ノスタルジックな異空間カフェ、物豆奇で昭和レトロトリップ

アンティークショップや古本屋さんなどレトロで味わい深いお店が多いディープタウン西荻窪。その中でもひときわ西荻窪らしい異彩を放つ喫茶店があります。人呼んで純喫茶の聖地「物豆奇(モノズキ)」。慌ただしい日常からちょっと離れて、ゆっくりと流れる時間に身をまかせながら、こだわりの一杯を堪能してみませんか?
 篠田杏子 読者ライター

扉を開けるとそこは別世界

西荻窪駅北口を出てバス通りを歩いて約五分、公園の向かい側に純喫茶「物豆奇(モノズキ)」はあります。ノスタルジックな扉を開けると、ここが東京であることを忘れるような別世界のレトロな異空間が広がっています。ここは前オーナーが国立の伝説の喫茶店「邪宗門」をモデルに作られたのだそう。惜しくも2008年に閉店となった邪宗門の幻の空気感を感じられる、貴重な喫茶店です。
店内はアンティークのランプに扇風機や電話、蓄音機などムードあるアイテムがずらり。我が家もこんな素敵なレトロインテリアにしたいと思いながら店内を観察しても、なぜこんな多彩なアイテムが統一感を持って落ち着く空気感を醸し出せるかがわかりません。長年の月日を丁寧に積み重ねることでしか出せない独特の暖かさがあるからかもしれません。

壁一面の古時計

何と言っても圧巻なのは壁一面にずらりとならぶ古時計の数々です。それぞれの時計がそれぞれ異なった時間を刻む様子は、まるで複数の時間軸が同時に存在しているような神秘的な雰囲気です。静謐な店内に響き渡る規則正しい秒針のリズムが身体に心地よく刻まれます。

オレンジ色のランプに照らされて

どこを切り取っても絵になるような格別の空間で本を読む時間は最高に贅沢です。ノスタルジックなオレンジ色のランプの光が手元を優しく照らしてくれます。私も以前、肌寒い雨の日の夕方に、お気に入りの純文学の本を一冊持ち込み読みましたが、家で読むより遥かに深く文章に没頭することができました。本がこんなに読む場所によって味わい方が変わることに驚きましたが、いつもより深く文学を味わいたいときはお勧めです。ここで読んだ本はきっと忘れられない特別な一冊になるはずです。

スイーツを読書のお供に

店内では日替りのケーキもいただけます。ドリンクとセットだと50円引きになります。この日はシフォンケーキとアールグレイティーのセットを注文しました。ケーキはふわふわで一口食べると口の中で溶けてなくなり、香り高い紅茶と良く合います。読書で程よく疲労した脳も優しいスイーツの甘さで癒されます。アンティークな銅板のテーブルの重厚な雰囲気がカップとお皿を引き立てて贅沢な気持ちに。ここでお茶をしていると、一時間に一回鳴る時計の「ボーン」という鐘の音で我にかえります。そして時間が経つスピードに驚きます。それほどこの不思議な空間に夢中になっていたのでしょうか。帰るころには、日常の悩みや不安も忘れ、すっかりリフレッシュしている自分がいます。こころなしか体の重さや怠さもすっきりと取れているような気がします。パワースポットさながらの効能はまさに純喫茶の聖地ならでは。

また、憂鬱な気分になりがちな雨の日でも、店内から聞こえる雨音はむしろ雰囲気を高めてくれるから不思議です。雨が多いこの時期、あなたもお気に入りの一冊を持って物豆奇で特別なお茶時間を満喫してみませんか?

photo / 篠田杏子

物豆奇(モノズキ)

住所:東京都杉並区西荻北3-12-10
Tel:03-3395-9569
営業時間:[月~日] 11:30~21:00

https://tabelog.com/tokyo/A1319/A131907/13012925/

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