4人の若手芸術家たちの感性がぶつかる『ポーラミュージアムアネックス展2017 -感受と創発-』
- 2017.3.22
- アート・カルチャー
「感受性と創発性」の力強さを感じてみよう
高木彩:人間の体は、顔よりも感情を表している?
皺が刻まれた手を精一杯こちらに伸ばしている様子、力一杯跳躍し、時には何かを抱え込むように折り曲げられる上体…高木さんにとって人体表現とは、それぞれの人間の内面にあるほとばしる感情を、刻々と動き変化するフォルムとして画面にとどめることです。
作品に用いられている色彩や形は、パレスチナの詩人の作品やハンナ・アーレントの言葉、世界の現状などとても具体的なところからインスピレーションを受けています。
そこには、リアルに対象に迫ろうと試みるそうですが、ある意味抽象的で捉え難い”人間”そのものを描きこむ過程から作品が生み出されています。
私が驚いたのは『ー"顔"よりも"身体"の方が感情を表しているー』キャプションに書き込まれた言葉でした…作品に描かれている人体からも分かる通り、身体が物語ることの大きさがわかります。
池田光弘:主題から思考することを求める、絵画作品。
池田さんにとって絵具などの物質自体は絵画そのものではなく、それによって表されたイメージ自体も絵画そのものでもありません。物質はイメージを見つめる時に消費し、またイメージ自体も絵具によって支えられているという意味において虚像であり、現実には存在しません。そのような存在しないもの同士が支え合う関係性として絵画を考えているそうです。
池田さんの思考は私たちの身近な関係性に置き換えることができます…私はそこに"社会"を思いました。そういったものを思い浮かべてから作品を鑑賞すると、色んな物事が自分に関係していると読み取れるので、一見難しいと思っていた作品も身近に感じることができます。
武田裕子:自由に、複雑に、楽しめる日本絵画。
スケッチでは描きたいイメージが次々と浮かび、扱う画材との関わりの中で増幅や変化が生じる武田さん。
作品に用いるのは岩絵具や植物の染料、墨といった日本画の画材たち…それらの特質を念頭に置きながらも、自分のイメージとの間にある着地点を見つけることが制作の大半を占めているそうです。
武田さんは日本画の保存修復や仏画の模写を学んでから、無意識に金箔や銀箔を作品に用いるようになりました。箔が反射する光は色や形といった絵画の諸要素から飛び出し、作品を見つめている私たちの空間に直接はたらきかけてきます。
環境や角度によって作品の見え方が変化するので、正面だけではなく様々な角度で鑑賞してみてください。作品が持つ様々な表情を楽しめるだけでなく、そういった面白さを教えてくれる作品です。
彦坂敏昭:模索し続ける「かく」と「ふれる」の関係。
「かく」と「ふれる」は親密な関係にあるという彦坂さん。
「ふれる」という経験は「ふれる/ふれられる」という二つの感覚の結合によって、その手触りを変化させます。「かく」という経験は、この「ふれる/ふれられる」という関係を構築するための身振りのことです。そして、彦坂さんはこの可能性を考えることが、行為としての絵画の可能性を示すことにつながっていると考えています。
時に写実的であり、時に抽象的な彦坂さんの作品…私たちも鑑賞者として作品に「ふれる/ふれられる」を実行すると、きっと美術鑑賞の可能性が広がってくるでしょう。
一つの大きな空間に様々な作品が鑑賞できる贅沢さだけでなく、新進気鋭の作家たちの作品を通して現代に息づく日本のアートがわかる展覧会です。
会場は入場無料な上に、全作品撮影OKなので、銀座にお越しの際は気軽な気持ちで足を運んでみて下さい。
photo / 新麻記子
ポーラ ミュージアム アネックス展2017 -感受と創発-
会期:2017年3月3日(金)-3月26日(日)
会場:〒104-0061 東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル 3階
時間:11:00-20:00(入場は閉館の30分前まで)
入場無料/会期中無休
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