心がほっと温かくなる。人生の輝きを伝える諏訪敦彦監督の最新作『ライオンは今夜死ぬ』

「不完全なふたり」の諏訪敦彦監督が8年ぶりにメガホンをとり、「大人は判ってくれない」などの名優ジャン=ピエール・レオを主演に迎えて撮りあげた『ライオンは今夜死ぬ』。舞台は南仏コート・ダジュール。老俳優が洋館で出会った子どもたちと共に映画を作り、心を通わせていく物語をご紹介します。
 新 麻記子 読者ライター

死を想うこと、そして生きていく大きな歓び

南仏コート・ダジュール。
老年の俳優・ジャンは映画のリハーサルで、うまく死を演じられないことを悩んでいました。撮影が中断されることになり、ジャンは旧友に会いに行くことにします。大きな赤いグラジオラスの花束を持ったジャンがたどり着いたのは、かつて愛したジュリエットの住んでいた古い屋敷。中へ入ると、ジュリエットが美しい姿のまま幻となって現れ、再会を喜んだ彼は屋敷で寝泊まりを始めました。

ある日、ジャンは屋敷に忍び込んだ地元の子どもたちと出会います。彼らは屋敷を使って映画を撮影しようとしており、俳優であるジャンに興味を持ちカメラを向け始めます。
最初は頑固な態度をとっていたジャンでしたが、次第に子ども達と打ち解け始めます。そして、やがて屋敷を貸すことに加え、映画出演を快諾したジャンは「脚本を用意しなさい」と子どもたちに告げます。子どもたちは脚本を作り上げ、いよいよ撮影が始まるのでした。

子どもたちとの映画撮影で、ふたたび生きる歓びが沸き上がっていくジャン。そして幾度もジャンの前に現れるジュリエットの幻影と対峙しながら、同時に自らの過去と残された時間を見つめ出します。死を想うこと、生きていく歓び…映画作りが教えてくれたこととはー?

世界で圧倒的な評価を受ける、諏訪敦彦監督

本作で監督を務めたのは、フランスをはじめヨーロッパで圧倒的な評価を受けている諏訪 敦彦(すわ のぶひろ)監督。名俳優ジャン=ピエール・レオを主演で映画を撮りたいという熱い想いと、数々のアーティストに歌い継がれる名曲「The Lion Sleeps Tonight(ライオンは寝ている)」から着想を得て本作品は生まれました。

物語に登場する南仏の子どもたちは、撮影の8ヵ月前から南仏で行われたワークショップに参加していた20人ほどの子どもたちの中から選出したそうです。作品の中で子どもたちが撮影している映画は、実際に子どもたちが話し合って作り上げているもの。彼らが映画を発見していくプロセスを、そのまま作品に取り込んでいるんだとか。物語の深部にドキュメンタリーが見え隠れする…監督のアイディアが面白いですね!

生死の垣根を越え、人生を味わい深く物語る

劇中では“死”を表現するイメージや言葉が出てきますが、監督曰く、最初から死をテーマにしようとしてたわけではないそうです。「生と死は同伴している」と台詞でもあるように、どちらか一方があるわけではなく、死があっての生が存在し、生があっての死があるのです。着想を得たという「The Lion Sleeps Tonight?」の歌も、ライオンが死んだという歌詞ですが、それを非常に元気よく歌っています。

作中でジャンは、子どもたちとの映画作りを通して、死を想うこと、そして生きていく大きな歓びを見出していきます。私たちの生活においても、家庭や仕事など身近な物事を通して、“死”について考えるのと同時に“生”を感じるきっかけとなるのではないでしょうか。本作品を鑑賞して生きていくための大きな歓びを見つけるヒントにしてみてください。

photo / ©️ 2017-FILM-IN-EVOLUTION-LES PRODUCTIONS BAL THAZAR-BITTERS END

『ライオンは今夜死ぬ』

2018年1月20日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー!
監督:諏訪敦彦
出演:ジャン=ピエール・レオ、ポーリン・エチエンヌ、イザベル・ヴェンガルテン
配給:ビターズ・エンド

http://www.bitters.co.jp/lion/

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