部分) 1928 (昭和3)年 紙本金地・彩色 山種美術館
(写真下右)速水御舟《翠苔緑芝》 (部分) 1928 (昭和3)年 紙本金地・彩色 山種美術館
戦後にも引き継がれた琳派の表現は画家のアイデアの源に
明治40年代後半から昭和にかけて、琳派に刺激を受けた作品が多数発表されました。戦後も琳派に対する関心は高く、画家のアイデアの源泉となっています。
近代、現代の画家、安田靫彦(やすだ ゆきひこ)もまた、うさぎをモチーフに描いています。安田靫彦が参考にしたと考えられている琳派の作品は、宗達の《兎桔梗図》です。この《うさぎ》という作品は昭和13年頃の作品。中央に丸い背中のうさぎを置く構図は宗達と同じです。宗達は、そのまわりを囲むように桔梗を配しましたが、安田は右側に一輪だけ。周囲を空白にし独自性を出しているのでしょうか。また後ろに足を跳ねさせているのも、御舟のうさぎ同様、宗達のデザイン表現の影響なのかもしれません。
(写真)安田靫彦《うさぎ》1938 (昭和13)年頃 絹本・彩色 山種美術館
近代、現代の画家、安田靫彦(やすだ ゆきひこ)もまた、うさぎをモチーフに描いています。安田靫彦が参考にしたと考えられている琳派の作品は、宗達の《兎桔梗図》です。この《うさぎ》という作品は昭和13年頃の作品。中央に丸い背中のうさぎを置く構図は宗達と同じです。宗達は、そのまわりを囲むように桔梗を配しましたが、安田は右側に一輪だけ。周囲を空白にし独自性を出しているのでしょうか。また後ろに足を跳ねさせているのも、御舟のうさぎ同様、宗達のデザイン表現の影響なのかもしれません。
(写真)安田靫彦《うさぎ》1938 (昭和13)年頃 絹本・彩色 山種美術館
琳派のつながりはモチーフの継承
動物の他にも、朝顔などの植物も琳派のモチーフとされました。琳派は、宗達をトップにしつつも、師弟関係によって受け継がれる流派ではありません。そのため、技術の伝達は模倣して学びます。美術評論家の山下裕二氏によると、始祖の宗達も、他人の作品や技術を模倣し作品の中に取り込んでいたこともあるのだそう。しかし、誰も思いつかなかったことをするのが宗達なのだとか。琳派の継承者はどんな作品を参考にして、どのようにアレンジをしたのかを考えながら見ると、理解も深まります。
(写真)安田靫彦《朝顔》1932-37(昭和7-12)年頃 絹本・彩色 山種美術館
あこがれて真似をして、真似だけで終わらせずに新たなものを作り出してきた琳派。マンネリに陥っていたり、新たなヒントが欲しいと思っている人は、何かヒントをつかめるかもしれません。
(メインビジュアル)速水御舟《翠苔緑芝》1928 (昭和3)年 紙本金地・彩色 山種美術館
※写真の無断転載を禁じます
(写真)安田靫彦《朝顔》1932-37(昭和7-12)年頃 絹本・彩色 山種美術館
あこがれて真似をして、真似だけで終わらせずに新たなものを作り出してきた琳派。マンネリに陥っていたり、新たなヒントが欲しいと思っている人は、何かヒントをつかめるかもしれません。
(メインビジュアル)速水御舟《翠苔緑芝》1928 (昭和3)年 紙本金地・彩色 山種美術館
※写真の無断転載を禁じます
photo / コロコロ
「【特別展】琳派 ー俵屋宗達から田中ー光へー」
会場:山種美術館
住所:〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
会期:2018年5月12日(土)~7月8日(日)
※会期中、一部展示替えあり(前期: 5/12~6/3、後期: 6/5~7/8)
時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日
問い合わせ:TEL:03-5777-8600 (ハローダイヤル)
※掲載内容は記事公開時点のものです。最新情報は、各企業・店舗等へお問い合わせください。
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