一度読んだら忘れられない「人生」の本。秋の気配を感じながら読みたい6冊
長い夏の暑さがようやく和らぎ、ほっとする一方で、少しだけ寂しさも感じる季節。今回は3人の読書インフルエンサーが、夏の終わりの寂しさが滲む一冊と、いま一番推したい一冊を選んでくれました。季節の変わり目、心に残る本との出会いを楽しんでください。
- 2026.9.26
- アート・カルチャー
読書インフルエンサーの3人
この夏におすすめしたい本をシーン別で選んでくださったのは、SNSで読書記録を発信されている、こちらの3人です。
あい | 本まみれ生活 さん
出版社勤務の本マニア。ファンタジックな児童文学からミステリ、純文学に至るまで読書記録を発信する。魅力は飾らない言葉運び。コメント欄は共感や感想が飛び交い、さながらコミュニティのような賑わいを魅せています。不定期で行っているポッドキャストでも、あいさんの明るい人柄がわかると好評です。
碧い花 さん
2019年から、ロルバーンのノートに手書きで読書記録をつづり、SNSに投稿しています。「かっこつけた文章を書かない」、「義務化しない」をモットーに、のんびりと発信しているそう。ノートは8冊を超え、記録した本の数はおよそ550冊。デジタル全盛の時代にあえて手書きで記録を残す姿に憧れ、参考にする人も少なくありません。
梨ちゃん🍐文学系YouTuber さん
「梨ちゃんねる」としてYouTubeとInstagramで本の紹介を発信。純文学や文芸誌など、難解に思われがちな作品も、自身が感じた驚きやときめきを等身大の言葉で丁寧にすくい取ります。端的で分かりやすい説明と、実感のこもった感想に惹かれ、実際に本を手に取る人が続出。
「夏の終わりのさみしさが最も表現されている1冊は?」
あいさん選 『タイム・アフター・タイム』
実写化された映画が一世を風靡した『国宝』の作者・吉田修一さんの作家デビュー30周年を記念して刊行された、渾身の恋愛長編です。建設会社に勤める尾崎 颯は、高校時代の同級生で、初恋相手の久遠 愛と再会。再び言葉を交わすようになるふたりの心は、二十数年前の夏へと引き戻されていきます。長崎と東京を舞台に、過去と現在、初恋の記憶が交錯していく本作。恋愛小説の枠におさまらない、濃密な人間ドラマが広がります。
「夏と青色が似合う本に、今年出会いました。恋だけじゃなく、出会いと別れが丁寧に描かれています。本気で小説と向き合うと、寂しさと切なさにのめりこめるのが良いんですよね」(あいさん)
『タイム・アフター・タイム』(幻冬社)著:吉田修一
「夏と青色が似合う本に、今年出会いました。恋だけじゃなく、出会いと別れが丁寧に描かれています。本気で小説と向き合うと、寂しさと切なさにのめりこめるのが良いんですよね」(あいさん)
『タイム・アフター・タイム』(幻冬社)著:吉田修一
碧い花さん選 『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』
詩人・絵本作家の斉藤 倫さんの著書であるこちらは、詩集でありながら、物語としても読める一冊。一人暮らしのおじさん「ぼく」のもとに、小学生の「きみ」がふらりと訪ねてくるところから物語は始まります。学校のこと、お母さんとの会話、なんでもない素朴な疑問を持ってやってくる「きみ」に、「ぼく」はその都度一編の詩を差し出す。20篇の詩を通して、言葉について、大人になるということについて、ふたりの会話が重ねられます。
「近所のおじさんと少年が、カップ麺やら焼きそばやら枝豆やらを頬張りながら、詩を読み感想を伝え合う物語。少年が青年に変わっていくその曖昧な瞬間を記した日記を読んでいるような感覚になり、嬉しいような、寂しいような……、なんだかとても幸せな気持ちで胸がいっぱいになります」(碧い花さん)
『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』(福音館書店)著:斉藤 倫
「近所のおじさんと少年が、カップ麺やら焼きそばやら枝豆やらを頬張りながら、詩を読み感想を伝え合う物語。少年が青年に変わっていくその曖昧な瞬間を記した日記を読んでいるような感覚になり、嬉しいような、寂しいような……、なんだかとても幸せな気持ちで胸がいっぱいになります」(碧い花さん)
『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』(福音館書店)著:斉藤 倫
梨ちゃんさん選 『乾く夏』(『葬儀の日』に収録)
第82回芥川賞候補作である『乾く夏』。文學界新人賞を受賞した『葬儀の日』を表題作とする、松浦理英子さんのデビュー作品集に収録されています。幾子と彩子、ふたりの若い女性の危うい関係を描いた短編です。『ナチュラル・ウーマン』や、『親指Pの修業時代』など、後の代表作にも通じるテーマを孕んだ一作。
「排他的で、支配と服従が揺れ動く空気を、濃密で艶のある文体が包み込みます。永遠に続きそうだった夏の熱はゆっくり冷めていくのに、ふたりだけは若さゆえの閉塞感の中に、永遠に閉じ込められてしまいそうなラストシーン。一度読んだら忘れられません」(梨ちゃんさん)
『葬儀の日』(河出書房新社)著:松浦理英子
「排他的で、支配と服従が揺れ動く空気を、濃密で艶のある文体が包み込みます。永遠に続きそうだった夏の熱はゆっくり冷めていくのに、ふたりだけは若さゆえの閉塞感の中に、永遠に閉じ込められてしまいそうなラストシーン。一度読んだら忘れられません」(梨ちゃんさん)
『葬儀の日』(河出書房新社)著:松浦理英子
「今一番推したい! イチオシの一冊は?」
あいさん選 『名もなき本棚』
2004年、『となり町戦争』で小説すばる新人賞を受賞し、デビューした三崎亜記さんによる掌編集です。デパートのショーウィンドウで暮らす女性を見守り続ける男の物語『スノードーム』や、ゴミ収集所に座り込むサラリーマンをめぐる『回収』など全19篇を収録。日常に潜む小さな違和感が、非日常へと姿を変える……そんな刺激的で不思議な読書体験が味わえます。
「19本のいろんなジャンルの短編がぎゅっと詰まった、まさに“本棚”のような一冊。SF? 社会風刺? ユーモアのようなホラーのような? ちょっとダークトーンですが、着眼点がおもしろくて、どれかひとつは好きな作品があるはず。私は『部品』『闇』『名もなき本棚』『ゴール』が好きでした!」(あいさん)
『名もなき本棚』(集英社文庫) 著:三崎亜記
「19本のいろんなジャンルの短編がぎゅっと詰まった、まさに“本棚”のような一冊。SF? 社会風刺? ユーモアのようなホラーのような? ちょっとダークトーンですが、着眼点がおもしろくて、どれかひとつは好きな作品があるはず。私は『部品』『闇』『名もなき本棚』『ゴール』が好きでした!」(あいさん)
『名もなき本棚』(集英社文庫) 著:三崎亜記
碧い花さん選 『エヴァーグリーン・ゲーム』
第12回ポプラ社小説新人賞を受賞した、石井仁蔵さんのデビュー作。世界有数の頭脳スポーツ、チェスを題材にした青春群像劇です。幼い頃から難病で入院生活を送っていた透は、小児病棟でチェスと出会い、魅了されていきます。同じようにチェスに人生をかける仲間たちと出会いながら、日本一の大会であるチェスワングランプリを目指していきます。
「表紙の煌めきと美しさに導かれて手に取った一冊。チェスのおもしろさや奥深さに心を奪われた4人の若者たちの物語。彼らの勝負、そして人生の行方はどうなっていくの…? と、一気読み間違いなしの本です。チェスのルールが分からなくても十分楽しめますし、とにかく、このキラキラ輝く表紙の美しさを見てほしい!」(碧い花さん)
『エヴァーグリーン・ゲーム』(ポプラ文庫) 著:石井仁蔵
「表紙の煌めきと美しさに導かれて手に取った一冊。チェスのおもしろさや奥深さに心を奪われた4人の若者たちの物語。彼らの勝負、そして人生の行方はどうなっていくの…? と、一気読み間違いなしの本です。チェスのルールが分からなくても十分楽しめますし、とにかく、このキラキラ輝く表紙の美しさを見てほしい!」(碧い花さん)
『エヴァーグリーン・ゲーム』(ポプラ文庫) 著:石井仁蔵
梨ちゃんさん選 『彼女のカロート』
文芸誌に発表されながら、入手が困難になっている作品を再び世に送り出すシリーズ『First Archives(ファースト・アーカイブス)』の第一弾。発表時から大きな反響を呼んだ荻世いをらさんの二つの中編を収めた一冊です。表題作の『彼女のカロート』は墓のメンテナンス業を営む「彼」のもとへ、耳が聞こえなくなった女性アナウンサーから墓作りの依頼が舞い込むところから始まります。彼女とのやり取りは、次第に「彼」の日常を静かに侵食していき……。
「今一番推したいのは、『First Archives』の第一弾。人と人とのあいだにある“見えない隔たり”が描かれ、耳の聞こえない女性との会話は、噛み合っているようで本当に通じているのかわからない。同居しているはずの夫の存在さえ、どこか手触りを欠いています。あるのにないようなコミュニケーションの不和を、鮮烈な描写で立ち上げる唯一無二の作品です」(梨ちゃんさん)
『彼女のカロート』(フィルムアート社) 著:荻世いをら
「今一番推したいのは、『First Archives』の第一弾。人と人とのあいだにある“見えない隔たり”が描かれ、耳の聞こえない女性との会話は、噛み合っているようで本当に通じているのかわからない。同居しているはずの夫の存在さえ、どこか手触りを欠いています。あるのにないようなコミュニケーションの不和を、鮮烈な描写で立ち上げる唯一無二の作品です」(梨ちゃんさん)
『彼女のカロート』(フィルムアート社) 著:荻世いをら
秋の夜長に、心に残る一冊を
夏の終わりの寂しさが滲む物語に、イチオシの一冊まで、3人にそれぞれの視点で選んでもらいました。暑い夏が過ぎ、いよいよ読書の秋の到来です。夏の終わりとともに、3回に渡って紹介してきた選書企画も締めくくり。ここで出会った本を片手に、秋の夜長を楽しんでみてください。
あい | 本まみれ生活 @_ai_honmamire
https://www.instagram.com/_ai_honmamire/?hl=ja
碧い花 @aoihana___
https://www.instagram.com/aoihana___
梨ちゃん 文学系YouTuber @nashichan_book
https://www.instagram.com/nashichan_book/
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